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VAIO A12・Pro PA開発ストーリー Vol.1 開発者が語る「新機軸・スタビライザーフラップとは?」

VAIO A12・Pro PA開発ストーリー Vol.1

「スタビライザーフラップ」が、完全なノートPCと、タブレットPCを両立させる。

PC事業部 PC設計部
プロジェクトリーダー課

花村 英樹

PC事業部 PC設計部
メカ設計課

広吉 高一

PC事業部 PC設計部
メカ設計課

拇速 真

その”ヒント”は、ずっと身近にあった

--まずは、VAIO A12・Pro PAのために「スタビライザーフラップ」を開発することになった背景についてお話しください。

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VAIO A12
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メカ設計担当 広吉:VAIO A12・Pro PAのようなデタッチャブル構造を採用した2 in 1ノートPCは、分離してタブレットとなるディスプレイ側がどうしても重くなってしまいます。そうすると重量バランスが崩れて奥方向に転倒しやすくなったり、それを防ぐためにキーボード側に重りを仕込んだりしなければならなくなります。こうした問題をどう解決するかと考えていった結果、生まれたのが「スタビライザーフラップ」です。

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「スタビライザーフラップ」を開発するにあたっては、あえてディスプレイ部分が重く、キーボード部分が軽い、極端にバランスの悪いモックアップを作り、それに対してどのような工夫をすることで転倒を防止できるか、実にさまざまなパターンを実験しています。

--そこから底部に「フラップ」を付けるというアイデアが生まれたんですね。

メカ設計プロジェクトリーダー 拇速:はい。ディスプレイ部分が重いノートPCが転倒してしまうのは、開くにつれて重心が徐々に後ろへ移動し、底面にあるゴム足などの支点を超えてしまうから。であれば、ディスプレイを開いていくと同時に、その支点も後ろへと下げていけば(常に支点よりも内側に重心がある状態を保てば)良いと考えました。もちろん、それまでにさまざまな形状を検討したのですが、この方法が最もシンプルにできるだろう、と。

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広吉:とは言え、単純に板状のフラップを付けるだけだと、閉じた時にフラップが後方に大きく突き出してしまい、デザイン的に収まりが悪くなってしまいます。それをどうするか考えあぐねていたある日、自宅で娘と絵本を読んでいたら、その本の背表紙が面白い動きをしていることに気がついたのです。「広開本」というそうなのですが、本を開くと背表紙が張り出して、どのページでも見開きが真っ平らになり、本を閉じると背表紙が本体に密着して一体化する、とてもユニークな製本でした。

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この形状をヒントに、VAIOのヒップアップした底面形状に沿わせるようフラップを折り曲げたものが「スタビライザーフラップ」の原型となります。

プロジェクトリーダー 花村:ディスプレイ側から棒が飛び出すなど、転倒させないための工夫はたくさん思いついたのですが、それが「VAIO」である以上、みっともない形状にはできません。その点、「スタビライザーフラップ」なら、閉じている時も、開いている時もスマートな見た目を保ちますし、開閉時に何か特殊な操作をする必要もありません。逆に言えば、このアイデアを広吉が思いついてくれなかったら、この商品のゴーサインが出ることはなかったでしょうね。

拇速:なお、「スタビライザーフラップ」はその独創的なアイデアが認められ、特許も取得しています。

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「スタビライザーフラップ」で実現した「100%」

--「スタビライザーフラップ」について、もう少し聞かせてください。この仕組みには、ほかにどういったメリットがあるのでしょうか?

拇速:何よりシンプルだということですね。シンプルであるということは軽くできるということでもあります。それは単に機構が軽量化できるというだけではありません。こういった転倒防止の仕組みによって、確かにキーボード側を軽量化することはできるものの、そのための機構自体が重いと、差し引きで効果が減っていきます。今回、「スタビライザーフラップ」を使うことで、キーボード側に約200gの重りを入れずに済んでいるのですが、フラップ機構の重量を50g程度に抑えたことにより、その軽量化効果を最大化できています。

広吉:見た目のスマートさ、操作性、軽量化に加え、快適性を向上させるというメリットもあります。当初想定していた平らなフラップの場合、キーボード面が従来モデルよりも大きく持ち上げられてしまうため、PCの下に大きな空間ができ、タイピング時にキーボード面が沈み込んでしまうという問題がありました。その点、最終的な形状では、フラップを曲げたことによって、持ち上げ幅が小さくなり、従来モデルと同等のしっかりとした打鍵感を実現しています。

--VAIOが大切にしている「快」の部分も損なっていないということですね。

広吉:デザイン面で補足をすると、先ほど拇速がお話した「スタビライザーフラップ」を組み込まなかった場合に必要となる重りですが、その効果を最も大きくするためには、支点から最も遠い、手前側に仕込むことになります。そうするとどうしても手前側が厚くなってしまい、近年のVAIOがこだわってきたウェッジシェイプも実現できなくなってしまいます。「スタビライザーフラップ」の採用には、そうしたメリットもあるんですよ。

拇速:デザインについてお話するのであれば、フラップ取付部周辺のネジについても聞いていただきたいです。実は設計当初、フラップの表面部分には左右に3つずつ、合計6つのネジが見えている状態でした。これは、故障時のメンテナンスしやすさや、機構の単純化のためにはやむを得ない部分だったのですが、デザイン性を考えて、構造を再設計することにより、フラップ表面上のネジをなくしました。結果として、内部的には部品点数が増えてしまうなどしているのですが、できあがったものを改めて見ていると……やっぱりなくして良かったなと思いますね(笑)。

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--お話を聞いていると、「スタビライザーフラップ」のキモとなるのは、ボディ形状に沿って曲げられたフラップ部分のようですが、この部分の設計・製造でほかに苦労したことはありますか?

拇速:フラップはマグネシウムの板で作っているのですが、いかにこの素材が剛性に優れるとは言え、ただの板状では簡単にたわんでしまい、全く強度が足りません。そこで縁の部分をわずかに折り曲げ、立体的な形状とすることで強度を高めました。これ、簡単そうに聞こえますが、マグネシウムという素材はこうした加工がとても難しいのです。そのため、国内の部品メーカー様と密に意見交換を行い、形状や製造工程などを試行錯誤し、何とかこの形状を実現できました。ちなみに、底面形状に沿わせるための折り曲げも剛性の向上に寄与しています。

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花村:フラップの素材は、マグネシウムのほか、アルミニウムやカーボンなども検討しましたが、実用金属として最も軽く、衝撃を受けても変形しにくいという点を評価しました。

拇速:強度に優れるマグネシウムなら、アルミニウムで2mmの厚さが必要なところをもっと薄くできます。最終的には先ほどお話しした工夫も併せ、1mmの厚さで、しっかりとした安定感を出すことができました。

花村:VAIO A12・Pro PAでは、開発当初より「100%クラムシェル」という標語を掲げていました。これまでの2 in 1ノートPCは、クラムシェル型ノートPCとしても、タブレットPCとしてもどっちつかずな所があったのですが、この製品ではノートPCとして、もちろんタブレットPCとしても100%の使い勝手を実現したかったのです。「スタビライザーフラップ」は、その実現のために、なくてはならないものだったと考えています。

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