VAIO A12・Pro PA開発ストーリー Vol.2
複雑な構造にしても壊れない、VAIOである以上、そこは譲れない。
![](http://vaio.com/wp-content/uploads/2020/12/img_profile1-4.jpg)
PC事業部 PC設計部
プロジェクトリーダー課
花村 英樹
![](http://vaio.com/wp-content/uploads/2020/12/img_profile2-5.jpg)
PC事業部 PC設計部
メカ設計課
広吉 高一
![](http://vaio.com/wp-content/uploads/2020/12/img_profile3-1-1.jpg)
PC事業部 PC設計部
メカ設計課
拇速 真
![](http://vaio.com/wp-content/uploads/2021/05/img_profile4.jpg)
PC事業部 PC設計部
電気設計課
細萱 光彦
![](http://vaio.com/wp-content/uploads/2020/12/img_profile5-1.jpg)
PC事業部 PC設計部
電気設計課
水谷 浩
「デタッチャブル」をVAIOが作るとこうなる
--VAIOは軽量・コンパクトな高密度設計や、スマートなデザインを実現した上で、業界トップクラスのタフネスを備えていることも魅力のひとつです。そうした魅力はVAIO A12・Pro PAにも継承されているのでしょうか? デタッチャブル構造でタフネス設計は非常に不利な面があると思うのですが……。
![img_interview1](https://vaio.com/wp-content/uploads/2020/12/img_interview1-4.jpg)
プロジェクトリーダー 花村:ヒンジ部分の構造にはかなり力を入れて設計をしています。内部には剛性を持った長い金属のバーが仕込まれていて、デュアルリリーススイッチや固定用のフックなど、力の入る部品は全てここに取り付け、全体的な強度を高めています。
![img_interview2](https://vaio.com/wp-content/uploads/2020/12/img_interview2-4.jpg)
メカ設計プロジェクトリーダー 拇速:こういう構造を取ると、ついこのバーを太くして、より強度を高めたくなるのですが、そうすると今度は重量が重くなってしまいます。そこでVAIO A12・Pro PAでは、ヒンジ部分の樹脂パーツを剛性に優れる箱形に成型し、本来見た目のアクセントとしてつけられている金属製オーナメントも強度を高めるために使うなど、全てのパーツを強度メンバー(剛性を向上させるパーツのこと)とする設計をしたことで、バーを過度に太く、厚くすることなく強度を高めているのです。
--着脱時の剛性についてはどのようにして高めていますか?
拇速:ドッキング機構の耐久性を高めるためにも、さまざまな工夫を施しています。たとえば細かい所では、合体時にディスプレイを支える金属の板と、「スタビライザーフラップ」の接地点となるゴム足の位置を揃えて、荷重を直下で受け止め、分散させるようにしました。
![img_interview3](https://vaio.com/wp-content/uploads/2020/12/img_interview3-4.jpg)
大きなところでは、合体時に大電流・高速信号を通すコネクター部分にはかなりこだわっていますね。一般的なコネクタはオス・メスをかみ合わせることで通信を行うのですが、その方式ではごみが入り込みやすいなど、信頼性に問題がありました。そこで今回は本機のためにセルフクリニーング機能を備えたコネクターを新規に設計しています。
![img_interview3](https://vaio.com/wp-content/uploads/2020/12/img_interview4-4.jpg)
![img_interview5](https://vaio.com/wp-content/uploads/2020/12/img_interview5-4.jpg)
--セルフクリーニング機能とはどういったものなのでしょうか?
拇速:ドッキングするときにキーボード側のピンが、ディスプレイ側の接点表面をわずかに擦って、付着したホコリや、表面の酸化物を取り除きながら、導通性を確保するという機能です。狭いスペースでこの機能および、最適な接点圧を確保するのは容易ではありませんでしたが、今回はあえてチャレンジしました。
電気設計プロジェクトリーダー 水谷:普通のドッキングコネクタは本体底面など、さほど目立たない位置に端子が配置されるのですが、今回のようなデタッチャブル構造ですと、非常に目立つ位置に、大きくごついコネクターを配置せねばなりません。そこでまず、可能な限り、コンパクトなコネクターが存在しないか探すところから始めなければなりませんでした。
![img_interview6](https://vaio.com/wp-content/uploads/2020/12/img_interview6-3.jpg)
無線/基板レイアウト設計担当 細萱:ただ、セルフクリーニング機能を備えたコネクターを製造しているメーカーはあまり多くなく、構造上、どうしても奥行きが大きくなってしまうデメリットもあったため、我々が求める仕様を満たすパーツ探しにはとても苦労しました。いくつものメーカーを回ってみたのですが、なかなか要件を満たしたものを作ってくれるところが見当たらず……。そんなある日、同じ安曇野にある本多通信工業さんに相談したところ、「ぜひ一緒に作らせてほしい。やりましょう」と言われたんです。地理的に非常に近かったこともあり、多いときは週に3度くらいのペースで直接やり取りし、我々が理想とするコネクターを作りあげることができました。最終的には、埃試験や、ポテトチップスなどの食品をこぼした状態での試験など、通常、コネクターメーカーさんがやらないような環境での試験なども行ったのですが、大きな問題は起きず 想定通りに動いてくれました。
![img_interview7](https://vaio.com/wp-content/uploads/2020/12/img_interview7-1.jpg)
--合体後の強度についてはいかがでしょうか。一般的なクラムシェル型ノートPCのように、ディスプレイ側をつかんで持ち上げるなどという使い方をしても大丈夫ですか?
拇速:もちろん、通常のクラムシェル型ノートPCのように扱っていただけます。吸着力のチューニングは、とてもこだわったところの1つ。着脱しやすさを確保しつつ、そうでないときにはしっかり固定されるよう工夫しています。
--吸着力のチューニングとは具体的にはどういったことを行うのでしょうか?
拇速:たとえばマグネットのサイズ、数、位置ですね。マグネットは磁力を増すほど、吸着力が高まるのですが、磁力を増し過ぎると今度は外しにくくなってしまいますし、場合によっては周囲の構造を破壊してしまうので、その見極めには気を使いました。また、その上で、万が一の保険としてドッキング時にディスプレイ部を固定するフックも付けています。
メカ設計担当 広吉:ここでポイントとなるのが、通常時はフックを浮かせた状態にしていること。通常時はマグネットだけで保持し、いざ、何らかの衝撃が加わった時にだけ機能するようにしています。というのも、フックでドッキング状態を維持しようとすると、リリーススイッチの操作時に大きな力が必要になってしまうんです。ここは、普段の使い心地と、いざと言う時の安心感を両立させるためにこだわりました。
![img_interview8](https://vaio.com/wp-content/uploads/2020/12/img_interview8-2.jpg)
目に見えない数々の工夫が安心と信頼をもたらす
--デタッチャブル構造以外の部分でのタフネスへのこだわりについても聞かせてください。
拇速:タブレットとして単独でも利用する、ディスプレイ部分は、薄型軽量を実現するため、マグネシウムを鋳造した、軽くて強度のあるケースを設計しました。従来のVAIO S13・Pro PGでもマグネシウムを使っているのですが、こちらは通信感度を高めるために上部だけは樹脂製のカバーになっています。対して、VAIO A12・Pro PAでは、この樹脂製のカバーをマグネシウムと一体成形し、よりシームレスなデザインとなり、かつ、全体の強度も高めています。
花村:ディスプレイの表面ガラスには、スマートフォンやタブレットなどで高い評価を受けている、AGC株式会社製の強化ガラスDragontrail™ Proを採用しています。さらに、落下時などに端面から衝撃が伝わらないよう、角部の形状をガラスと筐体で異なる数値とし、割れにくい構造にしています。
![img_interview8.5](https://vaio.com/wp-content/uploads/2020/12/img_interview8.5.jpg)
--デザイン性と壊れにくい構造を両立させているのですね。
拇速:その上で、仮に壊れてしまったとしても分解・修理しやすい構造も追及しました。中でも象徴的なのが、ディスプレイパネルとケースを固定する「爪」の部分。多くのタブレットは、ディスプレイパネルを爪で止める構造にしておりますが、それだと破損した場合に、ユニットを全て交換になってしまいます。また、分解に特殊な工具を用いる場合もあり、このような状況を改善すべきと考えて設計しました。それ以外では、ネジを外した後、ディプレイパネルをスライドさせて内部にアクセスできるようにするというやり方があるのですが、これだとどうしても内部にスライドさせるためのデッドスペースができてしまいます。そのため、VAIO A12・Pro PAでは内部に別部品の爪を取り付ける構造で、ディスプレイパネルをタブレット本体に固定する方式を採用しました。この方式では、分解時に爪が破損してしまいますが、大切なディスプレイパネルとタブレット本体はしっかり守られ、壊れた爪も容易に交換できるようになっています。
![img_interview9](https://vaio.com/wp-content/uploads/2020/12/img_interview9-1.jpg)
--そうした構造はよくあることなのですか?
花村:何年か前の機種で、マグネシウムのカバーに爪を一体成形することができなかった頃にこのような構造を採用したことがありますが、それは爪を交換できるようにするためではありませんでした。今回は、それとは違う目的で、交換可能な爪を採用。高密度設計とメンテナンス性を両立できるようにしています。これによって、修理目的でも社外に持ち出しができないPCを、その場でオンサイト修理できるというメリットも生まれました。
--ほか、タブレット部分のタフ性能を高めるために行ったことがありましたら教えてください。
花村:VAIO A12・Pro PAのタブレット部分にはUSB Type-C端子が搭載されているのですが、これは電源端子も兼ねていることもあって、脱着回数も多く、大きな負荷がかかることが予想されます。そこで、今回はこの端子部分だけを独立させ板金で固定しメインボードに負荷が伝わらないようにしています。
--キーボードユニットについてはいかがでしょうか? こちらは強度を高めるためにどういった工夫をされていますか?
拇速:通常、キーボード側に配置されるメインボードが、VAIO A12・Pro PAではディスプレイ側に配置されています。メインボードは内部で梁の役目も果たしていたので、そのままではキーボードの剛性が足りなくなってしまいます。そこで、今回は、強度解析を駆使してボトム肉厚および材料の最適化を行い、強度が足りない部分は、金属の梁を通す設計にしました。また、全体剛性を上げるために、キーボード内に6本の支柱をバランスよく配置し、強度解析と実機確認をうまく組み合わせて検討したことにより、重量増加を最低限に抑えながら、これまで通りの剛性を達成しています。
![img_interview10](https://vaio.com/wp-content/uploads/2020/12/img_interview10.jpg)
花村:デタッチャブル構造の2 in 1ノートPCというと、そのタフ性能に不安を感じる方も多いと思われますが、VAIO A12・Pro PAでは、ここまでで紹介したさまざまな工夫と徹底した品質試験で、従来モデルと変わらない優れた堅牢性を実現。ビジネスシーンでも安心してお使いいただけます。
![img_interview11](https://vaio.com/wp-content/uploads/2020/12/img_interview11-1.jpg)
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