VAIO S11/S13・VAIO Pro PF/PG開発ストーリー Vol.1
新しいVAIOのコンセプトは「正当進化」。
それを実現させるためには「メイド・イン・ジャパン」が必須だった。
PC事業部 PC設計部
プロジェクトリーダー課 課長
巣山 剛志
技術&製造部技術課
清水 慎也
「メイド・イン・ジャパン」は結果にすぎない
--新しいVAIO S11/S13(およびPF/PGシリーズ)は、先代モデルと異なり「メイド・イン・ジャパン」を謳っています。ここにはどういった意図があるのでしょうか?
プロジェクトリーダー 巣山:まずはっきりお伝えしておきたいのは、今回、新しいVAIO S11/S13(およびPF/PGシリーズ)がメイド・イン・ジャパンとなったのは、あくまで高品位を追求していった、その“結果”にすぎないということ。それ自体を“目的”としていたわけではありません。
我々が目指したのは、お客さまが長時間触ることになるパームレストの上質感や、S11(およびPFシリーズ)でさらなる軽量化を実現するために採用したUDカーボン天板、そして持ち運ぶ際に気になる本体カラーリングなどを理想に近づけること。それは、我々が創業当初から掲げている「安曇野FINISH」をさらに一歩先へ進めるにはどうすれば良いかを考え抜いた、その回答でもあります。
--その理想の実現には、これまでのやり方ではできなかったということですか?
巣山:先代モデルまでは、海外の工場で完成直前まで組み上げ、最終工程を日本の安曇野工場で行う(=安曇野FINISH)というかたちで生産をしてきました。しかし、新しいVAIO S11/S13(およびPF/PGシリーズ)では主要部分の組み立てを国内で実施することを決意。我々が理想とする組み上げ精度を実現するためには、やはりそこから自分たちでやらねばならないと考えたからです。もちろん、それぞれのパーツも、フラットアルミパームレストは東陽理化学研究所製、UDカーボン天板は東レ製(塗装は東邦工業)と、国内メーカー製の高品質なものを厳選して調達しています。
--国内で組み立てたり、国内メーカー製の部品を採用するだけで、そんなに変わってくるものなのでしょうか?
製造技術担当 清水:はい。海外の工場に依頼する際に難しいのが品質に関する定義付けです。なかでも数字では定義できない、色味やクリック感など、人の感覚に依存する微妙なこだわりをルール化し、管理するがとても難しいのです。その点、自社工場ならば、VAIOのこだわりを理解したスタッフがしっかり組み立て、機能/外観検査をしてくれますから、そうした問題は起きません。仮に問題が起きた場合でも、すぐに設計、製造技術、品質保証などの社内部署が集まって現物確認し、素早く対策を講じる事が出来ます。
巣山:国内メーカー製パーツについても同様です。例えばフラットアルミパームレストでは、表面がわずかに歪んでいるだけで手触り感や見た目の品位が大きく損なわれてしまいますし、端面の加工が雑だと、手に持った時に痛くなってしまいます。そうした問題のない上質なパーツを求めてくと、現時点ではやはり国内メーカー製に行き着くのです。
ただ、何度も言いますが、あくまでもその目的は我々が求める「品位」の実現。ですから、海外でも求める品位のパーツを作れるのであれば問題ありません。実際、今回のタッチパッドボタンは安曇野工場で組み立て・検査を行っていますが、部品自体は海外メーカー製を採用しています。
--全ては品質のため、ということですね。
巣山:はい。しかしそれだけではありません。メイド・イン・ジャパンには、実は品質向上以外にも大きなメリットがあります。それが、CTO選択肢の大幅拡大。VAIO S13(およびPGシリーズ)の場合、従来モデルでは268通りの組みあわせを提供していたのですが、新モデルではこれが728通りに。VAIO S11(およびPFシリーズ)に至っては、32通りが1280通りにまで拡大しています。海外生産でこれをやるのは在庫管理の問題からも現実的ではありません。しかし、国内で組み立てるのなら、在庫を部品レベルで保有できるため、より自由度の高いカスタマイズが可能になるのです。
--なるほど!
そして、さらに納期についても劇的に短縮。法人などの大量導入の場合、必要なセットが不足していると、最大で4か月程度お待たせしてしまうということがありました。ところが、国内組み立てなら、必要なセットを必要に応じてその場で作ることができるため、数日から1週間程度でご用意できるのです。
さらなる進化のためにはリスクを取ることも厭わない
--メイド・イン・ジャパンは良いことづくめですね。しかし、であれば、なぜ今までそれをやらなかったのかという疑問が生まれます。他社も含め、メイド・イン・ジャパンのPCはほとんどありませんよね。
巣山:やはりコストの問題が大きかったですね。しかし、これまで数世代に渡って進化を積み重ねてきた13型のラインをこれ以上進化させようと思ったら、考え方をイチから見直す必要があります。これは大きな決断でしたが、VAIOの目指すもの、VAIOに求められていることを考えた時、リスクを取ってもやるべきだという結論に達しました。
ただし、全ての部品を国内調達、国内生産にしてしまうのはコスト面で現実的ではありません。そこで新しいVAIO S11/S13(およびPF/PGシリーズ)では、ボトム部分と、そこに実装されるメイン基板を海外で生産することでコストダウンも追求。海外製部品と国内生産の良いところ取りをしています。
また、工場ラインの設計については、製造技術担当の清水に設計段階から参加してもらい、スムーズな組み立てができるよう積極的に意見交換しながら開発を進めました。
清水:我々はこうしたやり方を「上流設計」と呼んでおり、フラッグシップモデルであるVAIO Zから挑戦してきました。そして新しいVAIO S11/S13(およびPF/PGシリーズ)には、そこで培ってきた技術やノウハウが全てつぎ込まれています。例えば、本体の剛性に大きな影響を与えるキーボードの組み立てや、品位が求められる背面カーボンパネルの貼り付けなどを高い精度で実施できるのは、これまでVAIO Zの製造に携わったメンバーの経験と、最適な設備開発能力があればこそです。
巣山:そのほか、セットの組み立て方も全面的に見直しました。これまでは本体をひっくり返して、パームレスト面に裏側からパーツを組み上げていくという手法を採っていたのですが、新しいVAIO S11/S13(およびPF/PGシリーズ)では、ボトム面を基準にする方法に転換。キーボードを最後に被せるかたちとなったため、例えば英字配列キーボードや指紋認証など、カスタマイズパーツの受注状況に応じて柔軟に対応できるだけでなく、メンテナンス性も向上しています。
--「正当進化」でありつつも、いや、「正当進化」を目指したからこそ、その作り方からガラリと変わった、新しいVAIO S11/S13(およびPF/PGシリーズ)。最後に、これを読んでいるお客さまにメッセージをお願いします。
清水:長らく日本と中国の製造現場も見続けてきた人間として断言できるのが、新しいVAIO S11/S13(およびPF/PGシリーズ)がメイド・イン・ジャパンによって、より良いものに仕上がっていると言うこと。店頭で一度、実物を持ち上げてみてください。それだけでその品位の高さ、剛性感が伝わってくるはず。「PCなんてどれも同じ」と思っている方にこそ、ぜひ触ってみていただきたいですね。
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