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VAIO S11/S13・VAIO Pro PF/PG開発ストーリー Vol.2 開発者が語る「もっと! どこでも“快適”オンライン」

VAIO S11/S13・VAIO Pro PF/PG開発ストーリー Vol.2

支持を集めた先代VAIO S11の「どこでも“快適”オンライン」を越える速度、安定性を実現するために。

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PC事業部
PC設計部電気設計課
Wirelessエンジニア

鈴木 陽輔

PC事業部
PC設計部プロジェクトリーダー課
エレクトリカルプロジェクトリーダー

江口 修司

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PC事業部
PC設計部電気設計課
Wirelessエンジニア

小川 圭一

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PC事業部
ソフト&ソリューション開発部
ソフト設計課

瀧川 晶義

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PC事業部
PC設計部電気設計課
チーフボードデザインエンジニア
Wireless/EMCエンジニア

細萱 光彦

さらなる「どこでも“快適”オンライン」を目指して

--新しいVAIO S11/13(およびPF/PGシリーズ)は、VAIOとして2世代目のSIMフリーLTE対応PCとなります。その開発にあたって設定した「目標」を教えてください。

無線設計リーダー 鈴木:2015年12月に発売したVAIO初のSIMフリーLTE対応モデル先代VAIO S11(VJS111シリーズ)では、LTEおよびWi-Fiが確実に安定して繋がるということを目標にしました。それは今回のVAIO S11/S13(およびPF/PGシリーズ)でも変わっておりません。その上で今回は、国内のいわゆる「3大キャリア(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)」全てのクライテリア(接続要件)に適合することを目指しています。

VAIO S11
VAIO S11(VJS111シリーズ)

アンテナ設計 小川:「SIMフリー」を謳う以上、やはりできるだけ多くの通信バンドに対応しているべきだと考えました。そのため、アンテナ部分に関しては1から作り直しています。

新VAIOの全対応バンド

新VAIOの全対応バン新VAIOの全対応バンド

Chart

新VAIOの全対応バンド

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各キャリアのバンド対応状況は、2017年9月現在VAIO株式会社調べ
KDDIの相互接続性試験実施予定
ソフトバンクの相互接続性試験実施予定
*1 ソフトバンクネットワークをご利用の場合には、ファームウェアのアップデートが必要になります。
*2 ソフトバンク網では非対応

--その点で苦心した点がありましたか?

小川:アンテナの適正サイズは周波数帯によって変わります。新しいVAIO S11/S13(およびPF/PGシリーズ)は、より幅広い周波数帯に対応させたかったので、それらをどのように共存させるかが悩ましかったですね。また、11型モデルと13型モデルでボディサイズが異なるため、その整合性をとるのも大変でした。

--通信の大敵である本体内部のノイズ対策についてはいかがでしょうか?

小川:より幅広い周波数帯に対応するということが、この点でも大きな影響を及ぼしています。対応バンドが増えるということは、ケアしなければならない(通信に悪影響を与える)ノイズが増えるということですから。かなりシビアでしたね。

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エレクトリカルプロジェクトリーダー 江口:ただ今回は、前回と違って我々にもノウハウがあります。先代VAIO S11(VJS111シリーズ)の時は手探り状態から始めなければならないところも多かったのですが、今回は2世代目ということもあって、設計の前段階から対策をスタート。効率的にノイズ対策を行うことができました。

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--具体的にはどんなことをしているのですか?

江口:先代VAIO S11(VJS111シリーズ)で効果が確認できている、CPU、メモリ、電源周りを全てシールドで封印することにより、そこからノイズが放射されないようにしています。かなりコストはかかりますが、大きな効果があることを確認済みですので、そこは躊躇しませんでした。

--先代VAIO S11(VJS111シリーズ)では、通信速度を向上させるために樹脂製ボディを採用していました。しかし、今回のVAIO S11/S13(およびPF/PGシリーズ)ではフラットアルミパームレストなど、金属素材を多用していますよね。これによって見た目の上質感は大きく上がりましたが、受信感度的にはマイナスなのでは?

小川:確かにアンテナ性能とノイズ耐性という点だけにフォーカスすれば、樹脂製ボディの方が作りやすいという面はあります。ただ、お客さまの声を聞いていると、やはりメタリックなデザインを好む方が多い。であれば、今回はメタリックなパーツを多用した上で、きちんとした通信性能を出すことにチャレンジしようと思いました。

--金属製のパーツを使うことで、どういったことが難しくなるのでしょうか?

小川:たとえば、アンテナの真上には絶対に金属製のパーツを配置できないので、それによって、デザインが制限されてしまうという問題があります。今回、アンテナはディスプレイの端の部分に配置されているので、そこだけは樹脂製にしなければなりません。この部分をなるべく目立たないよう、細くするのが大変でした。

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--キャリア・アグリゲーション対応についても教えてください。

鈴木:はい、今回は下り最大450Mbps(理論値)までの高速通信が可能な「LTE UE カテゴリー9」に対応しています。先代VAIO S11(VJS111シリーズ)では、下り最大150Mbps(理論値)のカテゴリー4に対応していたので、その1つ上ではなく、さらに2つ上を目指したいという気持ちがありました。本当に期限ギリギリまで試行錯誤することになってしまったのですが、何とか実現できて良かったです。

--その1つ下のカテゴリー6ですと、下り最大300Mbps(理論値)。実効性能でかなり大きな差が付きそうですね。

鈴木:はい。ただ、ここで大事なのは、カテゴリー9が3つの基地局を利用する、3波キャリアアグリゲーションであること(カテゴリー6は2波)。これによって高速になることはもちろん、通信の安定性が増すメリットがあります。今回、カテゴリー9対応を目指したのは、むしろそちらの理由の方が大きいかもしれません。

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--カテゴリー9対応と聞くとついつい「450Mbps」という数値に目を奪われてしまいがちなのですが、VAIOとしては速度だけでなく、安定性も重視して、この対応にこだわったということなのですね。ちなみに、これらを実現するには、どういうハードルがあるのでしょうか?

小川:3波キャリアアグリゲーションできちんとした性能を出すには、通信するそれぞれのバンドの性能をきちんと引き出す必要があります。接続している3つのバンドのうち1つでも安定しないと、それだけで速度、安定性ががくりと落ちてしまいますから。ただ、今回は設計初期から幅広いバンドに対応しつつ、各キャリアのクライテリアを守ることを目的にしていたので、想定通りのパフォーマンスを引き出すことができました。

鈴木:とは言え、その幅広いバンドにきちんと対応するというのがなかなか難しいところで……。新しいVAIO S11/S13(およびPF/PGシリーズ)では、700MHzから2.5GHzまでの帯域をサポートしているのですが、その両端の2つのバンドで性能を出すのにとても苦労させられました。しかも、この2つは、どちらも非常に大事なバンド。700MHzの方はその特性上、極めてカバレッジが広く、2.5GHzの方はキャリア・アグリゲーションで多用される非常に重要なバンドですから妥協はできません。細かい調整、テストを繰り返し、やっと満足いくスペックを実現できました。……正直、ここまでやっている通信モジュールはなかなかないんじゃないでしょうか?

徹底したフィールドテストでパフォーマンスを最終確認

--そのほか、通信機能の開発においてこだわった点がありましたら教えてください。

ソフト設計 瀧川:作った製品が想定通りのパフォーマンスを出すことができるか、実際に開発機を持ち歩いて、東京や大阪、名古屋など、いろいろな場所を廻って試しています。そこで取得した通信ログをフィードバックして……というのを何度も繰り返してクオリティを高めていきました。もちろん都市部だけではなく、信濃の山奥など、圏外になりがちなエリアでも試しています。

小川:高速移動時の基地局切り替え(高速ハンドオーバー)の実験は工場最寄りの安曇野ICから松本ICを何度も往復して試しました。多い日は10往復とかしたことも。

江口:料金所のおじさんは「何だ、こいつら?」とか怪しんでいたんじゃないでしょうか(笑)。

--(笑)。でもこういう検証って、やっぱり最後は足で、なんですね。

瀧川:そうですね。今回のVAIO S11/S13(およびPF/PGシリーズ)はプレイスフリー、ストレスフリーを掲げていますから、どんな場所でも、どんなシチュエーションでも快適に通信できなければなりません。そのため、実際のユーザーがどのような環境で、どのように使うかを想定し、それらを可能な限り全て試すようにしています。

瀧川:そうして取得した通信ログの分析については、取得したログと位置情報と紐付けて、地図上に表示するような専用のツールを開発。問題がどこで発生したのかなどを、後から確認しやすいようにしています。先代VAIO S11(VJS111シリーズ)の時はこれらを全て手書きのメモでやっていたので、そのときと比べると検証効率は格段に向上していますね。

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※写真はイメージです。

--そういえば、先代VAIO S11(VJS111シリーズ)でも、東京・大阪間を実際に日帰りで往復して、通信が途切れないこと、バッテリーが切れないことを確認するというハードなテストを行っていましたが、今回はやらなかったんですか?

鈴木:もちろんやりました。前回はそれを細萱が1人でやったんですが、今回は瀧川と小川の2人が、11型モデルと13型モデルを1台ずつ持って、同じように往復しています。この際、こだわったのが、今回はあえてネットワークが混み合う時間帯にぶつけてやろうということ。

小川:オフィス街など人の多い場所はお昼時にネットワークが非常に込み合い、通信速度が大きく落ちます。ですので、今回は2日に分けてテストを行いました。1日目は東京でお昼時間を中心にテストを行い、翌日、大阪駅周辺でも同時間帯に同様のテスト行えるよう東京駅を出発しました。

瀧川:で、そのまま今度は名古屋に行って、そこから長野までもう1回(笑)。

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--ハードですね……。そこで判明した問題点などはありましたか?

瀧川:このテストを行ったのは開発完了の直前。もうこれで大丈夫だろうとなったところで実施したので、特に大きな問題は起きませんでした。むしろ“問題が起きないことを確認するためのテスト”だったのです。

もちろんWi-Fiのパフォーマンスにも妥協なし

--続いて、どこでも“快適”オンライン、もう1つのキモとなるWi-Fiについて聞かせてください。

無線/基板レイアウト設計 細萱:今回の新しいVAIO S11/S13(およびPF/PGシリーズ)は、MU-MIMO(Multi User-MIMO)という次世代のWi-Fi技術に対応しています。

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MU-MIMO非対応のオフィス

MU-MIMO非対応機器では順番にデータ送信するため、接続する端末が増えるに従いネットワーク速度が低下します。

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MU-MIMO対応のオフィス

MU-MIMOは複数の端末に同時にデータ送信するため、端末の数が増えてもネットワーク速度があまり低下しません。

--MU-MIMOの実装にはどういった難しさがあるのですか?対応モジュールに差し替えるだけ、というような単純な話ではありませんよね?

細萱:MU-MIMOの特徴であるビームフォーミングを活かすためアンテナの指向性を改善して全方位の感度を上げたり、基本的なところですが、カンシールドでシステムノイズを下げたり、LCDから発生するノイズをシールドバーでブロックするなどと言った工夫を行っています。あとは、アンテナケーブルの配線もノイズ源を避けつつなるべく短くなるようにWi-FiとLTEモジュールのレイアウトを最適化しています。これによりノイズ影響やケーブル損失が減って、感度が良くなっています。

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鈴木:細萱は無線だけでなく、基板のレイアウトも担当しているので、レイアウト設計もWi-FiやLTEを考慮した工夫が盛り込まれています。

--やっぱり、LTEと同じくハードなテストを行っているのですか?

瀧川:もちろんです。LTEのように大阪まで行って、というようなことはしていないのですが、常時30以上のアクセスポイントが見える弊社工場という劣悪なWi-Fi環境(笑)で、大容量のファイルを無線で通信して、通信エラーや通信切断が起きないことを、500時間以上に渡って確認するテストを実施しています。スリープを解除したらすぐ繋がるかなどのテストなども、合計数万回はやったんじゃないでしょうか。ほか、1つのアクセスポイントに10台くらいのPCを繋げて、同時に通信するというテストも実施しています。

VAIOは国内初の「データプラン」対応PC

--最後に、改めて、このVAIO S11/S13(およびPF/PGシリーズ)の通信機能について、そのアドバンテージを語っていただけますか?

鈴木:今回のVAIO S11/S13(およびPF/PGシリーズ)は、業界初のカテゴリー9対応。また、VAIOとして初めてMU-MIMOにも対応しました。しかし、こだわったのはそうしたスペックや数字ではありません。我々が本当に大事にしたのは、VAIOを選んでくださった皆さんが、より快適に、いつでもどこでもインターネットに接続して作業ができる環境を作ること。今回、その象徴的な機能としてWindows 10の新機能「データプラン」に対応させました。

--「データプラン」についてもう少し詳しく教えてください。

鈴木:「データプラン」とは、必要な時だけ、必要な分だけ購入できる、モバイルネットワーク接続の販売サービスのこと。OSの機能として提供されるので、Windows 10にマイクロソフトアカウントを紐付けてあれば、あとは対応SIMカードを用意するだけで利用開始できます。実はすでに欧州のいくつかの国ではサービスが開始されており、今秋、いよいよ日本でも使えるようになりました。

--今年5月末に台湾で行われた「COMPUTEX TAIPEI 2017」でMicrosoftが披露した「Always Connected PC」構想のキモとなる部分ですよね。対応メーカーに国内では唯一VAIOが含まれていることも話題となりました。

鈴木:新しいVAIO S11/S13(およびPF/PGシリーズ)はおそらく国内初の「データプラン」対応PC。今回、国際的にインターネット接続サービスを展開しているフランスの企業Transatelと協業し、LTE対応モデルに対応SIMカードを同梱しています。

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データプラン

巣山:そしてさらに、データ通信量1GBまで無料で使える(有効期限:1か月)トライアルプランもご提供。これまで内蔵LTE通信機能を使ったことがないという人も、これを期にぜひともお試しいただきたいですね。使っていただければ、それがモバイルWi-Fiルーターやテザリングなどより、遙かに便利だと言うことが分かっていただけるはずです。ぜひとも新しいVAIO S11/S13(およびPF/PGシリーズ)で「SIMフリーLTE」デビューしてください。

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※本ページに記載されているシステム名、製品名は、一般に各開発メーカーの「登録商標あるいは商標」です。