VAIO Vision+ 14・VAIO Vision+ 14P 開発者トーク Vol.2

快適な使い心地を実現するために盛り込まれたVAIOの技術とノウハウ

ビジネスパーソンの「自由な働き方と高い生産性を両立する体験」を実現するべく生み出されたVAIO Vision+ 14・VAIO Vision+ 14P(以下、VAIO Vision+)。ここでは、そこに込められたVAIOならでの機能や細かな作り込みがどのようにビジネスに貢献するのかを開発の中核メンバーたちが熱く語ります。

開発本部 テクノロジーセンター
メカ設計部
メカ設計課

武井 孝徳

開発本部 テクノロジーセンター
電気設計部 EPL課
課長

板倉 功周

開発本部 ITソリューションセンター
ソフト設計部
ソフト開発課

永井 弘樹

開発本部 ITソリューションセンター
ソフト設計部 PCソフト課 兼
開発本部 プロダクトセンター

迫田 翼

進化した立体成型カーボン技術で薄さ、
軽さと強靱さを両立

−−わずか約325gという軽さと、最薄部約3.9mmという薄さは、常にPCを持ち歩く営業マンのようなビジネスパーソンの負担軽減と生産性向上に効きそうです。これほどの携帯性をどのように実現したのかを聞かせていただけますか?

武井:Vol.1でもお話ししましたが、VAIO Vision+では軽量と高剛性を両立させるため、本体背面パネルにカーボンを採用しているのですが、VAIO Pro PKなどで好評な熱硬化性カーボン(CFRP)から、リサイクル性も考慮してVAIOとして初めての挑戦となる熱可塑性カーボン(CFRTP)を選択しました。実はそれがさらなる薄型化と軽量化にも貢献しているのです。

−−もう少し詳しく教えてください。

武井:VAIOではかねてより「立体成型カーボン」と名付けた技術を用い、軽量・高剛性など高い物性がある反面、加工の難しいカーボンを複雑な形状に加工して利用してきました。法人導入実績も多いVAIO Pro PKでは、ディスプレイ背面パネルの左右端を折り曲げることで、強靱なカーボンの剛性をさらに高め、ハードなビジネス利用にも耐える堅牢性を実現しています。そして今回、VAIO Vision+では、4辺を折り曲げて箱型にすることで、形状による剛性の向上を実現させました。

−−この立体成型カーボン技術はVAIOの大きな技術的アドバンテージのひとつです。VAIO Vision+ではさらなる工夫により、薄さと軽さを両立させているんですよね?

武井:その通りです。成形の際、熱可塑性カーボン素材を加熱すると基材にある樹脂が水飴のように溶ける特性を利用し、剛性を高めるリブや、パーツ同士をネジで組み合わせるためのボス穴をカーボンと一体化した状態で形作っているのです。これまでこうした構造物は樹脂製パーツをカーボンに接着することで実現していたのですが、この一体化手法を用いることで薄型化、軽量化、高剛性化に加え、部品点数の削減や製造工程の簡略化、ひいてはその過程で使われるエネルギー削減までを実現することができました。

−−これはとてもユニークな工夫ですね。まるでカーボンの板からリブやボス穴が生えてきたように見えます。中央の背面スタンド台座部分も立体的に成形されているのですね。

武井:この背面スタンドも軽量化のために工夫を重ねた部分のひとつです。当初は平たい板形状だったのですが、穴を空けて軽量化しつつ、その周囲に立壁を付けて立体的な形状にして、変形しにくくしています。ヒンジの部分にもこだわっており、薄型でありながら自由な角度にしっかり固定でき、また、閉じる際はある程度な角度までいくとパタンと引き込む動作感を実現しています。

誰でも使える、シンプルな使い勝手

−−続いて、本体内部の電気設計やファームウェアについても話を聞かせてください。

迫田:本機を開発するにあたって、最初期に議論したのがVAIO Vision+をどういった方向性の製品にするか、です。軽量・シンプルな製品にする方向と、機能をてんこ盛りにしていく方向が考えられたのですが、今回はビジネスユーザー向けなので前者を追求していくことになりました。

この決定を受け、改めて必要な機能と不要な機能を選別。たとえばビジネス用途にはスピーカーや細かな画質設定も不要だろうとか(VAIO Vision+は直感的に操作できる物理的な輝度調整ボタンを搭載)、USB Type-Cだけで使えるようにとか、仕様を詰めていきました。

−−映像入力端子をUSB Type-Cだけに絞り込んだのは思い切った判断だと思うのですが、そこにはどういった思いがあったのでしょうか?

迫田:そこはかなり悩んだところです。ただ、HDMIなど他の映像入力端子では別途電源ケーブルも接続せねばならず、ケーブル周りが煩雑になってしまう問題が生まれます。これはある程度知識がある人であれば問題ないですが、そうでない人にとっては、どの端子に挿せばいいのか、どのケーブルを持ち歩けばいいのかなど、混乱の原因になってしまいます。特に会社から支給されて使う場合は、マニュアルを読む機会も少ないと思いますので 、「付属のUSB Type-Cケーブル1本で繋ぐだけ」というシンプルな使い勝手を目指しました。

−−そうしたシンプルさは、使う人だけでなく、機材を管理・サポートをする側にも大きなメリットになりますね。ちなみにVAIO Vision+には2系統のUSB Type-C端子がありますが、PCと接続する際はどちらを使うのでしょうか?

永井:どちらでも構いません。安価なモバイルディスプレイではPC接続用の端子と電源供給用の端子が分かれていることがあるのですが、VAIO Vision+では2つの端子が全く同様に働くよう設計しています。

板倉:実はこれ、言うほど簡単なことではありません。どちらの端子に挿すか、VAIO Vision+にケーブルが挿されたとき、すでにPC側には挿されているのか、突然抜かれた時にどうするのかなど、さまざまなシーンを想定してファームウェアを作り込んでいく必要があるからです。安価な製品で端子の役割を分けているのはその手間を軽減するためなのですが、我々はそれでお客さまの手間を増やしたのでは意味がないと考えました。

−−そもそもUSB Type-C端子が2系統あるのはなぜなのですか?

板倉:USB Type-C端子が1系統しかないノートPCにつなぐ場合でも、充電しながら使えるようにするためです。VAIO Vision+ではUSB PD パススルーという機能を用いて、PCのACアダプターとPCの間に本機を挟みこむように接続することで、PCとVAIO Vision+双方に電力が供給できるようにしています。

−−きっと、それも簡単なことではないんですよね?

板倉:そうなんです(笑)。USB PD パススルーでは、ACアダプターからの電力を文字通り、PCにパススルーしなければならないのですが、この薄い筐体では、その際に発生する熱の影響を受けてしまいます。一部の製品ではこの際、電力を絞って20Wくらいしか供給しないという制御がされているようなのですが、VAIO Vision+ではきちんと熱対策をしつつ、PC側に十分な電力(最大60Wまで)を供給できるように対策しています。これは特に、電力を多く消費する重い作業をしている時に効いてきます。

−−熱対策というのは具体的にはどのようなことをやっているのですか?

板倉:基板自体の軽量化も含めた基板設計の最適化に加え、熱を拡散しやすいグラファイトシートをかなり贅沢に使うことでファンレスを実現しました。もちろんそのためにはシートを貼り込むためのスペースを確保する必要があるのですが、メカ設計の武井と密にやり取りし、どのくらいの厚さ、大きさなら大丈夫かを詰めて、なんとかねじこむことができました。もちろんこれは熱設計のノウハウがVAIOに蓄積されていたからこそできたことだと思っています。

安心して、長く使っていただくために長期信頼性も追求

−−カーボン素材を活用することで薄さ、軽さに加えて強靱さも合わせて持っているVAIO Vision+ですが、長期信頼性についてはいかがでしょうか?

武井:モバイルディスプレイはPCを乗り換えた後もそのまま使い続けることができるため、ノートPCよりも長期間使われるものだと想定しています。VAIOではかねてより実際の利用シーンを想定したさまざまな品質試験で長期信頼性を評価しているのですが、 VAIO Vision+ではそれぞれの品質試験についてPC基準より多くの回数や時間をかけ、より長期に渡る信頼性を確認しています。また、むき出しの液晶パネルに加わる衝撃への耐性テストなど、VAIO Vision+ならではの品質試験も追加し、重点的に評価しました。

その他の品質試験についてはこちら

−−VAIO Vision+は、こうした厳しい試験を乗り越え、長期信頼性を証明しているということなんですね。

武井:はい。たとえば机の上に無造作に置くときの衝撃がボディや内部に少しずつダメージが蓄積するのですが、VAIO Vision+は本体形状が極めて軽いこともあって、そうした衝撃にもとても強いことが確認できています。また、液晶パネルへの衝撃についても、本体内部にクッション素材を配置するなどして、割れるのを可能な限り防ぐ構造にしました。

VAIO Vision+は既存のモバイルディスプレイと比べてやや高価な製品ですが、その分、長く安心してお使いいただけるよう長期信頼性の確保にも力を入れています。修理や故障の費用や手間を考えれば、決して割高な選択肢ではないものに仕上がったと思いますので、ぜひ多くのビジネスパーソンの皆さんにお使いいただきたいですね。

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