VAIO Z / VAIO Pro Z開発ストーリー Vol.5
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VAIO Z / VAIO Pro Z開発ストーリー Vol.5:開発者が語る「電源&バッテリー」 パフォーマンスとモビリティの融合を影で支える

VAIO Z / VAIO Pro Z開発ストーリー Vol.5:開発者が語る「電源&バッテリー」

30時間をゆうに超えるスタミナ、新開発の使いやすいACアダプター。
モバイルの要である電源&バッテリーにもVAIOのこだわりがふんだんに盛り込まれている。

PC事業本部エンジニアリング統括部
デバイスエンジニアリンググループ
システム設計課
エレクトリカル プロジェクトリーダー

板倉 功周

PC事業本部エンジニアリング統括部
デバイスエンジニアリンググループ
システム設計課

滝澤 恒二

バッテリー容量はむしろ小さくなった?

−−高性能CPUの搭載など、全体的にパワフルなVAIO Zですが、それだけに電力消費も大きいだろうと感じています。ここでは、VAIO Zのバッテリー、電源回りについてどのような作り込みがされているのかを聞かせてください。

エレクトリカル プロジェクトリーダー 板倉:まずバッテリーライフという観点で言うと、VAIO Zの消費電力は先代VAIO Zと比べてかなり少なくなっています。

−−え、そうなんですか!?

板倉:CPUも含め、全てが低消費電力のデバイスになっていますし、電源構成もゼロから見直していますから、ふだん使いにおいてはむしろ非常に電力消費が少なくなっているんですよ。ですからバッテリー容量が先代VAIO Zよりも小さくなっているにも関わらず、バッテリー駆動時間は最大約34時間(JEITA測定法 2.0)と大幅に伸張*しています。

* 2016年2月発売のVAIO Zクラムシェルモデルはバッテリー駆動時間最大約27時間。

−−それはすごいですね。これは開発時に何か目標となる数値があったのでしょうか?

板倉:少なくともフルHD液晶ディスプレイ搭載モデルについては24時間を越えたいという目標がありました。また、電力消費の激しい4K液晶ディスプレイ搭載モデルにおいても12時間を越えたいと考えていました。

−−結果、フルHD液晶ディスプレイ搭載モデルは最大約34時間、4K液晶ディスプレイ搭載モデルも最大約17時間駆動(いずれもJEITA測定法 2.0)をマークしていますから、目標は余裕でクリアできていますね。なんでしたらバッテリーをもっと小さくして本体重量を軽くするということもできたのでは?

板倉:ところがそうもいかないんです。VAIO Zがバッテリー駆動時でもフルにパフォーマンスを発揮するには、システムに充分なパワーを供給できるだけの電力が必要なのですが、これはバッテリーの容量にほぼ比例します。そうした点を踏まえ、さまざまな方向から検討して弾き出したサイズが53Whという数字になります。VAIO SX14が42.9Whなので、かなり大きなバッテリーなのですが、旧VAIO Zは58Whだったので、それよりは小さなものになりますね。

−−このバッテリーはVAIO Z専用に開発されたものなのですか?

板倉:そうですね。一般的な内蔵バッテリーは、バッテリーメーカーが標準で用意しているセルを組み合わせてバッテリーパックを形成するのですが、VAIO Zではギリギリまで無駄なスペースを削り、可能な限り大きなものを搭載するため、セルのサイズまで細かく指定して、専用のものを作ってもらいました。「ここの厚みをコンマ数mm削ると容量はどれくらい変わりますか?」みたいなやり取りをしています(笑)。

−−VAIOらしい作り込みだと思います(笑)。

板倉:それくらいギリギリを追求しています。たとえば、VAIOの従来機種では複数のセルを1つのパッケージにするために樹脂製のケースではなく、ラミネートフィルムで覆うことでサイズと重量を削っているのですが、VAIO Zのバッテリーではそのフィルムの重なり部分の厚みすら削っています。

−−……? ちょっとよく意味がわかりません。それはどういう意味ですか?

板倉:実際に見ていただいた方が早いですね。つまりこういうことです。

−−なるほど! フィルムでくるんで封をするところの重なりをなくしているんですね。

板倉:こうした細かい部分まで徹底的に手を入れていって、53Whのバッテリーを可能な限りコンパクトにして内蔵しています。

VAIO初のUSB Power Delivery対応
小型ACアダプターを新開発

板倉:一方でACアダプターをつないだ時には、デスクトップPCと同じくらいの電力を使って、最高のパフォーマンスを引き出せるような設計になっています。また、「VAIOの設定」アプリの「CPUとファン」項目で「パフォーマンス優先」モードに切り換えていただければ、バッテリー駆動時においてもACアダプター接続時と遜色のない高速動作が可能です。

−−そのために具体的にどういった工夫をしているのかを教えてください。

板倉:VAIOでは、2020年1月に発売されたVAIO SX14・VAIO SX12から電源の構成を大きく見直し、ACアダプター駆動時にACアダプターの能力を超える電力が必要になるとバッテリーから即座に電力を追加供給できる仕組みにしているのですが、それをVAIO Zにも導入しています。

【参考記事】VAIO SX14・VAIO SX12(2020年1月発売モデル)開発ストーリー Vol.1
開発者が語る「6コアCPUとVAIO TruePerformance®の相性は抜群」

板倉:ただし、VAIO Zはピーク時に60〜100Wもの電力を必要とするケースがあるため、根本的にACアダプター自体の電力供給能力を上げなければならないという課題がありました。現在、VAIO SX14などで使われている小型のACアダプターは出力40Wなのですが、これを越えるものを新たに作る必要があったのです。

−−大出力のACアダプターというと、VAIO S15用のものがすでに存在しますが、これではだめだったのですか?

板倉:たしかにVAIO S15用(出力90W)のものであれば、出力的には全く問題ありません。ただ、サイズが大きすぎますし、重量に至っては約330gもあります。VAIO SX14のACアダプターは約200gですから1.5倍以上の重さです。また、ジャック形状も電力量に応じてかなり大きくなっており、これをVAIO Zに使おうとすると本体の厚みが大きく増してしまいます(写真右がVAIO S15、写真左はVAIO SX14)。

ACアダプター設計 滝澤:VAIO Z Canvasで使っていたコンパクトな大出力ACアダプター(出力65W)もあるのですが、こちらもジャック形状が大きいので、新しいVAIO Zには使えません。

−−なるほど……。

板倉:ですので、ハイパワーでしかも携帯性を損なわず、さらにジャック形状も小さいという矛盾する要件のACアダプターを新開発する必要がありました。そして詳しくはこれから担当の滝澤が説明しますが、結論を言うと、USB Power Deliveryという技術を使うことで、出力65Wでありながら薄くコンパクトなACアダプターを作ることができました。

−−もう、パッと見で小さいことが分かるのですが、この新しいACアダプターは従来のものと比べてどれくらい小さくなったんですか?

滝澤:VAIO SX14など向けのコンパクトなACアダプター(出力40W)と比べて、体積比で約73%、質量比で約70%となっています(下写真)。また、同じ65W出力のVAIO Z Canvas用ACアダプターと比べると体積比約57%、質量比約65%にもなります。

−−このサイズをどのように実現したのかを教えてください。

滝澤:今回、製品に同梱するACアダプターとしては初めて、内部のスイッチング素子にGaN(窒化ガリウム)を採用しました。

−−GaNは、昨今、市販のACアダプターなどでも使われる事例が増えていますね。この素材にはどういったメリットがあるのでしょうか?

滝澤:詳しい説明は割愛しますが、従来使われていたシリコン(Si)と比べてとても高効率なので発熱が減り、それによってケースサイズを小さくできる、というのがメリットですね。また、高効率化されたことでケーブルについても、VAIO SX14向けACアダプターと同じくらいの太さにすることができました。

−−他社製のGaNを使ったACアダプターなどと比べて技術的にはどういった点にこだわっていますか?

滝澤:ACアダプターの設計は、さまざまな要素が組み合わさった複雑なもの。今回はGaNを使ったことで従来ACアダプターと比べて劇的な小型化ができたのですが、過度に小さくし過ぎると、触れないほど熱くなってしまうため、VAIOとしてそのあたりのバランスをきちんと考えて、今回はこのサイズにしています。

−−新しいACアダプターでサイズ・重量以外にこだわった部分を教えてください。

滝澤:市販のUSB Power Delivery対応のACアダプターって、ケーブルが別体になっていることが多いのですが、VAIO Z用の新しいACアダプターではケーブルを一体化しています。

−−理由を教えてください。

滝澤:ケーブルを取り外せるようにするということは、付属のケーブルとは異なる、他社製のケーブルを使われる可能性があるということ。実はUSB Power Deliveryでは、規格上、3Aを越える電力供給を行うためにはケーブル側にICチップが内蔵されている必要があります。内蔵されていないケーブルでは自動的に電力供給量が抑えられてしまうので、そういったトラブルを防ぎたいというのが1つ、その上で、規格にきちんと準拠していない粗悪なケーブルによって本体、あるいはACアダプターが故障するのを防ぎたいというのが1つです。

板倉:あとはこのACアダプターを、VAIO Z以外の機器に利用されるケースも想定し、20V・3.25A以外にも15V・3A、9V・3A、5V・3Aなどといったさまざまな出力電圧に対応させています。複数のUSB PD機器を出張などに持っていく際にも、これ1つあれば基本的には使い回していただけるはずです。

−−さまざまなケースで安心して、確実に使えることを重視したんですね。

滝澤:はい。そして、ケーブルの先端、コネクタ部分の形状にテーパー(先にすぼまっていくような角度)をつけることで抜き差しがしやすいようにもしています。これはVAIOのACアダプター専用の形状で、かなりコストのかかる取り組みではあるのですが、抜き差しすることの多いケーブルですので、ここは使いやすさを重視しています。

長く、そして使いやすく

−−そのほか、電源回りでこだわったことがありましたら教えてください。

板倉:左右両方のUSB Type-C™端子から充電できるということにこだわりました。従来のACアダプターでは本体左側の電源端子にジャックを挿す必要があり、使う場所によってはケーブルを大きく回り込ませねばならない不便さがありました。対して、VAIO Zでは左右お好きな方のUSB Type-C™端子をお使いいただけます。

−−左右両方のUSB Type-C™端子から充電できるようにするには、何か工夫が必要なのでしょうか?

板倉:はい。USB Type-C™端子をUSB Power Delivery対応にするには、PDコントローラーという半導体チップが必要なのですが、これを左右それぞれのUSB Type-C™端子に用意しています。なお、両方のUSB Type-C™端子にACアダプターを挿した場合は、PDコントローラーがACアダプターと通信を行い、自動でより電力供給能力の大きなACアダプターを使うようになっています。

−−そしてVAIO Zでは、新機能として「モダンスタンバイ」に対応しました。VAIOとして初対応とのことですが、そもそもこれはどういった機能なのでしょうか?

板倉:Windows 10の機能のひとつで、スリープ状態でも省電力でインターネットに接続し、メールを受信したり、Skypeの着信を受けたりできるようにするものです。また、スリープからの復帰が高速化するというメリットもあります。

−−モダンスタンバイでは仕組み上、どうしても待機時電力が増えてしまうと思うのですが、そのあたりはいかがですか?

板倉:よく聞かれることではあるのですが、従来システムがスリープしている時の待機時電力とさほど大きな差はありません。個人的には、モダンスタンバイのさまざまなメリットの方が圧倒的に大きいと感じているので、ぜひ使っていただきたいですね。本当にスリープからの復帰が高速ですし、復帰後に溜まったメールなどを受信し終わるのを待つ必要がないのは快適です。VAIO Zの新機能であるVAIO User Sensingとの相性もとても良いんですよ。

−−最後に、VAIO Zの電源回り、新しいACアダプターに込めた想いを聞かせてください。

滝澤:私が今回の新しいACアダプターでこだわったのは、使いやすさと信頼性です。コネクタ形状など、本当に細かいところまでこだわり、この先の5年、10年使い続けられるものを作ったつもりです。VAIOがこういうところにまで手を抜いていないということを感じていただけるとうれしいです。

板倉:VAIO Zのコンセプトであるパフォーマンスとモビリティの高次元での融合を実現するために電源セクションでも力を尽くしました。ACアダプターを繋いだ状態でハイパフォーマンスを出し切れるようにしたのはもちろんのこと、バッテリー駆動でもパワフルに、さらに長時間使えるように設計しています。両方のシチュエーションで満足できる仕上がりになっていると思いますので、ぜひ、いろいろな場所で使ってみてください。

2021年5月27日 VAIO Pro Z発表にあたり、見出しを修正いたしました。

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