VAIO S11/S13・VAIO Pro PF/PG開発ストーリー Vol.5
歴代VAIOのコンセプトを受け継ぎつつ、これまで見たことがない、新しいVAIOを生み出した。
PC事業部 PC設計部
プロジェクトリーダー課
課長
巣山 剛志
PC事業部 PC設計部
メカ設計課
メカ二カルプロジェクトリーダー
曽根原 隆
新モデルが掲げる“スマート”デザインとは?
--まずは、VAIOがPCをデザインする際、どういったことを意識しているのかを教えてください。
メカニカルプロジェクトリーダー 曽根原:いろいろありますが、やはり「かっこいいPCであること」ことは狙っていますね。それをベースに「品質」や「機能」、「使いやすさ」といったものを含めて考えていくというのが通常のやり方です。もちろん、かっこよければ多少使いにくくなっても構わないという考え方はしません。それはVAIOではありえません。
巣山:どんなに薄くて軽いものを作っても、触った感じがペコペコしていては駄目。そこに品位が備わっていなければならないのです。
--今回のVAIO S11/S13(およびPF/PGシリーズ)では“スマート”デザインというコンセプトを掲げています。これはどういったものなのですか?
プロジェクトリーダー 巣山:一言で言うと「機能美」でしょうか。機能のためのデザイン、使いやすさのためのデザイン、そういったものを今回、“スマート”デザインとして掲げました。新しいVAIO S11/S13(およびPF/PGシリーズ)は、面、角度、素材、全てに何らかの意図が込められています。
--新しいVAIO S11/S13(およびPF/PGシリーズ)のデザインで、ここを見てほしいというポイントはどこですか?
曽根原:今回のデザインは、VAIO Proシリーズから先代VAIO S13(VJS131シリーズ)まで脈々と受け継がれてきたデザインの正当進化。そのコンセプトをしっかり残しつつ、新しいものを生み出すことにチャレンジしています。そして、その象徴の1つと言えるのがフラットアルミパームレスト。このアイデアをいかに巧くまとめていくかというのが、今回のデザインで最も苦労した点でした。
--では、そのフラットアルミパームレストのデザインについて、詳しく教えてください。
曽根原:先代VAIO S13(VJS131シリーズ)では、キーボード面の手前側部分だけがアルミ素材になっていました(下写真)。フラットアルミパームレストはそれを全面に拡大してしまおうという試みなのですが、先代VAIO S13(VJS131シリーズ)の構造をそのままにアルミ部分を上に伸ばしていくと、閉じた時にそれが側面に見えてきません。
--先代VAIO S13(VJS131シリーズ)では、樹脂製ボトムケースの内側にアルミパーツをはめ込んだ形状になっていますから、確かに開かないとアルミ板が見えてきませんね。
曽根原:対して先代VAIO S11(VJS111シリーズ)では、樹脂製の1枚板を側面まで見えるように被せているのですが(下写真)、これと全く同じことをやると、今度は背面のオーナメントが埋没してしまうという問題が生まれます。
曽根原:なので、これをどういうハウジング構造で実現するのかには本当に悩まされました。当然このハウジング構造は、全体の剛性にも関わってくるので、見た目と剛性の両立できるポイントを試行錯誤して決めています。
--ほか、フラットアルミパームレスト周りで工夫された点はありますか?
曽根原:デスクの上に置いて、ディスプレイを開いた時の「迫力感」ですね。全体の薄さを狙うためには、先代VAIO S11(VJS111シリーズ)のようにパームレスト上端にヒンジを通すための切り欠きがあった方が良いのですが、それをやると開いた時に、まずそこが目についてしまいます。登場感を高めるためにはどうしてもそれは避けたかったので、ヒンジ部分の設計を工夫して何とか乗り越えました。
--一見、シンプルに見えるデザインなんですが、だからこそ難しかったということですね。それ以外の部分で苦労したところはありますか?
曽根原:フラットアルミパームレストと同じくらい試行錯誤したのが、まさに今お話しした、ヒンジ周りの形状決め。実は新しいVAIO S11/S13(およびPF/PGシリーズ)のデザインは、ここで多くの点が決まってくるのです。フラットアルミパームレストの側面巻き込みの量、キーボードの持ち上がる高さ、背面オーナメントの幅、全てがここから導き出されます。そして、それゆえにベストなバランスを見つけだすのが大変でした。モックアップを何度も作り直しましたし、データ上ではそれこそ無数に試しています。
--先代VAIO S13(VJS131シリーズ)のニュアンスを残しつつ、スッとヒップアップしていてかっこいいですよね。一度こちらを見てしまうと、先代モデルはお尻がたれているように見えてしまいます。オーナメントの存在感もより高まったように感じました。
巣山:実用性の面でも、ここに手を入れて持ち上げられるというメリットがあるんですよ。
自慢の色と質感を店頭で確認してみてほしい
--続いてカラーバリエーションについて教えてください。VAIO S13はブラックとシルバーの2色ですが、VAIO S11はこれにホワイトとブラウンが追加されています。このラインアップはどのようにして決定したのでしょうか?
巣山:ブラックとシルバーはビジネスユーザー向けの定番色。ただ、ブラックについては今回、いつもよりマットな落ち着いた感じにしています。逆にパーソナルユーザー向けにご用意させていただいたがホワイト。こちらも先代VAIO S11(VJS111シリーズ)と比べてマットなカラーリングにしています。従来同様のパールホワイトも試したのですが、内面のフラットアルミパームレストとのマッチングを考えるとマットな方が良いだろうと考えました。
曽根原:マットな塗装は色移りが心配だと思われがちですが、もちろん、この対応としても独自の評価を実施し、社内基準を満たした塗料を選定しています。
--最後のブラウンについては、どういった層をターゲットにしているのですか?
巣山:先代VAIO S11(VJS111シリーズ)では4色目としてピンクをご用意したのですが、それだとどうしてもターゲットが女性に絞られてしまいます。そこで今回は、ビジネスシーンでもパーソナルでも、男性でも女性でも使っていただける新色としてこの色を選びました。
曽根原:個人的にブラウンは非常に気に入っています。色味や質感についてもかなりこだわっているので、ぜひ店頭でご覧いただきたいですね。
巣山:そうそう、店頭で注目してほしいポイントがもう1つ。フラットアルミパームレストのキーとキーの間にもヘアラインが入っているのも、デザインへのこだわりの1つなので、ぜひここもご確認ください。
曽根原:一般的にヘアライン加工って凹凸のある形状には入れられないのです。ヘアラインを入れた後に形状加工するというやり方もありますが、それだとヘアラインがきれいに仕上がりません。これまでもずっとやりたいと思っていたのですが、今回、フラットアルミパームレストを採用することでついに実現することができました。ちょっとしたこだわりですが、こうした点を喜んでもらえると、開発者としてはとてもうれしく思います。
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