将来を見据えたIT投資でDXを実現
コロナ禍にもスムーズに対応
上席執行役員・最高情報責任者
最高サプライチェーン責任者
青山 美民
IT部
インフラストラクチャーグループ
グループ長補佐
水内 智郎
ここ数年、企業の経営課題として取り上げられることが多くなってきた「デジタルトランスフォーメーション(DX)」。今やその早期の対応が求められるようになっていますが、そうした社会の流れよりも一足早くIT投資を行い、着実にDXを進めてきた企業がNISSHA株式会社です。同社は約10年前から新しい働き方に向けたIT環境の実現に取り組んできました。いつでもどこでも働ける環境を整えてきたことで、コロナ禍においてもトラブルなくテレワークへ移行できたといいます。
同社がスムーズにDXを推進できた理由をNISSHA 上席執行役員・最高情報責任者・最高サプライチェーン責任者 青山 美民さんに伺いました。
「クラウド化の推進」と「働き方支援のサービス拡大」を軸にDXを推進
京都に本拠を構えるNISSHAは1929年創業、印刷技術にラミネーション、コーティング、成形などの技術要素を融合させながら常にコア技術、そして事業を拡大してきた90年以上の歴史を誇るグローバルカンパニーです。現在では「産業資材事業」「ディバイス事業」「メディカルテクノロジー事業」「情報コミュニケーション事業」の4事業をメインに成長を続けています。
同社は、早くからITへの投資を行ってDXを進めるとともに「新しい働き方」の実践にも取り組んできました。そうした同社のDX推進の指揮を執るのが青山 美民さんです。
DX推進にあたって、まず「Anytime, Anywhere and Stress-free」「Simple, Single and Predictive」という2つのフレーズをNISSHAのITコンセプトに掲げ、将来の働き方、そして会社組織のあり方について考えたといいます。
「将来はもっとモバイルディバイスが普及して、オフィスのパソコンでしか仕事ができない状況はストレスになるだろうと考えました。育児や介護が問題になっていくなかで、自宅で仕事をするという働き方も考える必要があります。自然災害に備えたBCP (Business Continuity Plan)対応も不可欠です。グローバルにビジネスを展開していくなかで、いつでもどこでもどんなディバイスからでも働ける環境を実現する必要がありました」(青山)
併せて、2つの大きな柱となる指針を打ち出しました。「クラウド化の推進」と「働き方支援のサービス拡大」です。
ITコンセプトと2つの指針に従って、具体的な取り組みに着手します。2012年には海外拠点を含めたすべてのグループ全社を対象にSkype for Businessを導入し(2019年にMicrosoft Teamsに移行)、2013年にはBYOD (Bring Your Own Device)の導入と社員へのレンタルパソコンの支給も開始。これが現在導入しているテレワーク成功の素地になっているといいます。
また、2014年にSAP ERP(Enterprise Resource Planning)とBusiness Warehouse等インフラのクラウド化を進め、2016年にはユーザー認証基盤のクラウド化やeラーニングの導入にも取り組みました。さらにチャットボットやRPA (Robotic Process Automation)の導入、ファイルサーバー、メールサービスのクラウド化、パソコンバックアップなど意欲的な取り組みを短期間で次々と成し遂げていきました。
「コンプライアンスの観点から、 全社統一のコミュニケーションツール(Teams)の導入や、ユーザー認証基盤、ファイルサーバー、メールサービスのクラウド化、パソコンバックアップといった取り組みを、海外を含めたグループ全体で進めました。」(青山)
その結果、2019年にはITインフラの全面クラウド化を完了。働き方支援のサービス拡大にも成功し、見事に2つの指針を達成したのです。
ITインフラの全面クラウド化を実現したことで、現在、NISSHAでは3つの方法でプライベートクラウドサービス群にアクセスできる体制が整っています。一つは、会社支給のレンタルパソコンからのアクセス、そして社給携帯や社員自身のBYODディバイスからのアクセス、もう一つは在宅勤務時に自宅のパソコンから仮想デスクトップを活用してのアクセスです。BYODディバイスとユーザー認証によるアクセス権管理で高度なセキュリティを保ちつつ、シングルサインオンによるシンプルな利用環境をユーザーに提供しています。
RPAの導入で20,000時間もの業務時間を削減
業務効率化の一環として導入しているRPAでも、驚くべき成果が上がっているといいます。
「当社では4つの事業があり、それぞれ仕事の進め方も違います。そこで、社員が自分でRPA開発に取り組める環境をつくるために、2019年5月からIT部員のトレーナー認定資格の取得を進め、RPA教育を内製化していきました」(青山)
社内トレーナーからトレーニングを受け成果を出した社員が各事業部でRPAのメリットを口コミで広げたことにより、RPAはまたたく間に全社に浸透。取り組みからわずか1年で、20,000時間もの業務時間削減効果を生み出しています。
さらにRPAはさまざまな副次的効果も生み出しました。
「今までリソース不足のため手で行うならばあきらめていたような仕事もRPAなら可能になりました。さらにRPAを導入するために業務の標準化や自動化を進めていたことで、テレワークへもスムーズに移行できました」(青山)
また、RPAとチャットボット・BPMシステムを組み合わせるやり方での「業務の完全自動化」にも取り組んでいるそうです。たとえばチャットボットが窓口となってスタートした業務をBPMシステムで承認し、実作業はRPAが行うという流れです。特にヘルプデスク業務ではRPAによる自動化が進んでおり、本当の意味での完全自動化を実現されつつあります。
もっとも、RPAにも課題があるため、導入前には対策を講じてから社内に展開しました。
「RPAはきちんと管理しないと無政府状態になります。ですから、担当者が異動するときなどは注意する必要がありますし、ルールも決めておかないといけません。本番環境に移す際もIT部門できちんと審査を行っています」(青山)
NISSHAでは、「ワークライフバランス」や「発想を刺激する環境づくり」など、新しい働き方を実現するためのさまざまな施策を導入しています。それらを可能にしているのが、いつでもどこでもどんなディバイスからでも働けるIT環境を実現した同社のDXです。
総合的に考えて、VAIOを選ばない理由はなかった
NISSHAのDXにおいて重要な役割を果たしているのがレンタルパソコンです。過去、同社では各部署でIT資産を管理しており、パソコンの入れ替え時期もまちまちだったため、部署によっては古いパソコンを使い続けているケースもありました。「Anytime, Anywhere and Stress-free」(いつでもどこでもストレスフリーに)を実現するためには、IT資産を集中管理する必要があるとNISSHA IT部は判断。加えて「機種は毎年見直し、その年の最適な機種を導入する」という方針を定め、IT部で一括購入して、国内のグループ会社のユーザーに貸し出すレンタルパソコンというサービスを開始しました。
2013年頃のサービス開始当時は、デスクトップパソコン、ノートパソコンが混在していましたが、全てノートパソコンに統一。携帯性や処理能力を勘案して、モバイル標準、モバイルハイスペック、スタンダード、ワークステーションの4機種をIT部が選定し、約3年をかけて国内すべてのグループ会社において、3,000台に上る入れ替えを完了しました。
2013年以降、毎年機種を見直していましたが、2017年、NISSHA IT部が選んだのはVAIOでした。その理由は、多くの選定評価項目のすべてでVAIOが高い評価を得たことです。
評価項目には本体重量や持ちやすさだけでなく、アダプタの形状やバッテリー稼働時間、キーボードの使いやすさ、故障のしにくさなどを規定。ノートパソコンは同社のDXの鍵を握るディバイスですから、一つたりとも妥協は許されません。
VAIOは、高いモバイル性を持ちながら VGA、HDMI、USB、有線LANといった必要なインターフェイスがそろっているなど、同社のニーズの多くを満たしていたといいます。
「VAIOは他社製品と比較して総合的にもっとも当社に適したノートパソコンだと評価しました。特に故障率は過去の導入機種と比較すると明らかに改善されました。持ち運びに適したサイズ感のノートパソコンとしては最高の堅牢性だと思います」(青山)
その結果、NISSHA IT部は2017年以降、継続して、レンタルパソコンの機種にVAIOを選定しています。
IT部の水内さんは、VAIOを3年間使い続けた「評価」として、「不満点があっても次期モデルで改善されている」、「キッティングの品質が良く、高い技術力と豊富な知識でサポートしてくれるため、手戻りが発生しなかった」という点を高く評価しています。
「VAIOを導入する前は、社員から、重い、すぐ壊れるといった不満が多くあり、『他に良いパソコンはないですか』という声が聞かれたのですが、VAIOに変えてからそういう声はまったく出ていません。こうなると、VAIOを選ばない理由はないとさえいえますね」(水内)
2020年、コロナ禍を受けて本格的なテレワーク導入に踏み切ったNISSHA。すでにDXを進めていたことで、特にトラブルもなくスムーズに移行できたといいます。
「新型コロナの感染状況にすばやく対応できたことで、社員からも『うちのITってこんなに進んでいたんですね!』という驚きの声が上がりました。大切なのは時代の先を読み、手を打っていくこと。変化が急すぎると社員も混乱してしまいます。7年間かけて、ゆっくりじっくりと改革を進めていったことで、ユーザーが気づく前に準備を終わらせることができたのです」(青山)
明確なビジョンを提示し、早くからIT投資を行ってDXを強力に推進したNISSHA。これからも、時代の波をとらえた革新を続けていくことでしょう。
2022年8月3日更新
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