VAIO A12・Pro PA開発ストーリー Vol.3

開発者が語る
「2 in 1ならではの『快』」

ユーザーが意識しない
ところだからこそ、
一切の妥協をしない。

  • PC事業部 PC設計部

    プロジェクトリーダー課

    花村 英樹

  • PC事業部 PC設計部

    メカ設計課

    広吉 高一

  • PC事業部 PC設計部

    メカ設計課

    拇速 真

  • PC事業部 PC設計部

    電気設計課

    細萱 光彦

  • PC事業部 PC設計部

    電気設計課

    水谷 浩

  • ソフト&ソリューション開発部

    ソフト設計課

    筒井 正直

  • PC事業部 PC設計部

    電気設計課

    板倉 功周

デタッチャブルの「快」は、「スタビライザーフラップ」だけじゃない

--VAIO A12・Pro PAでは、「スタビライザーフラップ」以外にも、これまでのデタッチャブル構造を採用した2 in 1ノートPCにはない使い勝手を実現しようとしている点がいくつもあります。たとえば「デュアルリリーススイッチ」がそう。これはどのようにして生まれたのでしょうか?

デュアルリリーススイッチ

プロジェクトリーダー 花村:お客さまの実際の利用シーンを想定して付けた機能の1つです。例えば電車の中などで、タブレットだけを使いたいのに、いちいち本体をカバンから取りだしてディスプレイ部分を切り離すというのはちょっと不格好ですし、切り離したキーボードユニットも邪魔ですよね。その点、VAIO A12・Pro PAなら、ディスプレイが開いた状態でも、閉じた状態でも、サッとディスプレイ部分だけを取り外すことができます。

なお、この際、この2つのスイッチが同じ感覚で操作できるようこだわりました。意識せず設計すると、構造にもよりますが内側のスイッチは固いのに、外側のスイッチは緩いなんてことになってしまうのです。そういうことにならないよう、中の構造を見直し細かくチューニングしています。

メカ設計担当 広吉:また、細かい工夫としては、外側のスイッチは指の腹で、内側のスイッチは指の爪先で操作することになるので、そのどちらでも指がかりが良くなるよう、スイッチの形状も工夫しています。

--スイッチを2つ付けるということは、部品点数も増えますし、重量も増えますよね。その辺りはチーム内で反対意見などなかったのでしょうか?

メカ設計プロジェクトリーダー 拇速:パーツを増やす以上、どうしても重くなってしまうのは避けられません。しかし、ユーザビリティを向上させるためならと考え、2つのスイッチが、1つの軸で摺動するように設計し、最小限の重量アップでこの機能を実現しています。

--そのほか、デタッチャブル構造の使い勝手の点でこだわった点がありましたら教えてください。

拇速:ずばり「音」ですね。デタッチャブル構造の2 in 1ノートPCはそのままだと合体時にガチャーンという非常に耳障りな金属音が鳴り響くのですが、それを消すため、合体時に金属がぶつかり合うところに樹脂を入れた試作で効果確認し、量産では樹脂をインサート成形することで、追加部品を発生させることなく対策しました。

広吉:実は電気設計的にはこの金属同士が接触する部分にタブレットとキーボードユニットのグラウンド接続の機能も持たせていたので、ここを樹脂で覆ってしまうのはかなり具合が悪い。そこで、別途、内部に板バネを組み込み、接続を確保するということもやっています。

ワイヤレスにとって、VAIO A12・Pro PAは最悪の環境だった

--続いては、今やPCの基本機能ともいえる通信機能についてお話ください。

無線/基板レイアウト設計担当 細萱:VAIO A12・Pro PAでは、従来のVAIO S13・Pro PGなどと同じく、ディスプレイ上部部分にアンテナを集約させています。ただ、大きく異なっているのは、同じディスプレイ部分に、CPUやメモリー、電源などのノイズを大量に発生させるパーツが存在していること。これをどのように遮断するかが、最大の難問でした。

--そのためにどういった工夫を行っているかを教えてください。

細萱:少しでも遠い場所にノイズ源を隔離した上で、これらのノイズを遮断するカンシールドで覆っています。右下にあるメインボードのほぼ全てを金属板で覆っています。かなり大がかりなことをやりましたが、結果として、これほどの悪条件にもかかわらず、LTE、Wi-Fiとも、従来モデルに迫る通信速度が実現できていると思います。

花村:ちなみに、このカンシールドの役目は、通信の邪魔になるノイズを防ぐことだけではありません。CPUなどから出る熱を効率良く排熱させるヒートシンクの役割もありました。そして、その上で、厚みを増やさないというかなり高いハードルを課せられていたため、これまでやったことのない工夫を施しています。

それがカンシールドの二重構造になります。放熱と軽量化の為、ベース部分にはアルミニウムを採用し基板のグランドと強固に接続させる外枠部分は強度を確保するためステンレスを使用しています。しかし、単純にこの二重構造を実現しようとするとアルミニウムとステンレスの重ね合わせ部分が2倍の厚さになってしまいます。そこで、今回はアルミの外周部分をレーザーで半分の厚さに削り、そこに薄いステンレスのフレームを接合することで、薄さもしっかり確保しました。こんなことは普通はやりません(笑)。

そして、結果としてVAIO A12・Pro PAはファンレス構造に。静かな場所でもストレスを感じることなく使っていただけるようになっています。

細萱:そして、もう1つのワイヤレスとなる、キーボードとの通信ですが、こちらもノイズ源から最も遠く、そしてキーボードにより近い、タブレット左下角にアンテナを配置しています。この際、通信方法は、Bluetoothではなく、VAIO Z Canvasで実績のある、2.4GHz帯を使った別方式を採用し、安定した、快適なタイピングで文字入力できるようにしています。

ソフト設計プロジェクトリーダー 筒井:キーボードといえば、今回、VAIO A12・Pro PAからの新機能としてキーカスタマイズ機能を導入しています。「Fn」キーと「Ctrl」キーの位置を入れ替えたり、ファンクションキーの追加ができ、よく使うアプリをワンアクションで起動するなど好みに応じたカスタマイズができますので、ぜひこちらもお試しください。

200パターン以上の組みあわせの全てで最適解を選び出す充電機能

--VAIO A12・Pro PAはこれまでにない構造から、通信関連で大きな苦労があったとのことですが、ほかに電気設計周りでどういった問題を解決してきたのかについても聞かせてください。

電気設計プロジェクトリーダー 水谷:従来のVAIOも高密度実装を追求してきたのですが、VAIO A12・Pro PAでは、ディスプレイ部のスリム化などで、極めて難度の高い電気設計を求められました。通常よりも薄い部品を使った上で、基板の片面しか使えないなど、これまで以上に苦労させられましたね。

--中でも特に苦労したことと言えばどこでしょうか?

水谷:薄く軽くするということは、バッテリーも小さなものしか載せられません。そこでこの製品ではキーボード側にもバッテリーを搭載しているのですが、その2つのバッテリーと外部電源をどのように制御するかが課題でした。内蔵バッテリーが2つあり、外部電源端子も2つあり、しかもタブレットとキーボードユニットが合体したり、分離したりする……。担当者の板倉は大変だったと思います。

--その辺りを具体的に教えていただけますか?

電気設計担当 板倉:まず、状況を整理するために、どういう状態が起こりうるのかを、Excelのシートにまとめていくところから始めました。先ほど水谷がキーボード側にもバッテリーが搭載されていると言いましたが、キーボードユニットにはバッテリーが内蔵されていないものもありますし、電池が切れてしまっている可能性もあります。そうすると、それを動作させるにはタブレットから電力を供給してあげなければなりません。ところがその状態でキーボードにACアダプターが挿されたら、今度はその流れを逆にしなければならず……。もうほとんどパズルでした。

しかも、その電力を供給するラインを、上り(キーボード→ディスプレイ)と下り(ディスプレイ→キーボード)で別個に用意できれば良かったのですが、コネクター部分を少しでも小さくするために、それは許容できないと言われてしまいました。それで、さすがにこれは無理だろうと考え、できあがった非現実的なサイズのExcelシートを見せて抗議したのですが、受け入れてもらえず……。「ダメだ、やるぞ」と(笑)。

--やはりそこは妥協を許さないのですね。

板倉:キーボード側のACアダプターを挿した状態で、ディスプレイ側のUSB Type-C端子からも電源供給するダブル充電なんてケースもありましたからね。しかも、USB Type-C端子から供給される電力量も、接続しているACアダプターやモバイルバッテリーによって変わってきますから、その組みあわせ問題をクリアするのも大変でした。最終的には200通り以上のパターンになっています。

--ユーザーがシンプルに使えるようにするため、開発側が複雑な問題を処理するというのは、開発においてよくある話だと思うのですが、これはちょっと次元が違いますね(笑)。

板倉:はい。ただ、地道にあらゆる組みあわせの最適解を決定していった甲斐あって、どのような状態で使っても、最も適切に、素早く充電できるようになっているはずです。

--ちなみに、そうした制御はハードウェアとソフトウェア、どちらで行っているのですか?

板倉:両方ですね。ソフトウェアだけで制御してしまうと、たとえば、バッテリー非搭載キーボードユニット側のACアダプターが急に抜かれたとき、タブレット側からの電源供給切り替えが間に合わずに、瞬断される可能性があります。それがキー入力くらいであればまだ良いのですが、キーボードユニットに外付けHDDを付けて、何か書き込みをしていたら最悪です。ですので、そういったところはハードウェアでカバーしつつ、ソフトウェアも併用するようにしています。実は、今回の開発では、こうした複雑な条件設定をソフトウェア担当の筒井に説明するのも大変でした。

筒井:私のところに指示が来たときには、状況がだいぶ整理されていたので、そこまでの苦労はありませんでした。ただ、先ほど話に出たExcelのシートを見せられた時には絶句しましたね。全てを1画面に表示しようとすると、表示倍率が10%以下になってしまいましたから(笑)。

「いざというとき」を救う「5Vアシスト充電」機能

--バッテリー周りについてもう少し聞かせてください。今回、目玉機能の1つとして「5Vアシスト充電」機能が追加されています。これはどういった機能なのでしょうか?

筒井:この製品は、さまざまなユーザーの利用シーンを想定して、バッテリー容量を決めているのですが、どうしてもケースによっては「もう1~2時間バッテリーがもってほしい」といったことが起こりえます。そうした際、コンビニエンスストアで売っているようなスマホ用の小型バッテリーで緊急充電できるようにしたのが、この機能となります。

--近年は「USB Power Delivery(USB PD)」対応の大容量バッテリーで、PCを充電できるようなソリューションが提供され始めていますが、それとは異なるものなのですね。

筒井:VAIO A12・Pro PAもUSB PDによる充電に対応していますが、この「5Vアシスト充電」はそれとは異なります。いざと言う時に、身近にある物やすぐ買える物でバッテリー不足を解決する手段と言うことです。USB PD対応バッテリーはコンビニエンスストアではまだ取り扱っていませんしね。

--これは技術的にはどういった難しさがあるのでしょうか?

筒井:ソフトウェア的には、電源やバッテリー残量の表示方法に悩みました。同梱の充電器やUSB PD充電器とは異なり、システムの負荷が高い状態ではバッテリーを充電できず、バッテリーの消費を抑えるアシストしかできない状態も発生します。アシスト充電中は、あえてシステムをバッテリー駆動扱いとすることで、システムの電力消費を少しでも抑え、より長く駆動できるように設計しました。一方バッテリーアイコン表示は、使用中なのか充電中なのか実際の状態をリアルタイムに表示する事で、アシスト度合いを掴めるようにしています。

板倉:ハードウェア的には、これまでPCからモバイルバッテリーに供給していた電力の流れを逆にするだけなので、さほど難しいことではありません。これまでそれをやらなかったのは、従来モバイルPCの消費電力が、スマートフォン向けの小型モバイルバッテリーではまかなえなかったから。

対して、VAIO A12・Pro PAで採用している第8世代インテルCoreプロセッサー(Yプロセッサーライン)は、極めて省電力なため、コンビニエンスストアで売っているような低価格な小型モバイルバッテリーでも、動画視聴等であればほぼ全ての電力をまかなえますし、重い処理であっても内蔵バッテリーの消費を半減できます。

花村:今や、多くのビジネスマンが、スマートフォンのために、モバイルバッテリーを持ち歩くようになっていますが、VAIO A12・Pro PAなら、それを使い使用時間を延ばすことができます。バッテリー残量が残り30分になって、慌てて充電できるカフェを探す……なんてことからビジネスマンの皆さんを解放する機能です。

(2018年11月13日掲載)

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