VAIO S11/S13・VAIO Pro PF/PG開発ストーリー Vol.6new

開発者が語る
「VAIO TruePerformance™」

最新クアッドコアプロセッサーが
その持ちうるパフォーマンスを
最大に発揮できる環境を作る。

  • PC設計部

    プロジェクトリーダー課

    江口修司

  • PC設計部

    電気設計課

    平加憲作

  • PC設計部

    メカ設計課

    久富寛

VAIO TruePerformance™とはいったい何なのか?

--今年1月、VAIO S11/S13(およびPF/PGシリーズ)のCTOで、クアッドコア(4コア)の第8世代インテルCoreプロセッサーが選択可能になりました。その際、新プロセッサーの性能をさらに引き出すための独自技術として「VAIO TruePerformance™」が新搭載されましたが、これはいったいどういったものなのでしょうか?

電気プロジェクトリーダー 江口:簡単に言うと、CPUが動きやすい環境を整えてあげるための仕組みを指します。

--CPUが動きやすい環境とは?

江口:CPUは動くと熱が出ます。これをそのままにしておくと内部に熱が蓄積してしまい、動作できなくなってしまいますので、効率良く排熱してあげる必要があります。ただ、ノートPCは大きなデスクトップPCと比べて、放熱機構周りにさまざまな制約があります。そうした中で、いかに効率良く排熱を促すかが問われてきます。

--熱が蓄積するとどうなるのでしょうか?

江口:ある一定以上の温度に達すると、CPUが自動的に「スロットリング」をかけて動作が断続的になるよう制御し、発熱を抑えるのですが、それでも冷却が追いつかない場合は停止してしまいます。

--そういったことはノートPCではよくあることなのですか?

江口:VAIOではそんなことのない設計を行っていますが、理論上、高性能CPUを搭載した極薄のノートPCなどでは、そういうことが起こり得ますね。

--では、ノートPCのパフォーマンスを最大限引き出すためには、熱のコントロールが重要になるわけですね。VAIOではそのあたり、どういった工夫を行っているのでしょうか?

熱設計担当 久富:ノートPCの熱設計はトータルバランスが肝要。デスクトップPCではCPUの温度だけを見ていれば良いので、例えばCPUとヒートシンクの間に塗るグリスをより熱抵抗の低いものに交換するだけで劇的に速度がアップします。しかし、ノートPCの場合は、ボトルネックとなる場所が複数存在するため、まず、どこが問題になっているのかを見極めてあげる必要があります。そこを見抜けないと、放熱機構が無駄に大きくなり、本体がぶ厚くなったり、重くなったりしてしまいます。

そこでVAIOでは、実際に試作を始める前に100回以上ものシミュレーションを行い、問題点の洗い出しと、その解決を細かく行うようにしています。この細かく削っていく作業が実に難しいのですが、VAIOには長い間、薄型ノートPCをやってきた技術とノウハウが蓄積されているため、その点には自信があります。先ほど、江口の話にもありましたが、従来モデルにおいて、CPUのフルパフォーマンスを引き出せていたと自負しています。

ふだん使いに役立つ“速さ”を引き出す

--ここまでのお話をお伺いしていると、VAIO TruePerformance™がなくとも、VAIOはCPUのパフォーマンスを充分に発揮できていたように感じます。VAIO TruePerformance™は具体的にどういったことをやっているのでしょうか?

CPU・グラフィックス担当 平加:VAIOが採用しているCore i7などの、インテル製CPUは消費電力や温度などの条件が揃った環境下で、ピーク負荷時にパフォーマンスを高めてくれる「インテル®ターボ・ブースト・テクノロジー2.0」という機能が搭載されています。ただし、最大パフォーマンスを維持できる期間は限られており、一定時間が経過すると、あるレベルまでパフォーマンスが低下してしまいます。「VAIO TruePerformance™」は、この低下した後のパフォーマンスを、通常よりも高めに維持するための技術です。

VAIO TruePerformance™ コンセプト図

--最大パフォーマンスの区間を延ばすのではなくそれが終わった後の持続可能なパフォーマンスのレベルを高く保つというのが「VAIO TruePerformance™」のキモなんですね。

平加:最大パフォーマンスの状態は、電力消費も発熱も非常に大きくなっていますから、これをさらに延ばすというのはあまり現実的ではありません。我々は最大パフォーマンスの状態が終わった後の持続可能なパフォーマンスを高く、長く保つことにこだわりました。その方が、ふだん使いの中でパフォーマンスの良さが実感できるのではないかと考えたのです。

久富:ブーストがかかっている時間は長くても20~30秒程度。これが40秒になっても、実作業上はあまり意味がありません。しかもそのときの消費電力はおよそ3倍にも及びます。であれば、それよりも「落ちた後」の速度を高く保った方が有意義だろう、と。

--なるほど! では、そのために具体的にどんなことをやっているのかを教えていただけますか?

平加:まず、CPUのパワーリミットの値を上げています。CPUはそのリミットの範囲内で周波数を上げていくので、これによってパフォーマンスが向上するのです。

--パワーリミットを上げることにはデメリットはないのですか?

平加:まず、放熱が問題になります。また、電力を供給するための電源回路もより強力なものが求められます。

--放熱や電源を変更するということは、先ほど久富さんがおっしゃっていた「バランス」を壊す行為だと思うのですが、VAIO TruePerformance™対応の新しいVAIOは、従来と全く外観が変わっていないように見えます。これは一体どういうことなのでしょうか?

江口:2017年に発売された、デュアルコアCPU搭載のVAIO S11/S13(およびPF/PGシリーズ)の時点で、VAIO TruePerformance™を意識した基板設計をしていました。もちろん、VAIO TruePerformance™対応モデルでは、基板上の電源回路を強化するなどの変更を行っていますが、外観は全く変わらないようにしています。

久富:パワーリミットを上げることによって発生する放熱の問題を、ヒートパイプをより太くし、放熱フィンの素材をより放熱性能に優れる素材に変更することで、解消しました。あと、細かなところでは空冷ファンの回転数制御アルゴリズムも変更しました。ただ、これら1つひとつは、特に目新しいことではなく、私としては自慢するようなことではないと思っています。

--そうなんですか?

久富:わりと、他社でも当たり前にやっていることだと思うんです。熱設計としては、やはり、先ほどお話ししたバランスの見極め、作り込みの部分がポイントかなと考えいます。

江口:実はここだけの話、VAIO TruePerformance™のプロジェクトがスタートしたのは、熱設計のチームに、クアッドコア化する第8世代インテルCoreプロセッサー搭載に向けたチューニングを進めてもらった結果、もう少しいけるんじゃないかという報告をもらったことが大きかったんですよ。

--しかし「できる」のと「やる」のはだいぶ違いますよね。これをやろうと思われたのは何でなんですか?

江口:それはやはりVAIOがエンジニアの会社だからだと思います。やれると分かったら、やりたくなってしまうんですよ(笑)。

VAIO TruePerformance™は今回だけの取り組みではない

--ちなみに、VAIOがこうした取り組み(CPUのパワーリミットアップ)を行うのは、今回が初めて……ではないんですよね?

江口:そうですね。かなり昔から、何度かチャレンジしています。直近の例ですと、2015年に発売したVAIO Zがそうですね。この機種は、フラッグシップモバイルPCの性能を全ての点で追い求めていたので、1つのこだわりポイントとして取り組みました。実際、ユーザーからの反応も非常に良かったと記憶しています。VAIO S11/S13(およびPF/PGシリーズ)の設計チームには、VAIO Zの開発メンバーの多くが参加しているので、その影響もあったかもしれません。

VAIO Z

平加:ただ、実際にやってみたら、思うように数字が出なくて、そこはかなりのトライ&エラーを繰り返しました。

久富:いけるはずだったんですが、実際やってみたら想定以上に大変だった部分もありましたね……(笑)。

江口:VAIO TruePerformance™は、チームが一丸となって、これまでにないほど長期間にわたってチューニングを行う取り組みとなりました。

--しかし、ご苦労の甲斐あって、VAIO TruePerformance™の効果は劇的なものになりましたね。ベンチマークテストで、VAIO TruePerformance™を適用した第8世代Core i5搭載モデルが、VAIO TruePerformance™を適用していない第8世代Core i7搭載モデルを上回ったというのは衝撃的でした。

従来プロセッサーとのパフォーマンス比較

CPU: MAXON Cinebench Version15.0.3.8でのベンチマークスコア

VAIO株式会社調べ。
ご使用の環境により結果が異なる場合があります。

江口:狙ってはいなかったので、私も驚きました。ちょっといやらしい話になりますが、Core i5とCore i7には、我々のCTOで2万円の価格差があります。他社製品との比較時には、このあたりも含めて検討していただけるとうれしいですね(笑)。

--VAIO TruePerformance™は今後の製品にも組み込まれていくのでしょうか?

江口:はい。今後のVAIOの「顔」の一つになってくれれば良いなと思っています。ちなみに今回は「パフォーマンス(速度)」にフォーカスしましたが、「VAIO TruePerformance™」自体はシステム全体に関する取り組みの総称。今後は、違う形で、新たなVAIO TruePerformance™をお見せできるかも知れません。ご期待ください。

(2018年1月18日掲載)

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