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VAIO SX12・SX14 / VAIO Pro PJ・Pro PK(2021年10月発表モデル)開発ストーリー Vol.3:開発者が語る「ユーザビリティ」新時代に適応したこれからの使いやすさ

VAIO SX12・SX14 / VAIO Pro PJ・Pro PK(2021年10月発表モデル)開発ストーリー Vol.3:開発者が語る「ユーザビリティ」

時代と共に移り変わるPCの使われ方。VAIOはユーザーと真摯に向き合うことで、それらにいち早くキャッチアップし、求められる使い勝手、そして安心感を実現してきた。

テクノロジーセンター
PCシステム設計部
システム設計課

土居原 宏

テクノロジーセンター
PCシステム設計部 システムソフト課
ソフトウェア プロジェクトリーダー

古谷 和之

テクノロジーセンター
PCシステム設計部 システム設計課
エレクトリカル プロジェクトリーダー

平加 憲作

VAIOのリモートコミュニケーションはリアル以上の快適さ

−−新型コロナ禍以降、リモート会議やリモート授業など、ビデオチャットを利用する機会が急増しました。新しいVAIO SX12・SX14 / VAIO Pro PJ・Pro PK(以下、VAIO SX12・VAIO SX14)では、こうした新しいPCの利用法にどのようにキャッチアップしているのでしょうか?

電気設計 土居原:まず音声回りについてお話しすると、2021年2月に発表したVAIO Zの時点で、社会情勢の変化を受けてマイク性能を大きく向上させています。そして、新しいVAIO SX12・VAIO SX14でもマイク設計を改善し、VAIO Z同等のマイク性能を確保しました。

設計上のポイントとしてはVAIO Z同様、2つあるマイクモジュールとベゼルの樹脂パーツの間にゴム状の遮へい材を挟みこむことで密閉度を高め、右のマイク孔から入った音が左のマイクに漏れないように、左のマイク孔から入った音が右のマイクに漏れないようにしています。もちろんVAIO Zとは本体構造が異なっているため、同じ効果が得られるよう遮へい材の材料や大きさを最適化しています。

−−音が隣のマイクに漏れ出さないことでどういった効果があるのでしょうか?

土居原:新しいVAIO SX12・VAIO SX14では、左右のマイクに音が入って来る時間差を使って音の位置を判別し、周辺ノイズを低減する処理を行っています。そのため、左右のマイクはしっかり遮蔽されている必要があるんです。なお、このマイク効果にはいくつかのモードがあり「一方向」モードではビームフォーミング(指向性録音)という技術を用いてPCの前方にいる人の声だけを拾うようにすることが可能です。このモードはプリインストールされている「Realtek Audio Console」というアプリから変更可能です。

−−スピーカーについてはいかがですか?

土居原:これについては現物をお見せした方が話が早いですね。こちらがVAIO SX14に搭載されているスピーカーユニットです。上が新しいモデル、下が従来のモデルとなります。新しいものの方が一回り大きくなっており、大型化したスピーカーボックスの分、音圧と音質が向上しています。

上:新型VAIO SX14のスピーカーユニット
下:VAIO SX14(2020年10月発表)のスピーカーユニット

土居原:そしてこちらがVAIO SX12のもの。同じく上が新しいモデル、下が従来のモデルです。こちらはユニット自体の大きさはほぼ同じですが、スピーカーボックスの有効容積が若干増えています。また許容入力が従来モデルの倍になっており、VAIO SX14と同等になりました。

上:新型VAIO SX12のスピーカーユニット
下:VAIO SX12(2020年10月発表)のスピーカーユニット

−−どちらもしっかり進化しているということですね。

土居原:はい、その上で、従来モデルでは底面手前側にあったスピーカーの開口部をVAIO Z同様、前面に変更しました。新しいスピーカーユニットとの組み合わせによって、ビデオチャットの音声はもちろん、音楽や映画のサウンドも聞き取りやすくなっています。本当はもっと大きく開けたかったんですが、メカ設計との攻防でこれが目一杯でした(笑)。

−−新しいVAIO SX12・VAIO SX14はドルビーラボラトリーズの立体音響技術、Dolby Atmosに対応していますが、これにはどういった効果があるのでしょうか?

土居原:Dolby Atmosで収録された立体音響を含んだコンテンツであれば、2つのスピーカーで立体的なサウンドを楽しむことができます。また、Dolby Atmosではない通常の2chステレオ音声でも、専用の設定メニューアプリDolby Accessで「ダイナミック」モードを選択することで音の広がりが大きく増します。なお、ビデオチャットの時は「音声」モードにすることで、周囲の雑音、たとえばオフィスの空調の音などが抑えられて、より人の声が聞き取りやすくなります。

−−人の声が聞き取りやすくなるのはうれしいですね。

土居原:その点で言うと、新しいVAIO SX12・VAIO SX14にはドルビーラボラトリーズの技術とは別に、「AIノイズキャンセリング」という新機能を搭載しています。これはAIを使ってマイクを通じて相手に送られる音声と、スピーカーを通じてこちらに送られてくる音声双方のノイズを消すというものです。これは実際に効果を体験していただくのが早いですね。

−−これはすごい! オンにした瞬間に本当に周囲の音がサッと消えてしまいました。自分の声だけでなく、相手側の声も聞き取りやすくなるというのは本当に革命的だと思います!!

ソフトウェア 古谷:AIノイズキャンセリングには2つのモードがあり、「標準」モードと「プライベート」モードを選択可能です。プライベートモードはAIノイズキャンセリング機能に、先ほどお話ししたビームフォーミングを組み合わせたもので、PC前方の声以外を大きく抑えられるようになります。オフィスで隣の席の人が別のリモート会議に参加していて、その声を消したい場合などに有効なモードです。

AIノイズキャンセリング機能*1,2の設定画面
*1 内蔵オーディオ機器(ステレオマイク、ステレオスピーカー)およびステレオミニ端子での音声入出力に対応します。USB、HDMI、Bluetoothなどで接続する外付けオーディオ機器では使用できない場合があります。
*2 外付けマイク使用時はプライベートモードは動作しません。

土居原:プライベートモード時に声が伝わるエリアはフロントカメラの画角に合わせています。つまり、カメラに写る範囲であれば、きちんと自分の声が相手につたわるということです。

−−なるほど。直観的に使えるように工夫しているわけですね。そしてビデオチャットのための機能と言うところでは、カメラ回りも大きく変わっていますよね。一目で分かるのがカメラプライバシーシャッターの新設です。

エレクトリカル プロジェクトリーダー 平加:はい、カメラプライバシーシャッターは2021年2月に発表したVAIO Zで初搭載しましたが、VAIO SX12・VAIO SX14としてははじめての採用になります。ビデオチャット時などで確実にカメラをオフにしたいときに役立つ機能です。

−−カメラユニットそのものについてはどういった進化がありましたか?

平加:カメラユニットはVAIO Zと同等のものを搭載しており、画素数自体は従来のVAIO SX12・VAIO SX14と変わりありません。ただ、より写りが良くなるよう細かなチューニングを行っています。具体的にはビデオチャット時の顔色などがより健康的に見えるようにしました。

<製造コラム>

VAIO“製造”ミニストーリー①
マイクとカメラが正しく動作しているか
専用設備で1台1台丁寧に診断

林 哲也

製造・EMS本部
技術&製造部 技術課

林 哲也

−−ここまででお伺いした話は、内蔵マイクとカメラが正しく実装されていなければなりません。こうしたチェックをどのように行っているのかを聞かせてください。

林:VAIO SX12・VAIO SX14では、内蔵マイクとカメラの動作確認を1台の検査機で実施しています。検査機にはスピーカーとマイク穴を遮蔽する機構を設けています。まずスピーカーから音を出し、それを左右それぞれのマイクで録音しその録音レベルによってマイクの性能を検査します。遮蔽性能については、マイク穴を塞ぐ前と後の録音レベルの差によって密閉性・遮蔽性能に問題がないか確認しています。

林:マイクのテストが終わるとそのままカメラのテストに移行します。搭載されているカメラのスペックを自動で判断し、画角に合う位置にカラーチャートパネルが移動します。こちらも実際にカメラでカラーチャートパネルを撮影して色味などが正しく表示できているかを確認します。

林:これらの検査はVAIO Zでも行っていますが、新しいVAIO SX12・VAIO SX14は画面サイズやカメラスペックが複数存在します。それらを1つの検査機で実施できるように、本体を装置に固定するガイドを可動式にするなど、新しい工夫を盛り込んでいます。

USB端子、HDMI端子……、VAIO Zにないものがある

−−新しいVAIO SX12・VAIO SX14は多くの点でVAIO Zの技術や機能を受け継いでいますが、インターフェイスの充実度については、USB Type-C™端子2系統のみと大胆に割り切ったVAIO Zを上回っていますね。

平加:はい。新しいVAIO SX12・VAIO SX14では2系統のUSB Type-C™端子に加え、HDMI端子、USB端子(Standard-A端子)、そして有線LAN端子を搭載しています。

−−VAIO Zにない端子が追加された反面、従来のVAIO SX12・VAIO SX14にあったVGA端子、SDメモリーカードスロットがなくなっています。これにはどういった理由があるのでしょうか?

平加:PCのインターフェイスは、採用しているアーキテクチャーによってできる範囲が決まってくるため、あれもこれもというわけにはいきません。その中で、新しいVAIO SX12・VAIO SX14では従来モデルでは1基しかなかったUSB Type-C™端子を2基にすることが決まっていました。なお、2基にこだわったのは電源供給時にACアダプターの接続に使うためです。

−−そうすると増やした分、何かを削らないといけなくなりますね。

平加:そうなんです。そこで今、本当に必要なインターフェイスが何なのか、実際にお客さまとやり取りをする営業チームのメンバーに相談したところ、最近はリモート会議の普及もあってVGA端子のニーズが減っていることを教えてもらいました。

−−なるほど、たしかにそうかもしれません。

平加:対して、同じ映像出力であるHDMI端子についてはデュアルディスプレイに繋ぐため、むしろこれまで以上に重要です。昨今のニーズを踏まえVGA端子を廃止することで、本体の薄型化、軽量化も実現できています。

−−SDメモリーカードスロットがなくなったのはなぜですか?

平加:こちらも今の使い方を検討した時、もう多くの人が写真はスマートフォンで撮るだろうと考えたためです。

−−それはすごく分かります。逆に今、あえてカメラで写真を撮る人はPC内蔵のSDメモリーカードスロットは使わず、より高速なデータ取り込みが可能な外付けのカードリーダーを使いますしね。また、プロ向けの最新鋭モデルではSDメモリーカードではない、次世代メモリーカード規格を採用するものもあらわれています。

平加:また、有線LAN端子については、リモート会議などでより安定した通信が求められることを考え、今回は残すことにしました。VAIOの有線LANカバーは不使用時に畳んでおけるので薄型化の邪魔にもなりませんから。

−−ともあれこれが新しいVAIOの考える、今、必要とされるインターフェイスということなんですね。

平加:はい。その中で個人的に重要だと感じているのはUSB Type-C™端子が2系統搭載されているというところです。USB Type-C™端子があれば別売のドッキングステーションなどを介してさまざまな周辺機器を接続できますし、将来的にはこれまで以上にUSB Type-C™端子に直接繋げる周辺機器が増えていくでしょうから、長くお使いいただくためにもこの点は譲れませんでした。

VAIO Zから受け継いだ数多くの使いやすさ

−−新しいVAIO SX12・VAIO SX14は、VAIO Zに引き続き、Windowsの機能の1つである「モダンスタンバイ」に対応しましたが、これはどういったものなのでしょうか?

古谷:モダンスタンバイはスリープ状態でもさまざまなデバイスや機能を動作させられるようにする仕組みです。たとえばネットワークに繋いだ状態を維持してメールを受信したり、人感センサーを常に動作させておき、ユーザーがPCの前に来たのを検知して復帰したりといったことができます。後ほどお話しするVAIO User Sensing™の一部機能もこのモダンスタンバイの仕組みを利用しています。

また、もう1つのメリットとしてスリープからの復帰が速いことが上げられます。従来のスリープですと画面が表示されるまでに約2秒程度待たされ、そこからさらに各種デバイスを復帰させる時間がかかるのですが、モダンスタンバイでは約0.5秒程度で画面がつき、指紋認証などもすぐに行えるようになっています。

−−モダンスタンバイを実現するにはどんな苦労がありましたか?

古谷:スリープ中に待機状態になっていなければならないので、省電力モードをきちんとサポートしたデバイスを利用しないと待機時消費電力が大きくなってしまいます。そのため、モダンスタンバイに正しく対応したデバイスを選定する必要があり、それが難しいところでした。ただ、そのあたりの知見は先行してモダンスタンバイを実現したVAIO Zで蓄積できていたため、VAIO SX12・VAIO SX14ではほぼ同じデバイスを採用することでこの部分をショートカットできています。

−−VAIO Zのシャワー効果がここでも奏功しているんですね。とは言え、やはり待機時消費電力は増えているわけですよね。バッテリー駆動時間に悪影響はないのでしょうか?

古谷:たしかに従来と比べると若干は上がっているのですが、新モデルが高容量バッテリーを搭載していることもあって、実用上問題になるほどではないと考えています。

−−そして、VAIO Zからのシャワー効果というと、新しいキーボードもVAIO Zと同じユニットのように見えます。

平加:はい。新しいVAIO SX12・VAIO SX14ではVAIO Zで新開発したキーボードを搭載しています。ストロークが約1.2mmから約1.5mmに深くなり、キートップ中央に設けたディッシュ形状のくぼみをより深くすることで、指に吸い付くような心地よいタイピング感を実現しました。また、先代モデルでは少し追求しきれなかったところのある静音性についても大きく向上させることができました。また、先代モデルまでのキーボードと比べて全体的な質量が抑えられているため、本体軽量化にも貢献しています。

−−ユニットとしては全くVAIO Zと同じものなのでしょうか?

平加:厳密に言うとVAIO SX12のキーボードは、従来VAIO SX12同様、ShiftやTabなど、左端の装飾キー幅がわずかに狭くなっています。また、本体カラーによってはキーキャップが白色になっています。ただ、実際の利用感としては全く同等です。

なお、白いキーボードは従来モデルにも存在しましたが、今回はその表面に耐指紋コーティングを施しており、これまで以上に汚れが目立ちにくくなっています。

−−平加さんが実際に使ってみた感想を聞かせていただけますか?

平加:VAIO SX12はこのサイズの製品としてはとても珍しいフルサイズキーボードを搭載しており、それによって同クラスのコンパクトモデルと比べてタイピングしやすいことを謳ってきました。新しいVAIO SX12はそれをさらに進化させており、深いキーストロークやディッシュ形状によって劇的にタイプミスが減ったことを体感しています。モバイルでもたくさんの文字を入力する人にはぜひお試しいただきたいですね。

−−タッチパッドについてはいかがでしょう。写真では分かりにくいのですが、新しいVAIO SX12・VAIO SX14ではタッチパッドの質感がこれまでとは大きく変わりました。

平加:はい。こちらもVAIO Zのものを受け継ぐ形でより滑らかな質感のものに改め、ポインター操作を快速に、フリックやピンチ操作などをしやすくしています。また、VAIO SX14についてはタッチパッドのサイズを大型化し、従来モデル比で190%の大きさにしました。これによって画面の端から端までポインターを動かす際にタッチパッド上を何往復もさせる必要がなくなります。

−−これも実際に触ってみると新しいキーボードと同じくらい違いを感じます。

平加:今はまだモバイル時にマウスも持ち歩く人がかなり多いのですが、新しいVAIO SX12・VAIO SX14ではタッチパッドで充分に快適。皆さんが持ち歩く荷物を1つ減らせるようにしたいという想いで作り込んでいます。

VAIOのセキュリティーは、面倒じゃない

−−新しいVAIO SX12・VAIO SX14では、指紋センサーが電源ボタンと一体化し、キーボード右上に移動しています。これもまたVAIO Zから受け継いだものの一つだと思うのですが、これによってどんなメリットが生まれるのでしょうか?

平加:電源ボタンを押すと同時に指紋認証も完了していることが大きなメリットです。今までは電源を押した後、ログイン画面が出るのを待ってから指紋センサーにタッチする必要があったのですが、今回の新しい電源ボタン一体型指紋センサーではワンタッチでWindowsを操作できる状態まで進むことができます。

−−電源ボタンを押してからログイン画面が出るまで待たずにすむのはうれしいですね。

平加:ただし、これを実現するのはそんなに簡単なことではありません。電源を押した瞬間はまだWindowsが起動していないので、従来モデルで採用していたドライバー(ソフトウェア)ベースでの指紋認証ができないのです。そこでこの電源ボタン一体型指紋センサーでは、OSから独立して、単体で指紋認証できるチップを内蔵することでこの問題をクリアしています。もちろん、それによってパーツのコストが大きくなってしまうのですが、ユーザーの利便性を重視しました。

この機能は新設された人感センサーなどと連動して面倒なセキュリティーを快適にしてくれる「VAIO User Sensing™」の「ワンアクションログオン」機能として実現されています。

−−VAIO User Sensing™についてもう少し詳しく教えてください。

平加:まず、PCの前に人が座ると人感センサーがそれを検知して自動的に顔認証処理をスタートしてスリープ解除からログイン認証までを行ってくれる「着席オートログオン」という機能があります。PCに触れることなく作業を再開できるのが大きなメリットと言えるでしょう。

このほか、PCから人が離れると設定した時間で自動的にロック状態に切り替わる「離席オートロック」、PCの前に人がいる間はスリープやスクリーンセーバーへの移行をストップする「在席ノーロック」という機能があります。

もちろん対面コミュニケーションもしっかりサポート

−−ここまででお話いただいたこと以外に、これからの時代の新しい使い方を意識した改善点がありましたら教えてください。

平加:これは弊社の営業チームからの声なのですが、お客さまと対面で商談をする際に、既存のモデルでは画面を双方から見える角度に向けてプレゼンする必要があり、それがとてもやりにくいと。そこで画面を180度開くようにし、お客さまからは画面が見やすく、ユーザーの側からは操作しやすくなる機能を追加しました。

平加:その上で、新しいVAIO SX14ではこれまで非対応だったタッチ操作にも対応。お客さまに画面をタッチして商品を選んでいただいたり、ペンを使ってサインしていただいたりということができるようになりました。これは主に生保業界などで強いニーズなのですが、昨今の脱・ハンコの動きもあって、今後、幅広い業界で求められるようになるだろうと想定しています。

−−この180度開く機構というのは簡単に実現できるものなのですか?

平加:こちらは2段トルクヒンジという機構で実現しています。120度くらいまでは片手でサッと開けるんですが、それ以上はしっかりと力を入れる必要があるというものです。こちらもやはりVAIO Zで先行採用されているものを採り入れているのですが、全く同じではありません。VAIO Zのものをベースにブラッシュアップを行っています。

−−具体的にはどういったブラッシュアップを施しているのでしょうか?

平加:新しいVAIO SX14にはこれまでなかったタッチパネル搭載モデルが追加されているのですが、これが従来のディスプレイと比べてやや重いんですね。そのため、首上が重くなっても対応できるように調整を入れています。この新しく調整した2段トルクヒンジはタッチパネルを搭載していないVAIO SX14やVAIO SX12にも共通して搭載しています。

−−そのほか、この180度開くディスプレイ回りで工夫していることがありましたら教えてください。

古谷:VAIO Zで好評なFn+2で画面表示が180度回転するショートカットを新しいVAIO SX12・VAIO SX14にも搭載しています。画面の表示をお客さまの見やすい角度にワンタッチで切り換えられるのが便利です。しかも、この状態でもタッチパッドの操作はユーザー側から見たままになっているので、混乱なく操作できます。

また、細かいところではFn+2のショートカットを用いて画面表示を180度回転している状態ではVAIO User Sensing™の人感センサーを無効にするオプションを追加しました。こちらの機能は「VAIOの設定」画面で変更していただけます。後日、VAIO Zにもアップデートで提供予定です。

<製造コラム>

VAIO“製造”ミニストーリー②
ライン上にクリーンエリアを作り込み
ガラスパネルの貼り込みを可能に

林 哲也

製造・EMS本部
技術&製造部 技術課

林 哲也

林:VAIO SX14のタッチパネル搭載機ではディスプレイを組み込んだ後、表面を保護するガラスパネルを貼り付ける工程が追加で発生するのですが、ここに過去モデルでも提供していた保護フィルム貼り付けサービスのノウハウを活用しています。

−−具体的にどんなことをやっているのでしょうか?

林:ガラス貼り付けのような作業はホコリが入らないようにクリーンルーム内で行うのが一般的ですが、VAIO SX14では製造ライン上にコンパクトなクリーンエリアを実現し、セット生産の流れに合わせて貼り付けを行うことで、お客様をお待たせすることなく、スピーディーに組み立てていくことができます。

−−製造ライン上にクリーンなエリアなんて作ることができるのですか?

林:はい、そこがノウハウを活かした部分ですね。ガラスパネル貼り付け時の大敵であるホコリが作業する場所に入り込まないように細かな工夫を積み重ねて、実は現在も少しずつ改善しながら新しいラインを作りあげています。ちなみに現在は「Class 1000」という清浄度クラスを実現できているのですが、これは1立方フィートあたり、粒径0.5μm微粒子が1000個未満という極めて清浄度の高い状態を実現できているということなんですよ。

Windows 11と新しいVAIOの相性は抜群

−−新しいVAIO SX12・VAIO SX14では、いよいよOSが「Windows 11」になります。しかしこの新しいOSにどういったメリットがあるのかがあまり伝わっていないようにも思います。Windows 11ではどのように便利になるのでしょうか?

古谷:まず分かりやすいところでは見た目が大きく変わります。長らく左下にあったスタートメニューが画面中央下部に移動し、その機能、使い勝手も大きく変わっています。また、それぞれのウィンドウの右上にある「最大化」ボタンにポインターを合わせるとウィンドウを画面の右半分、左下といった指定のエリアにぴったりはまるようにサイズ変更してくれるスナップという機能が使えるようになっています。

Windows 11の新しいスタートメニュー
Windows 11のスナップ機能

古谷:Windows 11の進化点は無数にあるため、ここですべてを説明することはできないのですが、特に面白いものとしてご紹介したいのがマイクから入力された音声を自動的にテキスト化してくれる音声認識機能の強化です。

この機能は実はWindows 7のころからあったのですが、Windows 7の時は精度が低すぎて実用的でなく、Windows 10では精度が大幅に向上したものの日本語に対応しておらず、今回やっと日本語を高精度にテキスト化できるようになりました。

Windows 11の音声認識機能
※画面は英語音声認識時のものです。

−−たしかにすごい正確に日本語に変換していきますね。

古谷:この機能を使えば、議事録の作成などがとても簡単になりますね。簡易的な音声メモとしても使えそうです。また、この機能は先ほど土居原が説明したAIノイズキャンセリング機能と非常に相性が良く、周囲が騒がしい場所でもVAIOなら高精度な音声認識が期待できます。そのほか、滑らかになったタッチパッドも、よりスマートフォンライクな使い勝手を意識したWindows 11を快適に使えるようにすると考えています。

−−新しいVAIO SX12・VAIO SX14はWindows 11に好適ということですね。

古谷:はい、そう言って差し支えないと思います。

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