VAIO Z / VAIO Pro Z開発ストーリー Vol.3
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VAIO Z / VAIO Pro Z開発ストーリー Vol.3:開発者が語る「パフォーマンス」 設計の力で“真のパフォーマンス”を引き出す

VAIO Z / VAIO Pro Z開発ストーリー Vol.3:開発者が語る「パフォーマンス」

VAIO Zなればこその究極のパフォーマンス。
ただ高速なプロセッサーを載せるだけでは実現できない、その実力を真に引き出すために必要なこととは?

PC事業本部エンジニアリング統括部
デバイスエンジニアリンググループシステム設計課
チーフサーマルエンジニア

久富 寛

PC事業本部エンジニアリング統括部
デバイスエンジニアリンググループシステム設計課
エレクトリカル プロジェクトリーダー

板倉 功周

VAIO TruePerformance®でワンランク上の“デスクトップ級”CPU搭載を実現

−−VAIO Zには、一般的に大型のゲーミングPCやクリエイティブPCに搭載される、第11世代インテル® Core™ プロセッサー Hプロセッサーラインが搭載されていますが、これはどういったものなのでしょうか?

熱設計 久富:CPUには、そのCPUを安定動作させるために必要となる電源および冷却に関する指標である「TDP(Thermal Design Power)」という数字が設定されているのですが、今回の新しいVAIO Zに搭載されている、第11世代インテル® Core™ プロセッサー Hプロセッサーラインはこれが35Wと非常に高い水準になっています。

−−TDP 35Wというのはそんなに大きな数字なのですか?

久富:そうですね。一般的なモバイルノートPCに搭載されるUプロセッサーラインのCPUはTDPが15Wなのでかなり大きいです。実は、VAIO Zの先代モデルもTDP 28WのCPUを35Wまで上げていたのですが、新しいVAIO Zが搭載するCPUはベースが35Wというだけで、余裕があれば最大64Wまで出せるだけパワーを出してしまうというもの。そこでVAIO Zでは、TDP 64Wにまで耐えられるヒートパイプを載せるなど、熱対策を大幅に強化しています。

エレクトリカル プロジェクトリーダー 板倉:ちなみにベンチマークテストで先代VAIO Zとパフォーマンスを比較すると、CPU性能で約2.9倍、GPU性能で約1.7倍もの差がついています。

そして、これを実現できたのは、VAIOが2018年1月以降に発売した多くのモバイルノートPCに搭載している「VAIO TruePerformance®」のおかげ。実はもともとVAIO Zはもっと低消費電力な、VAIO SX14などで採用されているUプロセッサーラインの流れを受け継ぐ最新世代CPUを搭載し、これまでに培ってきたVAIO TruePerformance®のロジックで、TDP 35Wまでパフォーマンスアップする予定でした。先代VAIO ZでTDP 35W駆動をやっていたこともあり、そこまでは充分にやれるだろう、と。

ところがそこに向けて開発を進めている最中に、インテルからより強力なTDP 35W駆動の第11世代インテル® Core™ プロセッサー Hプロセッサーラインが出ることがわかりまして、これこそまさにVAIO Zのためにものだろうと急遽こちらを搭載することになりました。

ただ、先ほどもお話したように、新しいCPUはTDP 35W以上のパワーを引き出せるものですので、先代VAIO Zと同じ熱対策では足りません。それを無理なく搭載し、その最大パフォーマンス、持続可能なパフォーマンスをなるべく高く、長く続くようにするという考え方は、ロジックこそ違えどまさにVAIO TruePerformance®ですし、その技術やノウハウが活かされています。

担当パートの垣根を越えた議論でギリギリまでパフォーマンスを引き出す

−−その「技術やノウハウ」について、具体的にどんなことをやっているのかを聞かせてください。

板倉:まず、大きな所では、CPU表面に受熱板を固定する方法を変えました。従来はメイン基板に直接ネジ止めしていたのですが、今回はCPUの裏側にバックプレートという板を配置して受熱板と挟みこむようにネジでガッチリ固定。より強い力で押しつけるようにしています。

久富:受熱板を押しつける力を強くすることで、熱抵抗が下がってより効率的に冷やせるようになるんですよ。これまでのやり方ではせいぜい2.7kgfくらいなのですが、バックプレートで挟みこむやり方だと4.7kgfくらいまで力をかけられるようになるので、CPUの発熱をヒートパイプに伝えやすくなります。また、今回はヒートパイプもかなりふんだんに利用。CPUのほか、電源や5Gモジュールなどさまざまな部位から発生する熱を放熱フィンまで移動させて、デュアルファンで強力に排熱しています。

−−そう言えば、VAIO Zは空冷ファンが2基搭載されているんですね。

久富:はい。ここで担当からぜひお伝えしておきたいのが、VAIO Zのデュアルファンが両側排気であるということ。新しいVAIO Zでは、ファンの個数をどうするかという議論に加え、どこから排熱するかという議論もありました。他社製品のようにキーボード奥や、底面から排熱しようという案もあったのですが、やはりVAIOではそれはできないな、と。

−−なぜですか?

久富:キーボードの奥や底面からの排熱ですと、せっかく吐き出した熱をまた吸い込んでしまって無駄が発生してしまうんです。最初から分かっていた事ではあるのですが、パフォーマンス重視であれば両側排気がベスト。両側面に排気口を配置することで、端子類の配置スペースが削られるデメリットもありますが、パフォーマンスを優先するのであれば、これしかありません。CPUなどの構成違いも含め、300回以上シミュレーションした結論です。

板倉:ちなみに、そうしたシミュレーションの中には底面に吸気口を追加するという案もありましたね。

久富:ファン直下の底面に吸気口を設けると、放熱フィンに直接、冷えた風が当たるため、CPUの冷却だけならこちらが有利です。ただ、キーボード奥部の吸気口からほとんど空気が入ってこなくなるため、CPU以外は熱くなってしまうという問題があります。

久富:対して、吸気口をキーボード奥部のものだけにすると、そこから入り込んだ空気が、システム全体を冷やしてくれるんです。このほか、片方のファンの直下にだけ吸気口を空けるなどの折衷案も試しましたが、トータルでの冷却性能を取って、最終的には底面に吸気口を設けないことにしています。

板倉:底面に吸気口を設けることで、ファンの音が外に漏れるデメリットがあることもそうした理由の1つですね。なお、空冷ファン、ヒートパイプは当然、大きければ大きいほど効率的に排熱できるのですが、本体内のスペースには限りがあるため、そのせめぎ合いも大変でした。

久富:メカ担当とはかなりやり合いましたね(笑)。

板倉:ただ、ファンを大きくすると、メイン基板やバッテリーのサイズを削らなければなりませんし、ぶ厚くすると本体を薄くできなくなってしまいます。ここは本当に熱設計とメカ、電源、さまざまなチームが意見をぶつけ合い、協力し合ったからこそベストな落としどころが見つかったのだと思っています。

−−そのあたり、もう少し具体的な例を聞かせていただけますか?

板倉:いくらでもありますよ(笑)。空冷ファンの奥のわずかなスペースを通してUSB Type-C™端子を配置できるようメイン基板の左端をかなり細長い変則的な形状にしたり、通信に使う5Gモジュールを冷やすヒートパイプを追加するために、これまでコネクタを使って接続していたWi-Fiカードをオンボードにして基板を小型・軽量化するなど、本当にいろいろやっています。

久富:すごく細かいところでは、側面の排気口のスリットにも工夫を施しています。ここは樹脂のパーツでできていて、ボトムのカーボンに底面側で接着されているのですが、その接着部の厚みの分だけ内部に段差ができてしまい、そこに埃が溜まる恐れがありました。従来モデルでは放熱フィンの端に角度をつけることで埃が滑って排出されるようにしていたのですが、ここに構造物が挟まってしまったことで、埃が引っかかってしまいやすくなったのです。

そこで、設計のメンバーで話し合い、樹脂パーツの形状を工夫(下写真)して、きちんと空気が流れるようにしています。これなら理論上は10年使ってもここに埃が溜まるということはないはずです。

立体成型フルカーボンボディだからこそ
実現できた圧倒的パフォーマンス

−−ここまでのお話で、VAIO ZがTDP 35Wの高性能CPUのパフォーマンスを、さまざまな手段でギリギリまで引き出そうとしていることが分かりました。実際のところ、こうした試みはどれくらい上手くいきましたか?

久富:常時TDP 40Wくらいのパフォーマンスは出せるようになりました。このCPUでは大きな負荷がかかるとそこからさらにパワーをしぼり出そうとするのですが、デフォルトだとそれがせいぜい10~20秒程度。その点、VAIO Zはハイパワーを想定した余裕のある熱設計と、それに伴う制御システムの刷新などによって、TDP 45~50Wくらいのパフォーマンスを、室温などの環境にもよりますが15分くらいは出し続けられるようにしています。

−−それはすごい。ちょっとした動画の書き出し程度ならその時間内に終わってしまいますね。

久富:また、内部の温度が限界に達しても、そこでストンとパワーを落とすのではなく、ジワジワと落としながら、ギリギリまでハイパフォーマンスを維持しようとするのも、従来とは異なる挙動ですね。

−−これなら本当にデスクトップPCの代わりに使えそうですね。

久富:そうですね。テストを繰り返して行く中で、私が普段、ハイパフォーマンスなデスクトップPCでやっている重いシミュレーションなどにも充分に使えるのではないかと感じました。

ちなみにVAIOには、「VAIOの設定」アプリの「CPUとファン」項目から、動作時の騒音レベルを3段階にコントロールする機能が用意されています。静かに使いたい人向けの「標準」「静かさ優先」モードでは基本的にはパフォーマンスを抑えることでファンがなるべく回らないようにしているのですが、抑えているのはパフォーマンスのピークの“高さ”ではなく、ピークで動いている“時間”。ですので、「標準」モードでも、数分程度なら最高のパフォーマンスを出すことができます。現実問題、ふだん使いであれば、最高のパフォーマンスを長時間求められることはないので、VAIO Zとしての高性能は「標準」モードでも充分に味わっていただけます。

−−「標準」「静かさ優先」モードは、ピーク性能にリミッターをかけるものではないのですね。

久富:はい。そして、VAIO Zは熱設計に余裕があることもあって、同じ用途なら他のマシンよりもかなり静かに動きます。VAIO Zをお買い求めの方には、ハイパフォーマンス志向の方が多いと思うのですが、その魅力を損なわずに使えますので、ぜひ「標準」や「静かさ優先」モードも試していただきたいですね。ちなみにVAIO Zは「静かさ優先」モードでも、VAIO SX14など、従来モデルの「パフォーマンス優先」モードよりも快速に動作するんですよ。

−−最後に今回のVAIO Z、最大の売りである世界初*の立体成型フルカーボンボディですが、パフォーマンスの面でどういった影響を及ぼしたのかも聞かせてください。

* ノートPC筐体を構成する全ての面で、立体成型を行ったカーボン連続繊維素材を使用することにおいて。2021年1月6日時点 ステラアソシエ調べ。

板倉:VAIO Zが掲げている、パフォーマンスとモビリティを高いレベルで両立させるというコンセプトにおいて、立体成型フルカーボンボディの効果は絶大でした。ここまででお話ししたデュアルファンやたくさんのヒートパイプを従来素材のボディに搭載したら本体重量が1.2kg以上にもなってしまい、モビリティが大きく損なわれてしまっていたはず。そういう意味では、立体成型フルカーボンボディがあったからこそ、このパフォーマンスを実現できたのだと言っても過言ではないかもしれませんね。

2021年5月27日 VAIO Pro Z発表にあたり、見出しを修正いたしました。

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