VAIO Z / VAIO Pro Z開発ストーリー Vol.6:開発者が語る「キーボード&タッチパッド」

ユーザーが直接触れる部分だからこそ

キーボードとタッチパッドはVAIOとユーザーをつなぐ接点。
それだけに一切の妥協は許されない。
コンマ数ミリにしのぎを削り、極上の使い勝手を追求した。

  • PC事業本部エンジニアリング統括部デバイスエンジニアリンググループ

    メカ設計課
    メカニカル プロジェクトリーダー

    武井 孝徳

VAIO Zのキーボードは完全新規設計

−−今回の新しいVAIO Zでは、先代モデルと比べてキーボードが大幅に進化しているそうですね。

武井:はい、あらゆるところが進化しています。まず、大きなところではキーのストロークを増やしています。先代VAIO Zを含む近年のVAIOはキーストロークを約1.2mmに設定していたのですが、新しいVAIOはネクストジェネレーションということで、これを約1.5mmにまで深くしました。

−−キーストロークを0.3mm深くするとそんなに打ち心地が良くなるんですか?

武井:お客さまからは従来のキーストローク約1.2mmのキーボードも充分にご好評いただいていたのですが、今回、ゼロからキーボードを再設計するということでいろいろ試した結果、よりしっかりとした打鍵感を求めてキーストロークを約1.5mmにすることにしました。

−−ただ、VAIO Zが全体の方針としてモビリティを高めていこうとしている中でキーストロークを深くするというのは簡単な話ではありませんよね。その分、本体がぶ厚くなってしまうわけですから。

武井:そうなんです。キーストロークを0.3mm増やすと言うことは、キーを押し込んだ時の深さが0.3mm増えるだけでなく、触っていない時のキーの高さが0.3mm増えることでもありますから、実は倍の0.6mmも厚みが増えることになるんです。

−−頑張って、コンマ数mmを削っていこうとしている中で、0.6mm厚くなるというのは厳しいですね。それをどのようにして実現したのですか?

武井:やはり立体成型フルカーボンボディにしたことが大きかったですね。外装素材を樹脂からカーボンにすることでボディをかなり薄くできますから。もちろんそれだけでは足りないので、他のパートのメンバーとも話し合って細かく設計を詰めて、なんとか必要なスペースを確保することができました。

−−そのあたり、もう少し具体的に何を詰めたのかを教えてください。

武井:まずキーボードが厚くなった分、ディスプレイ側を薄くすることで全体の厚みを抑えました。従来モデルでは液晶パネルの背面にWi-Fiアンテナのハーネス(線材)を通していたのですが、これを液晶パネル側面に移動し、その分、ディスプレイを薄くしています。なお、新しいVAIO Zはスリムベゼルのため、従来の樹脂製フレームだった場合、内部に複数パーツを組み合わせるためのツメや補強を設ける必要があり、側面にハーネスを通す余裕がありません。しかし、VAIO Zは1枚のカーボン板をコの字型に曲げた、シンプルで強い構造になっているため、ベゼルの細さを損なうことなく、液晶パネル脇にハーネスを通すことができました。

−−たしかにVAIO Zはこれまでのモデルと比べてディスプレイが薄いのですが、そこにはそのような工夫があったのですね。

武井:その上で、キーボード下のボトム側については、空冷ファンを当初予定していていたものより薄型のものにするなどしてスペースを稼いでいます。これまで以上のパフォーマンスを出すのであれば、熱対策にこそスペースを使うべきなのでしょうが、議論の末、VAIOとしてユーザビリティもきちんと良くしていこうということでここは譲ってもらいました。

なお、VAIO Zでは、これに限らず、部品を選定する段階からユーザビリティも見据えた議論を綿密に行っており、必要であれば、すでに採用実績のある部品を諦め、(追加の動作検証などが必要になる)より薄い部品を採用するということを多くの部分でやっています。このキーボードは、我々メカ設計だけでなく、電気設計や熱設計など、他のパートのメンバーが積極的に協力してくれたからこそ実現できたのだと考えています。

−−キーストローク以外の進化についても聞かせてください。

武井:もう一つ大きな変更点として、キートップの形状を変更しています。一般的なキーボードはキートップ天面が中央に向かって緩やかにくぼんでいく「ディッシュ」と呼ばれる形状になっており、従来のVAIOも0.1mmくぼんでいるのですが、新しいVAIO Zではキーストロークが深くなったことに合わせて、ディッシュの深さを0.3mmにしました。

−−ディッシュを深くするとどういったメリットがあるのですか?

武井:タイピング時に指先の丸みが自然とキーの中央に収まることで、キーを押し損なったり、隣のキーをまたいで押してしまったりといったミスタイピングが減るという効果があります。また、単純に指が吸い付くようにフィットするのでタイピングしていて気持ちいいんですよ。

−−たしかに、見るからに指にフィットしそうな形状になりましたよね。

武井:ディッシュの窪みを0.3mmまで深くしようというのはわりと早い段階で決まったのですが、実際にどのような形状にするかはかなり試行錯誤しています。たくさんの試作をして、いろいろな人に触っていただいて最終的にこの形状になりました。

なお、今回キートップに施す塗装に関しても、これまでと異なる特に質感にこだわった塗料を新開発しています。これまで通りテカリやキズ、摩耗に強いという点は継承しつつ、しっとりとした肌触りになっており、なおのこと指にフィットする、心地よいタイピング感を味わっていただけるはずです。

こだわったのは
ずっと打ち続けたくなる心地よさ

−−さて、VAIOのキーボードと言えば、タイピング音が抑えられた「静寂キーボード」が好評です。VAIO Zのキーボードはだいぶ構造が変わっていますが、このあたりはどのようになっているのでしょうか。

武井:もちろん健在です。むしろ、キーボードを新しく設計すると言うことで、静音性もより高めています。

−−キーボードのタイプ音を静かにするにはどういったことをすれば良いのですか?

武井:キーボードはたくさんの部品で構成されているのですが、細かなパーツを組み上げていった際の遊び(スムーズな動作のために作られた余裕や、製造上の誤差など)が大きなノイズ源となります。そこでまず、VAIO Zではキートップを支えるパンタグラフの素材をより硬いものに変更し、タイピング時に発生する、わずかな変形によるノイズ発生を低減しました。一方でこの変更はパンタグラフの剛性アップによるキートップのガタツキ低減にも寄与しています。

武井:その上で、それぞれのパーツの加工精度、組み上げ精度を上げ、クリアランスをギリギリまで詰めていきました。もちろん詰めすぎると動きが悪くなってしまうので、最低限の遊びは許容し、最終的にはキーを受ける側に反力を持たせる構造を追加することでも、ガタツキを抑えています。

−−ガタツキを無くすことで無駄なノイズが減るのはわかるのですが、タイプ感が硬くなるということはないのでしょうか?

武井:パンタグラフ部の組み上げ精度の向上でタイプ感が硬くなると言うことはありません。なお、タイプ感はパンタグラフではなくキートップの下に置かれるラバードームという部品で決まるのですが、VAIO Zではこちらも変更。従来モデルでと比べ、今回は押下圧を約5gアップさせました。これによって、従来モデルよりしっかりとしていながらも軽快なクリック感のある押し心地になりました。

キーボードのタイプフィーリングは好みの要素も大きいのですが、少なくともVAIO社内でいろいろな人に触っていただいた範囲では、多くの人から「良くなった」と言われています。

−−いや、たしかにこれはこれまでとは別モノですね。細かな工夫の積み重ねによって、これまで以上に気持ちよくタイピングできるようになっていると感じます。

武井:ありがとうございます。ちなみにVAIOでは、長らく「無限パームレスト」という名称で、タイピング時にキーボード奥部がせり上がって、机面までなだらかに繫がるような傾斜がつくようにしているのですが、今回、底面の形状を工夫することで、これまで以上に机面とのギャップがなくなり、文字通り無限にパームレストが広がっているような感覚で使えるようになっています。

刻印デザインからバックライトまで
何もかもが新しい

−−そして今回、人によってはもっとも大きな変更点に感じられるかも知れないのですが、キートップからかな刻印が消えましたね。かなり思い切った変更だと思うのですが、ここにはどのような背景があるのでしょうか?

武井:ネクストジェネレーションでデザインを刷新するにあたって、どうしてもかな刻印があるとキーボード面がゴチャゴチャしてしまうということがあり、今回、かな刻印のないキーボードを標準とさせていただきました。

−−たしかにローマ字入力をする人にとって、かな刻印はまったく不要なものですからね……。ちなみに実際のところ、かな入力をする人ってどれくらいいらっしゃるんでしょうか?

武井:VAIOで調べたところによると全体の約1割程度のようです。もちろん、そういった方々にもVAIO Zを選んでいただけるよう、VAIOストアなどで展開するカスタマイズモデルでは従来通りのかな刻印付きのものも用意いたします。

−−カスタマイズモデルでは標準の「日本語配列(かな文字なし)」に加え、これまで通りの「日本語配列(かな文字あり)」、そして、プログラマーなど一部ユーザーに圧倒的に支持されている「英字配列」、さらに「VAIO Z | SIGNATURE EDITION」では、「日本語配列(かな文字なし)」と「英字配列」について、キートップの文字が黒く刻印された隠し刻印キーボードを選べます。それらを含めると、なんと計5種類から好みのキー配列を選べるということになりますね。

武井:はい。お客さまのスタイルに合わせてお好きなものを選んでいただければと思います。ちなみに、キートップの文字に関してはもう1つ大きな変更があります。実はこのモデルからフォントデザインをVAIO株式会社設立以来、初めて変更しました。

−−それにはどういった狙いがあるんですか?

武井:ネクストジェネレーションに向けたデザイン刷新の流れの中で、この部分もよりモダンにしたいと考えました。具体的にフォントを開発したのはVAIOのデザイナーで、工業的でしっかりとした強い印象を保ったまま、有機的な曲線を採用しています。VAIOの持つ硬質感と柔軟性を表現しながら、使う人にとっての可読性や視認性についても配慮しています。

−−たしかにVAIO Zの新しいキーボードを見てから、旧機種のキーボードを見直すとフォントが少し野暮ったく感じますね。

武井:そしてもう1つ、キーボードの見た目について変更があります。これもかなり細かいところなのですが、暗いところで点灯するキーボードバックライトをよりムラなくきれいに光るようにしています。

−−これも設計の変更で実現したのですか?

武井:はい。キーボードバックライトは、キーボードの下にLED光源を配置し、それを導光板で拡げて全体を光らせる仕組みになっています。従来モデルではキートップの直下に信号線を通す(キー入力を検知する)メンブレン層があり、その下に導光板と底を支える板金の層があるのですが、導光板の層にパンタグラフを取り付ける突起などを設けていたため、光がうまく全体に回らずムラになってしまう問題がありました。

そこでVAIO Zでは導光版と板金の層の位置を入れ替え(導光板が最下層に)、パンタグラフを取り付ける突起も板金の上に用意。これによって導光板上に光を遮るものを減らすことができるので、全体に均一に光を拡げることができるようになりました。

−−なるほど。しかし、その構造だと導光板の光が板金層に遮られてしまいませんか?

武井:その通りです。そこで板金層はキーを支えるために必要な部分以外をくり抜き、光を通すようにしました。なお、板金層を穴だらけにすることでキーボード部の強度が落ちてしまう副作用があるのですが、これは各層の溶着位置を増やすなどして解決しています。ちなみに、この加工は副次的にキーボードの軽量化にも繫がっているんですよ。

−−正直、キーボードバックライトの光ムラを気にしている人はあまり多くないと思っていたのですが、比べると新しい方が一目で分かるほどきれいですね!

武井:なお、この効果が最も大きく感じられるのが隠し刻印キーボード。従来モデルでは光ムラの関係もあってキートップの刻印を光らせることを断念したのですが、今回は新しいバックライトと塗料の変更で刻印部分も光るようにしています。また、それによって刻印の視認性が上がることを踏まえ、消灯時の刻印の明度を少し下げました。

しっとりなめらかな
ラージサイズタッチパッド

−−ここまででたっぷりと新しいキーボードの進化について聞かせていただきましたが、同じく操作の肝となる、タッチパッドについてはどのような進化を遂げているのでしょうか?

武井:サイズ的にはいままでのタッチパッドよりも格段に大きく、面積比で約190%の大きさになりました。やはり広い方が操作しやすいという要望を多くいただいておりまして、今回、可能な限り大きなサイズにさせていただきました。ちなみに縦横比はディスプレイと揃えており、直観的に使いやすいようにしています。

−−タッチパッドを大きくするのにはどんな難しさがありましたか?

武井:ギリギリまで大きなタッチパッドを載せたため、タッチパッドを固定するためのパーツを組み込むのが大変でした。タッチパッドが大きくなった分、ボタンも大きくなっているのですが、ボタンの端を押してもきちんと反応するよう構造を工夫しています。タッチパッドの下にはバッテリーも収めなければならないので、キーボード同様、設計チーム全体でギリギリのせめぎ合いで作り込んでいます。

−−表面のテクスチャーというか触感もだいぶ変わりましたよね。

武井:はい、いままでのものよりもしっとりとなめらかな、サラサラした触感にしたいと考え、従来モデルから表面に貼るシートを変えています。また、これに合わせてボタンの押し心地とクリック音もより上質なものに改善。ボタンの裏側に貼りものをしてノイズを抑えたり、基板を柔らかいFPC(フレキシブルプリント基板)にするなどして、長時間操作してもストレスないものに仕上げました。

武井:ノートPCユーザーの中にはいまだにマウスを持ち歩くという人が多いのですが、VAIO Zではマウスがなくても快適に操作できることを目的にしています。実際、それだけのものに仕上がっているので、キーボードと合わせ、まずは店頭などで実際に触ってみていただきたいですね。

(2021年2月18日掲載)
2021年5月27日 VAIO Pro Z発表にあたり、
見出しを修正いたしました。

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