VAIO SX14・VAIO Pro PK開発ストーリー Vol.1

開発者が語る「+1インチの大画面化と、1kg切りの軽量化」

近道はない。
小さな工夫と努力を
ひたすらに積み上げていった。

  • PC事業部 PC設計部

    プロジェクトリーダー課
    プロジェクトリーダー

    江口修司

  • PC事業部 PC設計部

    電気設計課
    Wirelessエンジニア

    小川圭一

  • PC事業部 PC設計部

    メカ設計課
    メカニカルエンジニア

    長崎竜希

  • PC事業部 PC設計部

    メカ設計課
    メカニカルプロジェクトリーダー

    曽根原隆

これまで通りのワイヤレス性能を維持したまま狭額縁化

−−まずは、VAIO SX14・VAIO Pro PKで狭額縁(ナローベゼル)を採用した理由を教えてください。

プロジェクトリーダー 江口:VAIO SX14・VAIO Pro PKの企画が立ち上がった当時、VAIOのクラムシェル型モバイルノートには13.3型と11.6型の選択肢がありました。モビリティを最優先される方には11.6型(VAIO S11・VAIO Pro PF)を、モビリティを重視しつつも、大きなディスプレイとフルピッチのキーボードも譲れないという方には13.3型(VAIO S13・VAIO Pro PG)を選んでいただくというイメージですね。

そんな中、更なる「快」を追求するにはモバイルノートの最大制約である画面サイズを極限まで大きくするべきだ、と考えていました。単にディスプレイを大きくするだけでは本体サイズも大きくなってしまい、モビリティが損なわれてしまうのですが、狭額縁技術を駆使すれば、13.3型モデルのサイズを維持したまま、14.0型ディスプレイを搭載することができ、メリットだけを享受できるからです。

−−それだけを聞くと、狭額縁化には良いことしかないように聞こえるのですが、デメリットのようなものはないのでしょうか?

江口:はい、当然、副作用もあります。たとえば、VAIOも含めた一般的なノートPCは、ディスプレイの上端に通信用のアンテナやインカメラを内蔵しており、そのケーブルは通常、液晶パネルの横を通っているのですが、狭額縁ではそのスペースを確保できないという問題があります。そのため、多くのスリムベゼル製品では、アンテナやカメラをディスプレイ下部に移動させているのですが、VAIOとしてはそれをやりたくありませんでした。

−−それはなぜですか?

江口:アンテナをディスプレイ上端に配置していたのは、そこが最もワイヤレス通信の感度が上がるから。ディスプレイ下部にアンテナを移すと、それだけで通信速度や安定性が落ちてしまうんです。また、インカメラの位置も下にし過ぎるとビデオ会議時などに鼻の穴が映り込んでしまって見栄えが悪くなってしまいます(笑)。

−−なるほど(笑)。

アンテナ設計 小川:アンテナをディスプレイ上端に配置する理由(メリット)は大きく2つあります。1つは、少しでも高いところにある方が遠くまで電波を送ることができ、遠くの電波を受信できるから。家のテレビのアンテナが屋根の上などに設置されているのと同じ理由ですね。そして、もう1つが、クラムシェル型ノートPCでは、回路が全て下側(キーボード側)に入っているので、そこから発生するノイズから遠ざけたいからです。ほか、細かなところでは、下側にアンテナを配置すると机に近付きすぎ、その素材が金属だったりすると悪影響が起きやすいという理由もあります。

−−とは言え、その高さの違いは数十cm程度ですよね。それでどこまで感度が変わってくるものなのでしょうか?

小川:一概には言いにくいのですが、悪条件が重なると10分の1程度にまで受信感度が落ちてしまいます。

−−そんなに違うんですか!?

小川:はい。ただ、だからといって通信速度が10分の1になるというわけではないんです。たとえば、電波状況の良い場所ではそれほどの違いを感じないかもしれません。違いが大きくなるのは、電波の弱いとき。電波の届きにくい密閉された会議室などで、アンテナ位置にこだわった理由を体感していただけるはずです。

−−では、そうしたこだわりを踏まえ、アンテナをどのようにして、ディスプレイ上端部に配置したのかについてお話ください。

小川:VAIO SX14・VAIO Pro PKは、VAIO S13・VAIO Pro PGのフットプリント(底面積)に合わせてサイズを決めたので、それによってアンテナのサイズ上限が決まってしまいました。具体的には縦幅を従来よりも約2mm短い、約7mmにしています。ただ、アンテナの縦幅は受信感度に大きく影響します。ここを短くするとそのままではアンテナの性能が落ちてしまうのです。

そこで、VAIO SX14・VAIO Pro PKでは2つの対策を行いました。まず、アンテナ基板から伸びているグランド(銅箔部分)の出だしの部分を可能な限り短くして、アンテナ基板とディスプレイパネルの隙間を詰めています。そしてその上で、縦幅を2mm詰めた分の長さを補うため、アンテナ基板の上端に板金を追加して立体的なL字型にし、それをパターンの一部とすることで性能を出すようにしました。これは、より小型な携帯電話などで使われているテクニックを応用したものです。結果として、この部分だけで言うと、従来のものよりも性能が向上しています。

上がVAIO SX14・VAIO Pro PKのアンテナ。縦幅が狭く、上辺がL字型になっている。下はVAIO S13・VAIO Pro PGのもの。

また、狭額縁化によって、先ほど江口がお話ししたよう、そのままではディスプレイ側面にケーブルを通せないという問題も起きました。こちらは、ケーブルの太さを約20%細くすることで対応しています。ケーブルを細くするということは、損失も大きくなるということなのですが、アンテナ基板の性能が従来よりも向上しているため、トータルでは従来モデル同等レベルの性能を達成できました。

ディスプレイ設計 長崎:なお、VAIO SX14・VAIO Pro PKでは、細いディスプレイベゼルの中にアンテナケーブルなどを通すことができなかったため、その一部を液晶パネルの裏側を通すように配置しています。ただし、ケーブルを裏側に這わすと、液晶パネルが圧迫されて映像が乱れてしまったり、ケーブルが断線してしまうリスクが発生します。そこで今回は、液晶パネルの左右端でパネルを支えているフレームの真横など、影響のないところを通すことで、こうした問題が発生しないようにしています。

なお、インカメラのケーブルも同様に細くする必要があったのですが、こちらはケーブルの巻き方を平巻きというやり方にすることで薄型化。こちらもアンテナケーブル同様、液晶パネルの裏側を通しています。

左がVAIO SX14・VAIO Pro PK、右が従来モデル(VAIO S13・VAIO Pro PG)。VAIO SX14・VAIO Pro PKの方がケーブルが細くなっている。

VAIO SX14・VAIO Pro PKは“面”で衝撃を分散し堅牢性を確保

−−今、ベゼルが細くなったことによる内部の破損リスクの話が出てきましたが、ボディ全体の剛性についてはいかがでしょうか? 特にベゼルは見るからに繊細そうですよね……。

長崎:これまでのVAIO S13・VAIO Pro PGは、ベゼル部分が太く、その中にリブ(補強壁)が走っているため、最外層と合わせて、2枚の壁でディスプレイ部の強度を確保していました。ところがVAIO SX14・VAIO Pro PKではベゼル部分にリブを組み込む余地がありません。そこで、今回はコンパクトなVAIO S11・VAIO Pro PFで採用していたカーボン天板を、大画面モデルでも利用することにしました。

ただし、VAIO SX14・VAIO Pro PKの天板は、VAIO S11・VAIO Pro PFと比べて一回り以上大きいため、5層構造からなるUDカーボンの短辺方向の強度を司る層を強化した「超高弾性UDカーボン」を、東レ株式会社と共同で新規に開発。VAIO S11・VAIO Pro PFに搭載していた従来UDカーボンと比べて、短辺方向の強度が約2倍になっています。

なお、これまでのノートPCでは液晶パネルの四隅をハウジングに固定するかたちで保持していたのですが、VAIO SX14・VAIO Pro PKを狭額縁にするにあたり、外部からの衝撃に耐えられるよう、特に左右辺に関しては緩衝材をしっかり敷き詰め、液晶パネルをしっかりハウジングに固定し一体化。これによって、“面”で衝撃を分散し、強度を確保しています。

そのほか、緩衝材を追加したり、液晶パネルに外圧が加わらないよう、液晶パネルとディスプレイ背面部のハウジングを固定したり、さまざまな手を打っています。できることは全部やったという感じですね。結果的に、実使用において遜色のない強度を実現できたと考えています。「ペン挟み試験」のようなVAIOならではの厳しい品質試験もきちんとクリアしていますし、「液晶180度開きひねり試験」のような新しい試験も追加し、強度を検証しています。

−−従来同様の剛性はしっかり実現していると言うことですね。そのほか、ボディ設計周りで工夫されていることはありますか?

長崎:このモデルは法人市場向けにも提供されるので(VAIO Pro PK)、リワーク性にもこだわりました。メンテナンスのことを考えないのであれば両面テープなどで貼ってしまえば良いのですが、後できちんと修理できるよう、分解しやすく、その際にケースや部品が壊れない構造にしています。

コンマ数gの重量削減を積み上げ、目標の「999g」を達成

−−VAIO SX14・VAIO Pro PKではボディサイズを維持したままの大画面化に加え、軽量化についても追求されています。今回、そこに「999g」という目標を設定した理由を教えてください。

江口:VAIO SX14・VAIO Pro PKは、14.0型ディスプレイを搭載しているとはいえ、モバイルノートなので軽くなくてはいけません。普通であれば、サイズ同様、13.3型モデルの重量をキープということになるのでしょうが、今回、強度の事情から天板をカーボンにしたこともあり、もっと軽くできるのではないかと考えました。VAIOのいつもの“欲”が出てしまったんですね(笑)。そして、どうせやるのだったらインパクト的にも1kgを切りたいと、999gをターゲットに設計を始めました。

−−「999g」を実現するためにはどういった壁がありましたか?

江口:数え切れないほどありました(笑)。カーボン天板が軽いとは言え、それ以外の部分で逆に重くなってしまっている部分がたくさんありましたから。まず、ディスプレイが14.0型になってかなり重くなりましたし、CPUや電源周りも重量増になっています。また、今回、USB Type-C™端子を追加しているので、その回路とコネクタの分も重くなっています。

長崎:カーボン天板の採用が決定した時点では、「いけそう!」って雰囲気になったんですが、そんなに甘くはなかったですね(笑)。

江口:VAIO S13・VAIO Pro PGが1070gで、14.0型液晶パネルが、13.3型液晶パネルと比べて約20g重いため、おおよそ90gも削減しなければいけません。カーボン天板で数十g軽くなるとは言え、簡単なことではありませんでした。

−−それをどのように削減していったのかを教えてください。

メカニカルプロジェクトリーダー 曽根原:全部の材料・構造の見直しを行いました。私の担当しているメカの部分では、例えば樹脂の厚みを絞れるだけ絞るということをやっています。そのほか、ヒンジカバーの形状を工夫して従来よりも軽くしたりしていますね。

長崎:オーナメントが取り付けられているヒンジカバーは、それまでの海外ベンダー製のものから、国内ベンダー製に変更することで約20%薄型化を実現しています。海外ベンダーでこれをやろうとすると、表面にシボ加工がきれいに出せないということだったので、技術力のある国内ベンダーを探して、美しく成型してもらいました。

曽根原:後は、強度がさほど求められないパーツの肉抜きをしたり、細かいところではディスプレイのハウジング内側に貼られているグランドシートの厚みや素材を変えるなどして、コンマ数gの重量削減を積み上げていきました。

江口:曽根原からは基板に穴を開けて軽くしろなんて言われましたね(笑)。残念ながら、今回はUSB Type-C™端子を追加したことなどもあって、そんな余裕はなかったんですけれども。

長崎:私は半田の量を減らせと言われましたよ(笑)。

江口:ほかにも、今回はスピーカーを、音質を損なわない範囲で、より軽量なものに変えています。あとは基板の一部を覆っているカンシールドかな。今回は曲げているところにも穴開けています。実はこれにはべつの理由もあるのですが、少なからず軽量化にも貢献しました。

折り曲げ部分(角)にまでパンチ穴が開けられているVAIO SX14・VAIO Pro PKのカンシールド(左)。

−−そういうレベルの軽量化を積み上げていったということなのですね。

江口:そうですね。なお、こうした重箱の隅をつつくような工夫の積み重ねは、これ以外の全てのパートでも共通です。VAIO SX14・VAIO Pro PKの設計は、ベースとなったVAIO S13・VAIO Pro PGでほぼできあがっており、その時点で我々の全力を尽くしたものだったので、お手軽な方法で問題を解決できたということは全くありませんでした。

曽根原:……と、いろいろなことをやって999gを目指しましたが、やはり最も貢献したのはカーボン天板でしょう。ここは、軽さと強度のバランスを考え、さまざまな素材を検討しています。同じカーボン天板でもどのような素材を使うか、どのように繊維を並べていくか、およそ10パターンほど試作して、軽さと剛性の最も適切なものを探しています。

長崎:細かな違いも含めると30パターンくらい試しましたよね。

曽根原:実のところ、軽さだけを優先するならもっと軽いカーボン天板を作ることは可能でした。ただ、VAIO SX14・VAIO Pro PKではここで強度を担保しているところもありましたから、その剛性を妥協することはできません。

−−VAIOならではのタフさを備えた上で、999gを実現しなければ意味がないということですね。

曽根原:その通りです。ただ軽いだけではVAIOのモバイルノートではありませんから。

江口:苦労は多かったのですが、結果としては、VAIO S13・VAIO Pro PGに期待されていたモビリティをキープした上で、一回り大きなディスプレイを搭載することができました。しかも重量は13.3型のVAIO S13・VJAIO Pro PGよりも軽量。14.0型ディスプレイを搭載したモバイルノートとしてはトップクラスの軽さです。ビジネスマシンとして、理想的なアップデートができたのではないかと自負しています。

(2019年1月17日掲載)

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