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VAIO SX12・VAIO SX14 | 勝色特別仕様開発ストーリー 開発者が語る「勝色特別仕様を実現したクラフトマンシップ」

VVAIO SX12・VAIO SX14 | 勝色特別仕様開発ストーリー

“本物”を作りたい。

VAIO株式会社5周年を記念して発売される、VAIO SX12・VAIO SX14 | 勝色特別仕様。そこに込められた想いと、妥協できぬこだわりを実現するために歩んだ苦難の道のりを、開発に携わった社内外のエンジニア・職人たちが、語る。

勝色特別仕様で体現する日本のものづくり

VAIO株式会社 商品企画部
商品企画担当

黒崎 大輔

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−−今回、VAIO SX12、VAIO SX14をベースとした「勝色特別仕様」を台数限定販売することになった背景を教えてください。

商品企画 黒崎:「勝色」はVAIOのコーポレートカラーであり、特別な色。実は、勝色特別仕様のVAIOは今回が初めてではなく、2017年に「VAIO」というブランドが20周年を迎えたことを記念して「VAIO Z | 勝色特別仕様」を同じく台数限定でリリースしています。つまり今回は2度目ということになるのですが、であれば前回よりも進化したものを作りたい。そこでまず、どういったものを作るべきなのかから考え始めました。

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そんな中で出てきたのは「より“本物”を作りたい」という気持ち。「勝色」は日本の伝統色ですから、我々のルーツである日本のものづくりの長い歴史の中で、何百年も昔から使われてきました。それを踏まえた上で“本物”とは何かを考え抜いた結果、その色だけを取り出すのではなく、勝色に込められていた想いや精神も含めて具現化する必要があるのではないかという結論に達しました。

具体的には、素材の素地を活かした勝色の表現、自然の中にあるゆらぎを活かしたような表現ができれば、VAIOの掲げる日本のものづくりの精神と繋がったものに仕上がるのではないか、と。

今回の「勝色特別仕様」はそこから開発をスタートしています。

光沢天板の採用で勝色とカーボンの繊維目を損なうことなく表現

VAIO株式会社
PC事業部 PC設計部
メカ設計課

広吉 高一

VAIO株式会社
PC事業部 PC設計部
メカ設計課

浅輪 勉

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−−VAIO SX12・VAIO SX14 | 勝色特別仕様では、シリーズの特長の1つであるカーボン天板を勝色に染め上げています。その見どころや苦労した点をお話しください。

メカ設計 浅輪:VAIOは昔から、強靱さと軽さに優れたカーボンを筐体に使っており、私も長らくその素材感を表に出すということをやりたいと思っていました。これまでに携わってきたいくつかの製品の経験から、カーボンの素材感を活かすことで美しい表現ができるということは分かっていましたからね。ただ、単純に勝色で塗装するとカーボンの繊維が生み出す独特の繊維目が見えづらくなってしまうため、何か別のアイデアを思いつく必要がありました。

そんな中、2018年8月に台数限定でリリースしたVAIO S11 | RED EDTIONが大きな転機となりました。この製品では天板部分をUVコーティングで光沢仕上げにするという挑戦を行ったのですが、それによって色を出しながら、カーボンの繊維目も見せるということが実現できそうだと分かったのです。

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−−天板を光沢仕上げにするとどうして色と繊維目を両立できるようになるのですか?

浅輪:これはVAIO S11 | RED EDTION開発時に苦しめられたことなのですが、天板の表面を光沢仕上げにすると、色が映える反面、ちょっとした凹凸がハッキリと浮かび上がって、素材表面の粗がとても分かりやすくなってしまうんです。VAIO SX12・VAIO SX14 | 勝色特別仕様では、それを逆手に取って勝色と繊維目の双方がしっかり楽しめるようにしています。

−−一般的にカーボン素材というと、織物のように繊維がクロスしているものを思い浮かべますが、VAIO SX12・VAIO SX14 | 勝色特別仕様ではヘアライン加工のような横方向に流れる目になっていますよね。これはどういうことなのでしょうか?

浅輪:カーボン天板は炭素繊維を並べてシート状に固めたもの。その繊維の並べ方で天板の強度が大きく変わってくるのですが、VAIOでは単一方向に並べたカーボンシートを縦横に重ねてさらに強度を高めた「UDカーボン」という素材を採用しています。目をこらしていただければ分かるのですが、横方向に並んでいる層の繊維目の奥に縦方向に並んでいる層の繊維目がうっすらと見えるでしょう?VAIO SX12・VAIO SX14 | 勝色特別仕様では、この複雑な繊維の模様を見せたかったのです。

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なお、これに際し、カーボンパネルの品質にはかなりこだわりました。UDカーボンは一般的な工業製品(量産品)なので、一定の範囲内で見た目にばらつきがあるのですが、VAIO SX12・VAIO SX14 | 勝色特別仕様に使われる天板は、特に見た目に優れた高品質なものを選抜して使っています。

−−塗装についても聞かせてください。今回、カーボンパネルを勝色に塗装するにあたり、どういった工夫をされているのでしょうか?

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メカ設計 広吉:VAIO SX12・VAIO SX14 | 勝色特別仕様では、カーボンの繊維目がきちんと見えるようにしなければならなかったので、独自の勝色透明塗料を調色しました。カーボンは素の状態だと黒っぽい色をしているので、塗った状態で理想の勝色に見えるよう、また、カーボンの目がきちんと見えるよう、VAIO本社のある安曇野の塗装業者と一緒にベストな色を追求しています。

浅輪:ちなみにこの塗装業者には、広吉が色が決まるまで何度も通っていました。

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広吉:色味だけでなく、塗料やUVコーティングの厚みも見た目に大きな影響を与えるのでさまざまなパターンを試す必要があったんです。勝色をしっかり出したいという意図と、カーボンの繊維の目を見せたいという意図がせめぎ合う中、そのバランスを取るのに苦労しました。

−−VAIO SX12・VAIO SX14 | 勝色特別仕様の天板では、ロゴとオーナメントの色も通常モデルとは異なっています。その狙いについても教えてください。

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広吉:今回、VAIO SX12・VAIO SX14 | 勝色特別仕様では、ロゴとオーナメントの色をピンクゴールドにしています。これはデザイナーからのアドバイスですね。勝色と非常に良くマッチしていると思いませんか?

広吉:なお、それ以外の部分ですと、UDカーボン天板周囲のフレーム部分の色味にもこだわりました。この部分はカーボンではなく樹脂なので、同じ勝色透明塗料で塗装してもカーボンの目はでてきません。今回の天板は光の当たり方で表情が大きく変わってくるので、その見え方の違いを違和感なくまとめるのが大変でした。

浅輪:ここは本当に最後まで調整していましたね。

−−苦労しただけあって、素晴らしい仕上がりになったのではないでしょうか?

浅輪:はい。先ほどもお話したよう、これまで多くのカーボンの素材感を活かした製品の開発に携わってきましたが、VAIO SX12・VAIO SX14 | 勝色特別仕様は、色と繊維目を見せるという点で、過去最高の仕上がりになったと自負しています。ぜひ、カフェなど多くの人が出入りする場所で見せびらかしてほしいですね(笑)。

広吉:VAIO SX12・VAIO SX14 | 勝色特別仕様は、社内で試作している時から、自然と人が集まってくる製品。やっていてとても誇らしい気持ちになる製品でした。特に印象的だったのが、見た人が「きれい」と褒めてくれたこと。これまで「かっこいい」と言われることはあったのですが、「きれい」と言われたことはありませんでした。ぜひ、皆さんにも一目、この仕上がりを見ていただきたいと思っています。

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フラットアルミパームレストを自然藍を含む染料で着色するという挑戦

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株式会社 長尾製作所
代表取締役

長尾 浩司

VAIO株式会社
PC事業部 PC設計部
メカ設計課

浅輪 勉

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−−まずは株式会社長尾製作所について、どんなことをやっている企業なのかを教えてください。また、VAIOとの出会いについても聞かせていただければ。

長尾製作所 長尾:株式会社長尾製作所は、大分県佐伯(さいき)市の精密板金加工メーカー。アルミニウムやステンレス、鉄の加工を得意とする会社です。基本的には半導体製造装置部品や鉄道車両部品など、工業用製品に使う金属部品の加工を行っているのですが、今から約4年前に社員との雑談がきっかけで金属を藍染めしたら面白いんじゃないかということになり、試行錯誤の末、今回、VAIO SX12・VAIO SX14 | 勝色特別仕様のフラットアルミパームレストに採用された自然藍を含んだ染料によるカラーアルマイトという技術を確立しました。

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浅輪:我々がこの技術について知ったのは約1年半前。当時はまだ、VAIO SX12・VAIO SX14 | 勝色特別仕様の企画は動き出していなかったのですが、勝色は我々のコーポレートカラーでしたから、まるでVAIOのためにあるような技術だなと思ったのをよく覚えています(笑)。その後、VAIO SX12・VAIO SX14 | 勝色特別仕様の企画が立ち上がり、“本物”を意識したものづくりをするということになったとき、この技術を使うしかないと決意し、長尾製作所さんに連絡を取らせていただきました。

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−−自然藍を使って金属を染めるということがいまひとつイメージしにくいのですが、具体的にどのようにしてアルミニウムを着色しているのでしょうか?

浅輪:VAIO SX12・VAIO SX14のフラットアルミパームレストは、表面保護のために施されたアルマイト加工(陽極酸化処理)時にできる微細な孔に染料を染みこませて着色する「カラーアルマイト技術」を採用しているのですが、VAIO SX12・VAIO SX14 | 勝色特別仕様では染色に自然藍を含んだ有機染料を使用しています。

長尾:ただ、自然藍は強アルカリ性のため、そのままではアルミニウム表面に生成されたアルマイト皮膜をボロボロに壊してしまいます。また、色素の粒子もサイズが大きすぎ、そのままでは孔に入っていきません。それを解決するのが非常に難しかったですね。

−−具体的にはどのようにして解決したのでしょうか?

長尾:細かいところは企業秘密ということでお話できないのですが(笑)、自然藍の美しさを生み出す多彩な色素を抽出し、それを有機染料と合わせて着色を行っています。ちなみに、ここに使用している自然藍は徳島県産のタデ藍(阿波藍)。藍にはそのほか、インド藍、琉球藍、ウォード(大青)などさまざまなものがあったのですが、長い歴史を誇り、今も日本全国の藍染め屋さんで使われているということで使わせていただくことになりました。

なお、徳島県では現在、県を挙げて藍の活用を進めているのですが、金属を染めるというアイデアは全く聞いたことがないと面白がっていただけました。専門の藍染職人さんにできあがったものをお見せしたところ、良い色だと感心していただけたのはうれしかったですね。また、2年ほど前からはさまざまな展示会に出品しているのですが、あるメッキ業者の方からは「この色は我々では出せない」とお褒めいただいています。

−−自然藍を含む染料で染色したアルミニウムには、同じ藍色でもさまざまなバリエーションがあるようですが、その違いは混ぜ合わせる有機染料の色によって変わってくるということですか?

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長尾:いいえ。ここで使っている有機染料は1色です。色の違いはアルマイト処理時の電圧や時間によって変わってきます。今回、VAIO SX12・VAIO SX14 | 勝色特別仕様のフラットアルミパームレストについては、VAIOさん監修のもと、最も理想的な藍色となる設定を追求しています。

−−VAIOの考える理想的な藍色とはどんな色だったのでしょうか?

浅輪:実は初期の試作ではもう少し青みがかった色でした。ただ、デザイナーと天板なども含めたトータルなカラーリングを相談した結果、もう少し深みのある濃い紺色の方が良いだろうということになり、今回採用した濃い目のカラーリングとなりました。

長尾:ちなみに実際に戦国時代などに使われた勝色の武具などを見てみると、経年変化もあるのでしょうが、黒に限りなく近い藍色なんですよ。

−−VAIO SX12・VAIO SX14 | 勝色特別仕様のフラットアルミパームレストを染色するに当たって難しかったこと、苦労したことがありましたら教えてください。

長尾:VAIOのフラットアルミパームレストは、これまで扱ってきたものの中でも最大サイズだったため、既存の着色設備で色ムラを適正な範囲内に収めるのが大変でした。

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フラットアルミパームレストの着色光景。1人の職人が専門で行ない、品質をコントロールしている。

浅輪:とは言え、我々はその個体ごとの色の違いやムラこそが自然藍ならではなのではないかと考えています。赤みのあるもの、青みが強いもの、並べて見ると確かに違いがあります。ばらつきと言えばばらつきなんですが、濃いもの、淡いもの、それを唯一無二の個体差として楽しんでいただければ。

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−−VAIO SX12・VAIO SX14 | 勝色特別仕様のオーナーが集まって、それぞれの色味の違いを比べるオフ会などがあったら面白そうです。

浅輪:画一的な現代の工業製品にはない楽しみと言えそうですね(笑)。

−−最後に、実際に組み上がった製品を見た感想を聞かせていただけますか?

長尾:いや、素直に素晴らしいと思いました。その一言に尽きます。天板の勝色も合わせ、トータルで良いものに仕上がっているのではないでしょうか。自社で何台買うべきか、今から悩んでしまいますね(笑)。

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使い込むことで味わいを増す勝色レザーPCケース

株式会社デザインフィル
ノックス事業部
プロダクトグループ統括マネージャー

斎藤 崇之

株式会社中村千之助商店
代表取締役

中村 高志

VAIO株式会社 商品企画部
商品企画担当

黒崎 大輔

−−VAIOがVAIO SX12・VAIO SX14 | 勝色特別仕様のために作られた勝色レザーPCケースは、株式会社デザインフィルの革製品ブランド「KNOX(ノックス)」と、株式会社中村千之助商店、そしてVAIOの3社コラボレーションという形で完成しました。まずはその出会いについてお話いただけますか?

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デザインフィル 斎藤:KNOXは40年前(1979年)に生まれたプロダクトブランドです。今でも伝統を重んじクラフトマンシップ溢れる物を作り出す西欧の歴史や文化をリスペクトしつつ、日本の職人とともに素材とつくりを大切にしていくかたちでのものづくりを積極的に推し進めています。VAIOさんとの出会いのきっかけとなった「JAPANBLUE」というシリーズはその象徴とも言えるもの。中村千之助商店さんが開発した藍染レザーの原形を見た時、これこそまさに日本人のアイデンティティーだと感銘を受け、それをKNOXらしくアレンジするかたちで生まれました。

黒崎:VAIOが今回、デザインフィルさんに専用ケースの開発をお願いすることになったのも、藍の世界を調べていく中で、JAPANBLUEに出会ったことがきっかけなんですよ。唯一無二の美しさを追求するVAIO SX12・VAIO SX14 | 勝色特別仕様の世界観が、JAPANBLUEの世界観にぴったりだと。

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−−ノックス、そしてVAIOを魅了した中村千之助商店の藍染レザー。これはどういったところから生まれたものなのでしょうか?

中村千之助商店 中村:中村千之助商店はおよそ100年の歴史を持つ皮革問屋。約15年前まではタンナー(革の加工・製造業者)もやっていたこともあって、現在も革素材の開発を主な生業としています。その際、心がけているのが、革の新しい可能性を見出すこと。今回、お話をいただいた藍染レザーはそうした取り組みの中で、具体的な目的やマーケティングなどを取っ払い、とにかく面白いものを作ってみようと作り出したものです。

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斎藤:中村社長の生み出す革は、藍染レザーに限らずいつも革新的なんですよ。でもベースのところには「革らしい革、つまりエイジングが楽しめる自然由来のヌメ革にこだわる」という一貫したポリシーがあって、そこに信頼をおいています。やることは突飛でも、安心して面白いことに乗っかれるところがあるというか。

中村:こういうことばかりやっていると、同業者から「中村さんが作るものは“偶然”なものが多すぎる。これを“必然”にしていかないと商売にならないよ」と言われるのですが、それは斎藤さんたちにお任せしています(笑)。

−−そうしたポリシーは中村千之助商店の伝統なのですか?

中村:そうですね。特に私の代になってからは強く心がけるようにしています。なので名刺にも「We find the new possibility of leather(我々は革の新たな可能性を見出します)」と書かせていただいているんですよ。

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−−中村千之助商店はヌメ革にこだわっているとのことですが、ヌメ革とは一体どういうもので、どういった特徴があるのでしょうか?

中村:いろいろな定義があるのですが、一般的には原皮をタンニンだけでなめした革のことをヌメ革と言います。現在、タンニンなめしは、多くの革で採用されるクロームなめしと比べて、時間も手間もかかるのですが、使い込むことで色艶が増す「エイジング」を楽しめることが特徴。そういう意味では、極めて革らしい素材と言えるでしょう。革でしか表現できないものを作る時にはタンニンなめしという技法は外せないと思っています。

今回の藍染レザーはその名の通り「本藍」から作り出した染料を使用しています。一方で、この本藍染料はタンニンなめしの革に浸透しにくいのも特徴なんです。そこで、数年かけて何度もトライアンドエラーを重ねながら、独自のレシピによるなめしと染色方法でようやく完成したのが私たちの藍染レザーです。しっかり経年変化するタンニンなめしの革で美しい日本の「藍青」を表現したい……。そんな想いから、特殊な合成タンニンでなめした下地革を使用する方法に至りました。この技法で原皮をなめすと純白のベースが仕上がり、その後本藍染料で染め上げることでまるで生成(きなり)のデニムを染めたかのような美しいブルーが本革で、しかもタンニンレザーで再現することができたんです。

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合成タンニンでなめした革は、一般的な植物タンニンでなめした革と比べて純白に仕上がる(写真左)。そのため、藍染レザーの断面は白く、表面はデニムのような美しいブルーとなる(写真右)
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なめしと藍染めは姫路の老舗タンナーが担当。巨大な木製樽で時間をかけてしっかりと染め上げていく。
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染め上がった革を丁寧に数日間陰干し。革の味を引き出す専用オイルの浸透と自然酸化によって、より深みのある美しい青へと仕上がる。

斎藤:ちなみに勝色レザーPCケースでは、こうしてできあがった藍染レザーに細かなシボを型押しして、エンボスによる凹凸の陰影と高級感溢れる独特な風合いを持たせています。

−−タンニンなめし革ならではのエイジングについてももう少し詳しくおしえてください。

中村:藍染レザーは時間が経つと青みが増し、自然なツヤ感が表れるようになります。ここでは4年前に藍染レザーで作った手帳カバーをお持ちしましたが、並べてみると違いがよく分かりますよね。特にこのケースにはシボが入っているので、使い込むほどに凹凸のトップの部分が色焼けてとても良い味になってくると思います。とても楽しみですね。

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−−さて、それでは、今回の「勝色レザーPCケース」をどのようにして作りあげていったのかをお話ください。

斎藤:ある日、VAIOさんから「できますか?」とご連絡をいただきまして。……実はKNOXではこれまでノートPCも入る汎用ケースは作ったことがあったものの、特定の製品専用のPCケースを作ったことはなかったので自社ブランドの製品以上に気を遣い大変でした。そのため、完成までには通常の倍近い試作を行っています。

−−VAIOからはどういったリクエストがあったのでしょうか?

黒崎:PCケースはインナーケースとして使われることも多いので、そうした用途にも使えるよう、ごくシンプルなものをお願いしました。バッグ・イン・バッグで使うならフタやファスナーはむしろ邪魔ですよね。ただ、そのシンプルさが逆に難易度を上げてしまったようです(笑)。

というのも、VAIO SX12・VAIO SX14ってくさび形形状なんです。一般的なフラットな形状のノートPCと比べて作りにくかったのではないでしょうか。実際、最初はシンプルな封筒型にしていただいたんですが、それだと口の部分が拡がってしまい、形状にしっかりフィットしてくれませんでした。結果、マチを作って立体的に縫製していこうということになっていくんですよね。そのほか、フィット感をより高めるため、ケースの周辺部では革を薄くして柔らかくするなどさまざまな工夫が施されています。

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斎藤:革は繊維の集合体なので梳くことで薄く、さまざまなつくりの可動性を高めることができます。マチがほどよく稼動し、しっかりフィットする薄さを見極めるため、コンマ数ミリレベルの調整を何度も行っています。

黒崎:また、これはデザインフィルさんにご提案いただいたのですが、PCがケースから滑り落ちてしまわないよう、内貼りには適度な摩擦のあるスエード調素材を採用しています。こうすることで、たとえばうっかりケースを逆さに持ちあげてしまっても、簡単には中身が落下しないようになりました。

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斎藤:スエード調素材は毛足が立っている分、適度な抵抗があり、これを貼り込むことで、入れやすいのに自然には落ちてこないという絶妙なフィット感を実現してくれます。もちろん、それだけではダメで、革の厚みや梳き加減、左右幅なども適切に調整しなければならないのですが、今回はとても上手く行きましたね。

−−そう言えば、内貼りの色は勝色ではないのですね。

黒崎:ケースにVAIO SX12・VAIO SX14 | 勝色特別仕様を入れると、開口部から背面のオーナメントがのぞくので、それが美しく映えるよう、あえて内貼りは山吹色としました。

斎藤:VAIOさんのそうしたこだわりは本当に刺激になりました。

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−−最後にできあがったケースを見た感想を聞かせていただけますか?

中村:シンプルで洗練されていて、とてもかっこいいですよね。革製品は買ったときよりも、買った後の方が良くなるものなのですが、実は最近はそういう革製品が減ってきています。全て同じように作って、経年変化も少ない方がクレームも減りますからね。ところがこのケースではあえてそこに踏み込みました。先ほども言いましたが、使い込んだ先がとても楽しみです。こういったケースはなかなかないと思いますよ。

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斎藤:VAIOさんと僕らのものづくりのスピリットには完全にシンクロするものがあります。それは、シンプル・イズ・ベストで、シンプル・イズ・クリエイティブなところ。やはり余白を残した世界には人の創造力をかき立てるところがあると思うんです。このケースではそれを体現できたのではないかと考えています。そして、ぜひ、このケースにVAIOを入れて、毎日持ち歩いて欲しいですね。人の体温と湿度を与えることが実は革にとって、最高のケアですから。

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※本ページに記載されているシステム名、製品名は、一般に各開発メーカーの「登録商標あるいは商標」です。