VAIO SX12・VAIO Pro PJ開発ストーリー Vol.1

開発者が語る「VAIOが追求する
“新スタンダードモバイル”のかたち」

目指したのは、
最高の使い勝手を実現した上での
ミニマムサイズ。

  • PC事業部 PC設計部

    プロジェクトリーダー課
    プロジェクトリーダー

    江口修司

  • PC事業部 PC設計部

    メカ設計課
    メカニカルプロジェクトリーダー

    曽根原隆

  • PC事業部テクニカルユニット

    メカ設計課
    チーフ サーマル エンジニア

    久富寛

  • PC事業部 PC設計部

    電気設計課
    エレクトリカルプロジェクトリーダー

    柳澤秀一

従来VAIO S11・VAIO Pro PFには“妥協”があったのではないか?

−−まずは、VAIO SX12・VAIO Pro PJのサイズをどのようにして決めたのかを教えてください。

プロジェクトリーダー 江口:VAIO SX12・VAIO Pro PJのベースとなっているのは、11.6型ディスプレイを搭載したモバイルノートPC、VAIO S11・VAIO Pro PF(2017年9月発売)です。先行して今年1月に発売されたVAIO SX14・VAIO Pro PKでは、13.3型モデル VAIO S13・VAIO Pro PG(2017年9月発売)とほぼ同じサイズで一回り大きなディスプレイを搭載することを目指しましたが、VAIO SX12・VAIO Pro PJはそれとは異なるアプローチを採りました。

VAIO SX12・VAIO Pro PJで目指したのは、モバイルノートPCとしての正当進化。VAIO S11・VAIO Pro PFは、拡張性を備えた上での圧倒的な軽さやロングバッテリーライフなどが好評だったものの、モビリティを最優先とし、妥協して使用しているところがあるというご意見を一部のお客さまからいただいていました。

具体的には画面サイズやキーボードの打ちやすさ、ですね。そこで、VAIO SX12・VAIO Pro PJでは、そうした不満点を解消し、“真のスタンダードモバイル”としての使いやすいディスプレイとキーボードを備えた、最小サイズのボディを目指し、開発を進めています。

−−“真のスタンダードモバイル”として最小サイズであることが重要で、必ずしも、VAIO S11・VAIO Pro PFのサイズにはこだわらないということですね。

江口:はい。その際、最初に決めたのが画面サイズ。VAIO SX14・VAIO Pro PKで採用した狭額縁技術を駆使して、可能な限り大きなディスプレイを搭載しようと考えました。結果として、モビリティを損なわないギリギリの大きさとして、12.5型というサイズを選択しています。11.6型のVAIO S11・VAIO Pro PFと比べて、本体サイズはわずかに大きくなっていますが、ほぼ変わらないと言える程度に抑えています。また、後ほどお話する軽量化などの工夫もあり、トータルな意味でのモビリティは損なっていないと考えています。

−−また、それによってフルサイズのキーボードを実装することにも成功しましたよね。このキーボードはVAIO SX14・VAIO Pro PKのものと全く同じなのでしょうか?

メカニカルプロジェクトリーダー 曽根原:正確にいうと違います。VAIO SX12・VAIO Pro PJではShiftキーやTabキーなど、左端の修飾キーの横幅が1/4キーほど短くなっているのです。

ただし、それ以外の中央の文字キーなどは同等。キーピッチ約19mmを確保しているので(VAIO S11・VAIO Pro PFは約16.95mm)、デスクトップPCや大きめのノートPCなどと同感覚でタイピングしていただけます。

左がVAIO S11・VAIO Pro PF、真ん中がVAIO SX12・VAIO Pro PJ、右奥がVAIO SX14・VAIO Pro PKのキーボードトップカバー。VAIO SX12・VAIO Pro PJはキーピッチ約19mmを確保を確保している。

−−フルピッチのキーボードを実装するにあたり、どのような苦労がありましたか?

曽根原:製品を見ていただければわかると思うのですが、VAIO SX12・VAIO Pro PJでは、キーボードが本体の横幅ギリギリまでせり出しています。そこで、まず確認したのが、そのサイズに合わせて現行モデルのアルミ製トップパネルをカットしてみたらどうなるか。結果としてものすごく剛性が落ちてしまったで、それをどのようにして解決するかが、今回、メカ設計で最も苦労した点ですね。

−−具体的な対策について聞かせてください。

曽根原:大きく2つの対策を施しました。まず、キーボードのバックプレートを本体左右一杯にまで伸ばして全体の強度向上に活用しています。なお、組み立て時にトップパネルと樹脂製のパーツ、そしてキーボードのバックプレートを接着して強度を高めているのですが、キーボードが左右ギリギリまでせり出しているVAIO SX12・VAIO Pro PJでは、そのために必要な“接着しろ”を確保できません(従来モデルはキーボード左右脇の余白部分を使って接着)。当初、これをどうしたものかとても悩んだのですが、あるとき、キーボードの列の間のわずかな隙間を使って接着できるのではないかと閃きました。これに気がついた時はうれしかったですね(笑)。

上がVAIO S11・VAIO Pro PFのキーボード裏面、下がVAIO SX12・VAIO Pro PJのキーボード裏面。VAIO SX12・VAIO Pro PJは、キーボードバックプレートが左右ギリギリまで占めている。

そしてもう1つが、ボトム形状の変更。VAIO S11・VAIO Pro PFでは本体下半分を覆う樹脂製ボトムパーツの側面端子周りは、上部を切り欠く形で成型していたのですが、今回はそこに梁を設けることで強度を高めています。

上がVAIO SX12・VAIO Pro PJの右側面、下がVAIO S11・VAIO Pro PFの右側面。側面端子の上部にも樹脂を回り込ませ、梁を形成。

−−強度確保以外に苦労されたことはなかったんでしょうか?

曽根原:キーボードが横幅一杯に拡がったことで、バックプレートが側面コネクタと干渉してしまわないよう、コネクタを1mm下げなければならなくなりました。つまり、そのままだと厚みが1mm増してしまいます。ただ、それではモビリティが損なわれてしまいますから、別のところで薄型化を行い帳尻を合わせています。とは言え、残念ながら0.1mmほど厚くなってしまっているんですけどね。

−−0.1mm増なら、実用上全く分からないと思います。ちなみに、どのようにして薄型化を図ったのですか?

曽根原:大変だったのは特に大きなLAN端子とVGA端子(アナログRGB出力端子)の部分です。LAN端子については、ケーブル挿入時に展開するパーツを極限まで薄くすることで対応しています。VAIO SX12・VAIO Pro PJのLAN端子はカバー中央に大きな穴が空いているのですが、これはケーブルを挿した時のフックが引っかかるところ。従来はカバーの内側にあったのですが、今回はそれが露出してしまうほど薄肉化しています。

VGA端子については、VAIO S11・VAIO Pro PFのころから底面のボトムパーツを切り欠く形でなんとか収めていたので1mm下がると底面を突き抜けてしまいます。そこでVAIO SX12・VAIO Pro PJではこの部分にだけ端子の根元の部分にわずかに厚みを持たせることで対応しました。ですので、実はここだけは0.1mmよりもわずかに飛び出してしまっているんですよ。

−−そこまでギリギリにしてしまって実用上問題はないのでしょうか?

曽根原:はい、それは問題ありません。VAIOは独立の当時からモバイルPCに対してチルトアップヒンジの採用にこだわっていて、これにより利用時にキーボード面が持ち上がるので、たとえばVGA端子にそれよりも一回り大きなコネクタのケーブルを挿しても机面と干渉することがないようになっています。

VAIO S11(2015年モデル)のVGA端子接続イメージ。キーボードに傾斜がつくチルトアップ構造にこだわり続けることで、さらなる薄型を維持しつつも、机面との干渉を回避。

江口:VAIO S11・VAIO Pro PF、VAIO S13・VAIO Pro PGでは生産効率を高めるため内部では全く同じ基板を利用していました。もちろん今回も、VAIO SX12・VAIO Pro PJとVAIO SX14・VAIO Pro PKで同じ事をやろうと考えていたのですが、ここまで曽根原がお話しした工夫を実現するため、VAIO SX12・VAIO Pro PJでは新たに基板を設計し直しています。生産効率の上ではデメリットの大きい判断だったのですが、我々としてはそこに妥協はできませんでした。

理想を実現するために内部設計もやり直し

−−再設計されたというVAIO SX12・VAIO Pro PJの基板について、もう少し詳しく教えてください。

エレクトリカルプロジェクトリーダー 柳沢:VAIO SX12・VAIO Pro PJでは基板の位置が1mm下に下がったにも関わらず、全体の厚みは0.1mmしか増えていません。そのため、基板の下のスペースが狭くなってしまい、そのままでは入れ込むことができなくなってしまいました。そこで、VAIO SX12・VAIO Pro PJでは、基板の下面に配置されていた大きな部品を上面に移し替えるということをやりました。もちろんそのためには上面の実装密度を高めて空き地を作ってあげる必要があり簡単ではありません。

そしてその上で、底面に残された部品をより背の低いものに変更しています。特にCPU周りの消費電力の大きな部品は電圧が高いため大きくなりがちなのですが、これを1つひとつ選定し直し、全体的な低背化に成功しています。もちろん、それによって全体のインピーダンスなども変わってきますからその調整も必要です。苦労しましたが、最終的には性能を低下させることなく基板をVAIO SX12・VAIO Pro PJのボディに収めることができました。

曽根原:実は、メカの部分も細かな部分をだいぶ作り直していて……。見た目がVAIO SX14・VAIO Pro PKと同じようにみえる部分も、薄型化や軽量化のために新しいパーツを起こすなどしています。

−−なるほど、目に見えないところではそういった苦労もあったのですね。ところで、そういった変更は、CPUの熱設計には影響を及ぼしていないのでしょうか?

熱設計久富:もちろん及ぼしています(笑)。本体サイズが小さくなったことに加え、基板が1mm下がったことによって、VAIO SX14・VAIO Pro PKでやっていた放熱の工夫がそのまま使えなくなってしまいました。

【参考】VAIO SX14・VAIO Pro PK開発ストーリー Vol.2

開発者が語る「さらに進化したVAIO TruePerformance®

https://vaio.com/magazine/devstory/vol28.html

−−その辺り、もう少し詳しく教えてください。

久富:以前お話したように、VAIO SX14・VAIO Pro PKでは、ボトム部に貼られている熱を逃がすための金属シートを空冷ファンのエリアだけばっさりカットし(ファン下の空間をシート1枚分拡げ)、送り出す空気の量を増やして排熱効率を高めています。しかし、同じ事を基板が1mm下に下がったVAIO SX12・VAIO Pro PJでやると底面が熱くなりすぎてしまいます。そこで今回は、その金属シートを空冷ファンの形に沿って丁寧にカット。ファン効率を落とさずに、でもギリギリまでファンに寄せた形状にすることで、同じ効果が出るようにしています。

なお、よく見ていただくと分かるのですが、金属シートのヘリの部分にちょっとした突起がありますよね。これ、ボトム部の強度を高めるために追加されたリブなんですが、今回はそれを避けず、敢えてオーバーラップしてもらっています。これによって、アルミシートで熱を分散しつつも、お客様が直接触れるボトムケースそのものの熱上昇を抑える働きがあります。

左がVAIO S11・VAIO Pro PFのボトムケース、右がVAIO SX12・VAIO Pro PJのボトムケース。VAIO SX12・VAIO Pro PJでは空冷ファンの形状に合わせて金属シートがカットされている。

−−なるほど。ただ、基板が1mm下がったということは、上面の方には余裕ができたということですよね?

久富:そうですね。これまでは基板の上のスペースが狭くて、CPU周りの空気の流れを良くするため、その部分を覆うカンシールドに開けられている穴を加工しにくい角部分にまで拡げるなどといった細かい工夫を積み上げてきました。今回はそこに少し余裕ができたので、より積極的に空気を流すことで冷却効率を高めています。大きなところではヒンジ部内側に設けられた吸気口の形状を変更しました。VAIO S11・VAIO Pro PFでは左右幅一杯に吸気口を設けていたのですが、VAIO SX12・VAIO Pro PJでは敢えて左半分を塞いでいます。こうすることでファンの効率は若干落ちてしまうのですが、外部の空気が本体右上からファンのある左端まで、長く基板の上を流れるためトータルではより冷えるようになるんです。

VAIO SX12・VAIO Pro PJのキーボードトップカバーを外した様子。ディスプレイ側から吸って、指先の方へ空気が抜けていく。

左がVAIO S11・VAIO Pro PFの吸気口、右がVAIO SX12・VAIO Pro PJの吸気口。VAIO SX12・VAIO Pro PJは吸気口の左半分がカットされている(写真はトップパーツを裏返したもののため、左右が逆になっています)。

−−そう言えばVAIO SX12・VAIO Pro PJでは、放熱フィンの材質が銅からアルミに変更されていますよね。これも放熱性能を向上させるための工夫なのですか?

曽根原:それはメカ設計からのリクエストですね。VAIO SX12・VAIO Pro PJでは、VAIO SX14・VAIO Pro PK同等のパフォーマンスを実現するという大きな目的があったのですが、その上で重量を899g以下にすることも譲れませんでした。銅はアルミと比べて重いので、軽量化のためにここはアルミにしてほしい、と。

久富:熱設計の事だけを考えるなら全て銅にしてしまうのがベストなのですが、もちろん軽量化も大切です。そこで、受熱版とフィンの材質の組みあわせをいくつも試し、最終的にフィンをアルミにしても目に見えてパフォーマンスが落ちないことが分かったので、今回はそのようにしています。

江口:VAIO SX12・VAIO Pro PJでは、こうした“攻めすぎ”な設計を成立させるために、これまで以上に部品の品質や、量産工程の精度を高める必要がありました。

VAIO SX12・VAIO Pro PJは使い込むほどに良さが伝わってくるマシン

−−コンパクトなボディにたくさんの工夫を詰め込んで使いやすさ、パフォーマンス、軽量化を実現したVAIO SX12・VAIO Pro PJ。最後にこのモデルを利用中のユーザー、あるいは購入を検討しているお客さまに向けてメッセージをお願いします。

江口:私は仕事柄出張が多く、これまでもVAIO S11を愛用していました。そこで不満だったのがキーボードサイズが小さいこと。私は手が少し大きめなので、この大きさだとミスタイプしがちだったんですよね。その点、VAIO SX12・VAIO Pro PJにはそうした不満がありません。また、ここ数ヶ月試作品を使用していて気がついたのですが、ディスプレイサイズも12.5型が思った以上に快適なんです。気分的には13.3型とほとんど変わらない使用感で驚かされました。持ち運ぶモバイルノートPCとして最高の選択肢だと思っています。使い込むほどに良さが伝わってくるマシンだと思いますので、まずはお試しいただきたいですね。

曽根原:……大事なことは全部言われてしまったので(笑)、メカ設計からは細かいところを1つ。昨今のVAIOのモバイルノートは折りたたみ時にキートップがディスプレイベゼルの内側に入り込むような設計になっているのですが、今回のモデルではその設計をギリギリまで突き詰め、可能な限りキーボードサイズを大きくするようにしています。分かりにくいところなのですが、エンジニアとしては非常に気に入っています。見た目的にも非常に収まりがよく、かっこいいので、ぜひここにも注目していただきたいですね。

ギリギリまで突き詰められた、キーボードフレームとディスプレイベゼル。

久富:そういった“重箱の隅”は熱設計も同様です。VAIO SX14・VAIO Pro PKでやり尽くしたと思っていましたが、そこからさらにもう一歩踏み込んでいます。VAIOにそういった、やり過ぎな作り込みを期待されている方には喜んでいただけるのではないでしょうか。

柳沢:電気的な観点で言うと、VAIO SX12・VAIO Pro PJは、基板やバッテリーなどが、最先端テクノロジーを駆使して限られた内部スペースの中に所狭しと詰め込まれています。重量バランスも非常に優れており、厳しい制約の中で作られた製品として、ベストな仕上がりのものになったと自負しています。

(2019年7月9日掲載)

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