『WIRED』日本版(WIRED.jp)より転載(2023.6.30)
VAIOが6月にリリースした、ハイエンドモデル「VAIO® SX14」。手に取った瞬間にわかる上質な質感とデザイン、圧倒的な軽さ。さて、使い心地と性能はどうだろう。フリーランスのライター/エディターが、1週間使用したうえでのレポートをお届けする。
PHOTOGRAPHS BY YUTARO YAMAGUCHI
TEXT BY TAKUYA WADA
本質を追求した「ものづくり」の結晶
Windowsは“Windows XP”で時間が止まっており、かれこれ15年以上Macを使用している筆者が今回手にしたのは、VAIOの最上級ラインに位置する新型「VAIO SX14」。モバイルPCとしてはかなり珍しい豊富なカラーバリエーション(通常カラー5色と特別カラー2色の計7色)から、深く艶やかで都会的な品格が漂うアーバンブロンズを選んだ。
さて、VAIOが現代の技術を結集したモバイルPCとはいかようなものか。久しぶりのWindowsのPCにそんな気持ちを抱きながら使い始めると、そこには細部まで徹底し尽くされた機能美があった。
特に惹かれたのはキーボードのあるパームレストのデザインだ。無駄な継ぎ目がなく、高輝度アルミニウムによって上質で美しい発色をしている。
キーボード面は1枚板のアルミニウム合金をヒンジ部分まで覆う難易度の高い成型技術が駆使され、パームレストは染色や発色に関する細かなこだわりが詰まっている。同時に、手首を置くパームレストの課題として常にある、摩耗による塗装剥がれを防ぐための素材選定と加工がなされている。VAIO SX14は「美しさ(機能美)」と「タフさ」を徹底的に両立していくというコンセプトのもと開発が行なわれており、ユーザーが長く使える、“本質を追求する”VAIOのものづくりの姿勢があらわれているように感じる。
また、使用してすぐに感じるのが、手を置いてタイピングしたときの違和感がないこと。ディスプレイを開くと、写真のようにキーボード奥側が持ち上がり、タイピングしやすい角度がつく。モバイルPCではあまり見たことのないものだ。これによって手首の負担が少なく感じた。常に腱鞘炎に悩まされる筆者にとっては非常にありがたい。
さらに、一般的にキーボード面は厚さが一定となっていることが多いが、VAIO SX14は画面側から手前に徐々に薄くなっており、ボディがテーブルに限りなくシームレスに接地している。テーブルとの段差を少なくすることで、手首に違和感が生まれにくい設計になっているのだ。
キーボード面の裏側にはバッテリーが収納されているが、汎用品ではなく、形状に合わせたバッテリーを開発しており、機能美への、ある種の執念すら感じる。
VAIO SX14を、外に持ち出してみた
テレワークをはじめ、ハイブリッドな働き方が次第にデフォルトとなりつつある現代にあって、フリーランスのライター/エディターも多分に漏れずあちこちを飛び回る慌ただしい職業だ。外での打ち合わせに取材や撮影、自宅以外で企画や原稿をつくることもあるし、一方で、何日も自宅にこもりっきりで作業をすることもある。ライター/エディターに限らず、自宅と外をせわしなく行き来し、場所を選ばずに仕事をする人々にとって、商売道具であるモバイルPCの使い心地はアウトプットの質やクリエイティビティに直結する。VAIO SX14は、そうしたハイブリッドワークの時代を生き抜くうえでの選択肢になりうるのか。早速、外に出て使ってみることにした。
VAIO SX14を外に持ち出すときに驚くのはその軽さである。筆者が経験したことのない約1kgという質量は大きなメリットとなりそうだ。機材や仕事道具をあれこれと詰め込むバックパックがいつもより軽くなるのも、地味な点ではあるが、非常に嬉しいポイントだ。
この軽量性は、VAIO独自の技術と素材革新が実現したもの。ボディ天面にはスポーツカーなどに使われる、軽くて丈夫なカーボンファイバー素材を採用している。
カーボンファイバーはマグネシウム合金やアルミニウム合金よりも比弾性率(強度)に優れており、高い堅牢性を実現している。ディスプレイベゼル内部にはボールペンのグリップなどにも使われる樹脂素材である、エラストマー素材のクッションが組み込まれており、側面落下時の耐久性も非常に高いのだそうだ。
こうした要素が相まって、アメリカ国防総省制定の調達規格である『MIL規格』や、127cmからの落下試験も問題なくクリアしている。軽さと同時に堅牢性も備えているモバイルPCだといえる。
パーツの分割線を減らし、稜線アール(角の丸み)の形状をした立体成型カーボン天板の側面から続くフォルムが、途切れることなくオーナメントにつながり、ボディ全体の一体感を強く意識したデザインとなっている。軽さとタフさに加え、やはりここにも、VAIOが追求する美しさがうかがい知れ、一貫したVAIOの姿勢を感じる。
クリエイティビティをサポートする秀逸な機能
外での作業で常に気にするのがバッテリーだ。バッテリーが減ると次第に焦り出し、すべて使い切ると電源のある場所を探す、あるいは作業を切り上げて自宅に戻る。このあるあるなシチュエーションに、大いにうなずく人も多いはず。
VAIO SX14は最大約28時間、連続動画再生時間は約16.5時間の長時間駆動(※)。外出先でハードに作業を行なった日もバッテリーに気を取られることはなかった。
※フルHD液晶モデル。JEITA測定法 2.0の場合。最大駆動時間は本体仕様により異なる。また、駆動時間は使用状況および設定等により変動する。
また、オンラインでのミーティングが一般化し、外で対応することもあるだろう。そうしたときに非常に有用なのが、AIノイズキャンセリング機能だ。
周囲の雑音や店内のBGMといった環境ノイズだけをAIが除去する。カメラの左右に搭載されたマイクが集音した音の時間差によって音の位置を識別しPC正面の自分の声だけをクリアに届けるプライベートモードや、相手の声をノイズキャンセリングしてのスピーカー出力も可能。実際に、VAIO SX14で参加したオンラインミーティングでは「ヘッドセット、変えました?」と聞かれることもあった。また、自宅で飼っている猫の鳴き声が相手には聞こえていないことには大きな驚きがあった。
さらに、電源ボタンを押すと同時にログオンが完了する指紋認証と、離着席を認識し自動でログオン/ロックが実行される機能も搭載されており、外出先でスムーズかつ安心して作業を行なう助けとなるだろう。
そして、個人的に最もうれしいのは、接続可能な端子の豊富さだ。USB Type-A端子を左右にひとつずつ搭載するほか、2つのUSB Type-C®端子、HDMI端子、有線LAN端子を搭載。Macユーザーの筆者が悩まされ続け、常に望み続けてきたものでもある。外出時にドッキングステーションなどを持ち出す機会が増えているが、忘れていることに外で気づく。また、大事なときに接続の調子が悪くなることもある。VAIO SX14は、ノートPCに絶えずつきまとうこれらの憂いを取り払ってくれるはずだ。
加えて、クリエイティブワークに携わる者であれば、当然ながら、最も気にするのが性能だろう。VAIO SX14は、CPUにIntel社による最新の「第13世代インテル® Core™ プロセッサー」を搭載。GPUには「Iris Xe Graphics」を採用し、インテルが定めるプレミアム・モバイルPCの標準規格「インテル® Evo™プラットフォーム」にも準拠しており、ハードな作業内容においても高いパフォーマンスを存分に発揮するスペックだといえる。
テキストベースの制作だけでなく、PhotoshopやLightroom、Premiere Pro、リサーチで増え続ける数十個のブラウザのタブ、(これもそれぞれの仕事によって増え続ける)チャットツール、ストリーミングサービス……エトセトラ。これらがいつのまにかすべて、いつものように同時に起動されていたわけだが、快適さが損なわれることは一切なかった。
「剛」と「美」を実現できる理由
VAIOは、商品企画から設計、品質管理、調達、製造、カスタマーサポート(修理)部門といったものづくりに必要な組織と設備が、長野県安曇野市のVAIO本社工場内に集結している。PCメーカーではほぼ類例のないこの体制によって、製品ごとに部門を横断したプロジェクトチームをつくり、チーム全員が製品開発から顧客からのフィードバックを受けての改善まで、すべてのフローに携わっている。
大企業で一般的とされる縦割り分業体制ではなく、どこまで「剛」と「(機能)美」を追求するかといったそれぞれの部門のこだわり、実現性、ニーズ、コストパフォーマンスなど、理想と現実の折り合いを限界まで議論を行なう。それが高いレベルでの“剛”と“美”を備えたプロダクトを生み出している。
VAIO SX14は、モバイルPCに対するVAIOの考えと技術が存分に凝縮されており、機能美とタフさを高次元で両立する、まさに「本質を突き詰めた製品」だ。ソフトウェアやデジタルテクノロジーだけでは補完できない、ハードウェアとものづくりで生み出せる体験が数多く残されているのだと気づかされる。
「使える」だけでなく、使い手のクリエイティビティに全身全霊で応えてくれる、美しく、タフな仕事道具。仕事場の分散や働き方の多様化が加速するなかで、VAIO SX14はそんな選択肢を提示してくれる頼もしい存在になるはずだ。