VAIO × MEDIA

JSOLがシンクライアントのマシンとして
VAIOを導入した理由

株式会社アスキー・メディアワークス Ascii.jp ビジネス (2018年07月05日)より転載
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VAIOがWindows IoT Enterpriseの搭載に対応したことで、シンクライアント市場が少しざわついている。

シンクライアントというと、従来は購入できる機種やメーカーの選択肢が限られていた。分厚くて重く、モバイルにはあまり適さないものだったり、モバイルできる軽さでも耐久性や使い勝手への配慮が足りないなど、携帯性を重視して開発したモバイルノートに劣る面もあった。

VAIOをシンクライアント化できると発表したことがこれに風穴を空けた。シンクライアントを導入している企業やSIerからの問い合わせも急増しているという。

その中から、実際にVAIO S13を導入した株式会社JSOLを取材。導入に至った経緯などを伺った。

長年シンクライアントを運用、5年ごとに見直す

株式会社JSOLは、ICTサービスコーディネーターとして、幅広い企業のシステム構築やアウトソーシングまで、ICTのプロフェッショナル集団として知られる企業だ。前身は2006年に株式会社日本総合研究所から会社分割して設立した日本総研ソリューションズで、2009年にNTTデータの資本が入り、現在の社名に変更した。

通常とVAIO TruePerformanceでの動作の違い。図はVAIOのサイトより。

もともと三井住友銀行のコンピューター部門を担当してきた経緯もあり、高セキュリティを求められるシステムの構築を長く手掛けてきた。JSOL自体も一般的な会社と比べて、セキュリティに厳しい会社である。一方で設立時より全社員に携帯電話を配布し、内線電話を廃止。顧客と直接やり取りするワークスタイルであり、在宅勤務やモバイルワークを導入しやすい土壌も整っていた。

シンクライアントはモバイル接続用に導入してから、現在第3~4世代目となる。おおむね5年ごとに機器の刷新をしており、前回の刷新は2012~2013年。そのときは、VMware Horizonを用いた仮想デスクトップ環境と、Windows Embedded OSにより全社員のOA用PCを薄型のモバイルシンクライアントで統一。OA環境をVDIで提供するようにした。

シンクライアント環境の構築/刷新を指揮する品質・生産性改革部 情報システムチームの早川陽一郎氏は、前回の刷新を振り返り、「刷新にはうまいシナリオが必要だ」と語る。

早川 「5年前は、Windows XPからWindows 7への移行期で、VDIの検討がトレンドを先取りしていました。ちょうど東日本大震災のあとで、セキュリティと事業継続性の両立への意識が、世の中で高まっていました。また、薄型のシンクライアントはモバイルで作業する社員からも歓迎されました」

OA環境の全社的なVDI化は社内でも懸念の声があった。手元のマシンを全てシンクライアントにするため、スキャナーやCDドライブなどを使う、専用マシンを別途用意しつつ、残りをすべてVDI化した。VDI化の流れがあるなかで、顧客への展開より先行する形で、自社でVDI環境の導入を進め、モデルケースを作る意図もあったという。

当時導入したクライアントは、当時流行のウルトラブックだった。

タブレットが登場し、MacBookも薄くなった時期だ。薄型端末が続々と登場しており、ウルトラブックをシンクライアント化し、持ち運びやすいモバイルシンクライアントとして提供することを思いついたという。

その後2014年には、全社に無線LANが導入された。セキュリティにも配慮し、シンクライアントのみを接続可能とした。社内、社外を問わずモバイルシンクライアントが積極的に活用され社員からも好評を得ることに。面白いことに無線LANの導入で、タブレットの社内利用を求める声がパタリとやんだそうだ。有線から解放された自由なモバイル環境を求めていたのだろう。

さらに2015年には、スマートフォンを社員に支給した。これはウェブ会議サービスを導入して、社内/社外のどこでも会議ができるようにするためだ。音声/映像でのコミュニケーションには、シンクライアントではなく、スマホを利用すると割り切れたことで、セキュリティやシステム構築の課題をクリアできた。ビデオ通話はスマホ、画面の共有はPCというスタイルが整ったのは2016年だが、働き方改革が叫ばれる以前から、テレワーク環境がすでに整ったことになる。先見性の高さを感じる企業と言える。

たまたまVAIOと運良く出会えた

そして前回の刷新から5年が経ち、新たな刷新の時期が訪れた。2017~2018年だ。

早川 「今回のシナリオでは、Windows 7からWindows 10への移行となります。VDI環境を継続して運用する点での大きな変化はありません。そのかわり、スマホを利用せずにWeb会議ができるようにしたかったのです。この5年間でVDIが音声や映像のシンクライアントへのリレーに対応したことも大きいです。そこで、新規に導入するマシンには、セキュリティ上の理由で外していたカメラ機能を付け、コミュニケーションクライアントとして提供しました」

今回の刷新では、VDI環境を導入する範囲も広げている。

早川 「5年前には社員全員に向けてシンクライアントを支給しました。しかしビジネスパートナーさん(常駐する外部スタッフ)は見送っています。1200名ほどの社員に対して、パートナーは800人ほどいて、ハードの導入コストが見合わないと判断したのが1つの理由でした。5年前はそう考えていたのです。しかし、それは間違いでした。理由はパートナー向けに実機をお渡しするためにセットアップを済ませ、日々の運用/管理を行うことを考えると、トータルではシンクライアントにしたほうが効率的だったためです。中身のないシンクライアントを渡して『VDI登録が済んでいるので、これを使ってください』と言ったほうが、断然対応しやすいし、管理も楽です」

シンクライアントはすべてのデータをサーバー側で処理し、クライアント側にデータは残らない。接続するアカウントの管理も集中的に可能だ。TCOを考慮した場合、ハードを購入するコストが増しても、導入・運用・廃棄のためのコストを差し引けば、十分にメリットがあるという判断なのだろう。

そんなときにたまたま、VAIOがシンクライアントをやるということを耳にしたそうだ。

早川 「しかもVAIOさんがシンクライアントをやってくれると言うのはうれしかったですね。正直、いままでVAIOさんのマシンをビジネスで使うというイメージがあまりなかったですね。コンシューマー向けのイメージが強くて、もっとエンターテインメント寄りのマシンだと思っていました。こういうマシンをビジネスで使えるのであれば、会社から支給されて使わされているという感じも減るのではないかと考えました」。

前回の刷新の際、社員から「MacBookの利用ができないのか」という声があったという。しかし、異なるOSの機材が混在すると、セキュリティポリシーが複数必要で、何重にも再投資が必要となるため実現は難しかった。VAIOであればその心配もない。

早川 「みんなが言っているのは煎じ詰めれば、所有欲を満たすことなんです。外回りを担当する人間は、他社のマシンを見ているので、余計そう思うのだと思います。VAIOならその点でも負けないと思っています。事実、ほかの会社の人に『いいですね』と言われたこともあります。

VAIOのいいところは、単にデザインがいいだけでなく、キーボードが打ちやすくて静かだったり、堅牢性が高かったり、インターフェースが充実している点です。この点でも評判が高い。毎日使うマシンであれば、キーボードが打ちやすくて使いやすいというのは絶対条件です。そのうえで、所有欲を満たすことが、社員に地味に効いてきます。本社部門としては、社員がいいなと思うようなマシンを提供したいと思ってます。社員に満足してもらうことで、より大きな成果を出してもらうのが良い会社なのではないでしょうか」

Windows Embedded OSからWindows 10 IoT Enterpriseへ

シンクライアントの導入ではカスタマイズ性も重要だ。要件上、機能の大半を止める必要があり、一般に販売されているマシンでは対応できない。そのために5年前は工場を動かして専用に生産してもらう必要があった。さらにもうひとつの問題は追加導入だ。仮になんとか対応してもらえても、最初に導入したマシンと同じスペックで調達できないという悩みがある。ハードウェアのコストだけを考えれば、海外メーカーが有利だが、こうした融通に合わせてもらえる柔軟性が乏しいため、要求を通しにくい面があるという。

早川 「選定機種は複数メーカーありますが、上述したように約1200名いる社員に加え、800名のパートナーも利用されます。これをほぼ一気に刷新するかたちとなりましたが、その理由は環境を統一するためです。さらに今後の追加導入にも対応していただけるよう約束してもらっています。われわれは5年サイクルで機器を入れ替えていくため、その間も対応してもらえれば心強いですね」

JSOLとVAIOとのやりとりは、3ヵ月ほどと短期間だった。

今回はVAIOとしてもかなりの数の引き渡しになった。JSOLの要求をすべて満たしつつ、スケジュールを完遂するのは高いハードルがあったようだ。

大きな課題としては、Windows Embedded版を使っていたものを、Windows 10 IoT Enterprise版に切り替えるという点があった。実はEmbedded版とIoT版には違いも多く、従来のノウハウがそのまま適用できない面もあったという。

早川 「先のことを考えて、IoT版にしました。OSがWindows 10で大きく変わるので、対外的にも最新のIoT版でやったほうがいいと思い今回導入しています」

VDIシステムの刷新ではサーバー側の対応が主となるため、ハードウェアの導入に関してはあまり手間をかけられない。VAIOとしては、IoT版はWindows 10 Enterprise版と共通する部分が多く、扱いには慣れていた。ここを任せられる専門家がいるというのは導入する側としては心強い。検証版を作成してフィードバックをもらうというやり取りが続いたが、スケジュール通り作業を終えることができた。

こういった調整に対して柔軟な対応が得られる点も、国内ベンダーを選ぶ利点と言えそうだ。

社員の満足度はお金では買えない

JSOLでは今回同じポリシーを適用したマシンをVAIOともう1社導入している。事前に社員へ向け展示会を行ない、反応を調査したそうだ。

「VAIO S13はフルHD解像度、もう一方のマシンはHD解像度だったのですが、若い人はVAIOの人気が高かったですね。ただ、ベテラン世代でもこだわり派はVAIOを選んでいます。やはりスタイリッシュさやブランド力がVAIOには備わっているからだと思います」(早川氏)。

最後にシンクライアントのマシンを導入するにあたってのポイントを伺った。

早川 「シンクライアントだと、マシンの性能はサーバー側の話になります。クライアントのマシン選びのポイントとしては、やはりキーボードや堅牢性、インターフェースといった、モノとしての良さが重要です。スタイリッシュにしすぎたためにアダプターを介さなければインターフェースが使えないというのもダメ。オールインワンになった製品がビジネスのシーンでは大切です。

一世代前のVAIO S13のインターフェース。LANとビデオ出力がアダプターなしで利用できるのがポイント

ただ、最終的には、ものに対する愛着に行きつくのではないでしょうか。私は、VAIOがソニー時代からものづくりがうまいと思っていて、『好き』と言えるような製品を作ってきたと思います。会社の情報システム部門が言うようなことではないかもしれませんが、マシンに対してそういう気持ちがないとダメだと思います。マシン選びの優先順位で『コストです』と言うのは、悲しいですよね。

正直コストは掛かっています。でも、それを解消するぐらいに生産性が上がればいいと思っています。社員のモチベーションや満足度は、お金を出しても買えません。マシンの選定は小さなことかも知れませんが、社員にいいなと思ってもらえるような環境を提供することは、会社に対する満足度を上げることにも繋がるのではないでしょうか」。

JSOLではいま、すべての社員にVAIOとiPhoneが支給される。それは、小さな満足かもしれないが、毎日使うものだから、愛着が生まれる製品を使えることは重要なこと。その製品のことを好きにならなかったら、使わされる道具になってしまう。それでは、仕事をしても満足度が低くなってしまうだろう。働き方改革を進める上でマシン選びも重要な要素なのだ。

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※本ページに記載されているシステム名、製品名は、一般に各開発メーカーの「登録商標あるいは商標」です。