開発ストーリー Vol.01 VAIO Z
2014年7月1日、
新会社設立発表会見。
そのときも、
安曇野の手は動き続けていた。
2014年7月1日、
新会社設立発表会見。
そのときも、
安曇野の手は動き続けていた。
東京での会見が終わると、VAIOの開発現場で指揮を執るPMの一人、笠井はその足で安曇野を目指していた。気づけばあと1時間で日付が変わるが、工場の窓からは明々と光が漏れている。笠井の姿を見つけると、チームの面々が「あ、どうでしたか?」と次々に声をかけてくる。自分たちがまだ仕事に取り掛かっているのも、笠井が帰ってくるのも、当たり前といった様子だ。「Zをつくる」、そのたった一言で全員が意思統一できたチームは、いかにしてVAIO Zを完成させたのか。物語は、開発の道しるべとなるコンセプトを決めるところに遡る。
「究極の道具をつくる」という考え方は、VAIO Zのチームにとっては少しも目新しいものではなかった。初代ZからDuo 13に至るまで、歴代のフラッグシップモデルの開発において、つねに掲げられてきた不変のテーマだからだ。「それぞれの時代における限界を突き破り、お客様に必要な価値を、妥協なく詰め込んでいく。そのチャレンジを製品ごとに継続して積み重ねている。姿勢はブレない。いわば我々はずっとZをつくり続けていると言ってもいい」(PM 笠井)。究極を追求する精神を受け継ぎながら、新生VAIOが考えるPCの新たな指標を新たな技術で具現化する。このモデルが、「VAIO Z」を名乗るのは必然だった。
問題は、今という時代において、何を極めていくべきか。本当に使える道具として、どんな価値を提示すべきなのか。立ち返ったのは、やはりPCという道具の本質。急速にその性能を進化させたスマートフォンやタブレットに対し、「ビジネスにおける生産性」を向上させるうえで、PCにしか実現できない価値を突き詰めていく。「人は、PCを使いながら発想し、創造し、決断している。そうした行為を1秒でも無駄にすることなく、1秒でも速く応えてあげたい。速さという普遍的なものを飛躍的に進化させることができれば、それはビジネスの道具として最高の価値と言えるのではないか」(企画 黒崎)。ビジネスの道具を突き詰めるという大枠では、先に世に出ていたVAIO Proも同様である。
では、VAIO Zが目指した地点は何が違うのだろう。議論の中から浮かび上がってきたのは、「レスポンス」というキーワードだった。限りなくエンジン性能を研ぎ澄ませた車がアクセルを踏み込むと気持ち良く呼応するように、人間のインプットに対し即座にアウトプットしてくれるPC。圧倒的なレスポンスとモビリティをこれまでにないレベルで両立しよう。それはVAIOならではの強みを最大限に活かせる道であり、次代に提示する新たな解答にもなると考えたのだ。「レスポンス」。この再発見と共に、VAIO Zの開発はいよいよ走り始めた。
ビジネスにおける生産性、創造性を極限まで高めるために、レスポンスとモビリティを両立させる。開発の方向性が定まると、基本仕様も見えてくる。まず、「TDP28Wの高性能プロセッサー」。薄型モバイルPCでは考えられないTDP(熱設計電力)だが、目指したレスポンスを実現するために迷わず採用した。さらに、0.3秒の高速起動を可能にする「InstantGo」、まる1日不安なく使える「大容量バッテリー」、2 in 1の「フリップ機構」といった仕様が並行して固まっていった。この段階で、総勢数十名に及ぶ開発メンバーが集められた。開発の初期段階に笠井が思考し決断してきたことを、すべてのメンバーに説明し理解してもらうためだ。VAIO株式会社となり、規模が変わった。組織が変わった。しかし、何より変わらなければいけないのは、人。人の想いだ。だからこそ、このプロセスには、以前なら考えられないほど多くの時間をかけた。なぜ2 in 1はVAIO Duo 13(2013年発売)で採用したサーフスライダー(液晶タブレット部をスライドさせることによりワンタッチで切り替えられる機構)ではないのか。
なぜフリップ機構を採用したのか。自分たちが作るものへの疑問、それに対し一人ひとりが腹落ちしなければ、本当にいいものはできないからだ。「この時のことが一番印象に残っています。確かに時間はかかった。でも、開発に向かうチームには一体感が生まれた」(PL 鈴木)。こうした場を経ても納得できないメンバーがいる。もう一度話がしたい。個別に笠井のもとに直談判にやってきた。「議論しに来た感じじゃない、半ばケンカ腰だった。でも熱くなるのは、商品に本気で取り組んでいる証し。個が変わり、チームが強くなった。それがすごく嬉しかった」(PM 笠井)。変化は、日々の業務にも現れた。新会社になり、設計と製造をはじめ、すべての部署がワンフロアに集められた。どこかに人だかりができていると、「何か問題が起きているのか」とさらに人が集まってくる。するとその場で、活きた議論、深い議論が始まる。その場で、決断できる。無駄な会議がなくなった。
このインタビューは、VAIO Zの発表を間近に控えた時期に行われた。すべてを終えた今の想いを聞いてみる。答えは即座に返ってきた。「やり残したことは、まったくないですね」(PM 笠井)。新たな製品を送り出す、そのたびに満足感や達成感は当然感じている。ただ、エンジニアは貪欲だ。「ここは、もう少し突き詰めることができたかもしれない」という想いが湧き上がってくるのが常だという。しかし、今回は、そんな気持ちにはならない。なぜなら、許された時間の最後の最後まで、最善を尽くしたという自負があるからだ。製造には4つの試作工程がある。ブレッドボードという実験用の大きな基板で電子回路を試作する「原理試作」。実際の製品サイズで基板をつくる「EVT」。そして、金型試作を行う「DVT」があり、量産試作の「PVT」がある。最後のPVTはあくまで量産性を確認するためのイベント。ここで変更を入れることはまずあり得ない。
VAIO Zは、金型試作のDVT時点まで戻ってやり直すような、とんでもない変更を数項目にわたって行った。「これはどんなメーカーでも考えられない非常識。私のキャリアでも初めてのこと」(PM 笠井)。普通なら「絶対、無理だよ!」という声が上がる。しかし開発チームの反応は違った。もっと、できる。「別に示し合わせたわけではないが、一人ひとりが“できない”とは言わない、そう決めていた」(PL 鈴木)。リスクを超えて、実現しようという尋常でない決意。それがVAIO Zというモンスターを生み出したのだ。「このマシンが究極であるもうひとつの理由は、そういったプロセスを経て追求した、スペック表には表れない部分 での作り込みの高さであると思っています。液晶を閉じるときの気持ちの良い閉まり方とか、最高だと思っています」(企画 黒崎)。開発に関わった誰もが“究極”と自信を持って言えるVAIO Zだけに、一人ひとりの思い入れが、隅々にまであきれるほど詰まっている。では、そんなVAIO Zの核をなすメイン基板は、どのような思い入れと共に生み出されたのであろうか。メイン基板を“エンジン”と呼ぶ、その意味するものとは。
(2015年3月13日掲載)
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