開発ストーリー Vol.04 VAIO Pro 愛着を持って、長く使えるPCを。

VAIOがお勧めするWindows.

  • プロダクトマネージャー(PM) 林 薫 商品ユニット1
  • プロジェクトリーダー(PL) 市川 英志 商品ユニット1
  • メカ設計 曽根原 隆 TG11

軽さ、薄さ、使いやすさ、そして強さ。そのどれもをギリギリまで研ぎ澄ませ、追い込み、ここしかないというバランスで成立させたVAIO Pro。「仕事で本当に使えるPC」という基準で採点すれば、十二分に合格点だろう。しかし、VAIOである以上、まだ足りない。使う人が、便利だな、役に立つなと思うだけで終わるのではなく、愛着を感じてもらうにはどうすればいいのか。持っているだけで、嬉しくなってしまうような…。VAIO Proの開発チームは、究極への挑戦の渦中であっても、最後の一手間を惜しまなかった。愛着とは、ディテールにこだわることで得られるのではないか、と。たとえば、UDカーボンを代表とするVAIOの素材へのこだわりは先に伝えた。VAIO ProではUDカーボンの他に、パームレストや天板背面のオーナメントにアルミニウムが使われている。実はアルミニウムは、軽量化素材の中では重い方である。最軽量を実現するために、部品をすべて見直し、ミリグラム単位のせめぎ合いをしているにも関わらず、パームレストをアルミニウム合金より軽いマグネシウム合金に変更しよう。オーナメントは飾りだから省こう。とは、誰も言わなかった。「自分たちでやっていて矛盾しているなと思うところはあったが、金属の質感がある方が使う人にとってかっこいいのではないかと」(PM 林)。「メンバー全員が、最終製品のビジョンがきちんと見えていた。なぜこれを使っているのか、なぜこれでなければいけないのか納得した上で最軽量を目指す話がきちんとできていた」(メカ設計 曽根原)。「ここは外せない部分というのを皆が共有できていた」(PL 市川)。 VAIOというブランドが築いてきた誇りは、リーダーだけの誇りでなく、現場の一人ひとりの胸に息づいていた。

後ろから、見て欲しい。

どうしても、譲れなかったアルミニウム。パームレスト部は、ヘアラインの加工のアルミニウムで質感を高めた。また、使う人の手がいちばん触れる場所だからこそ、塗装ではなくアルマイト処理の染色で、長く使っても塗装剥がれしないようにした。天板の背面に、剛性を高めつつアクセントを加えるオーナメントをあしらった。このオーナメント、アクセントと言うと軽く聞こえるかもしれないが、一筋縄ではいかず、「後ろのデザインのつくり込みが一番苦労した」(メカ設計 曽根原)。オーナメントのアルミニウムは一枚板の部品だが、UDカーボン筐体にただ接着されているだけでは筐体の反りなどの影響で剥がれてしまう可能性がある。そもそも、このオーナメントは、UDカーボン筐体のボディが後ろまで回り込んでいるところに付いていて、そこにフラットなエリアをつくること自体が難しいのだ。オーナメントの部品はアルミニウムを切削してきれいにダイヤカットしているが、それを載せる袋形状になったUDカーボン筐体をつくるための金型づくりこそが挑戦で、UDカーボンが反ったところにアルミニウムの板を付けようとしても容易にはくっ付かない。「反りを矯正したり、背面の袋形状の真ん中に別のパーツを組み込むことでさらにフラットに、反りづらい仕込みを入れるなどの設計の試行錯誤により、ようやくオーナメントの貼り付けが実現しました。」(メカ設計 曽根原)。「オーナメントの角度は細かく面を取ってキラキラさせているが、UDカーボン側の角度に合わせて最適な角度を付けた。VAIO Proの後ろから見たかたちが好きで、スポーツカーのリアビューみたいだなと」(PM 林)。たしかに、後ろから見たときにかっこいいPCなんて、他にあまりないのではないか。

ディティールにこだわったPCは、オーラが違う。

「ディテールにこだわることによって、最後に出てくるオーラが違うと思っている。大枠でよくても細部がずれていると、結局、台無しになってしまう」(PM 林)。「一箇所成り立っていないと、すべてが変わってしまう。それを理解しているから、皆がぎりぎりまで研ぎ澄ます」(メカ設計 曽根原)。ディテールへのこだわりは、VAIO Proのあちこちに潜んでいる。シンプルできれいなデザインをテーマに、“ビスレス”、つまりネジを見せない処理が施されている。VAIO Proを360度じっくり眺めてみても、ビスの存在にまったく気づかないはずだ。普通はあまり注目されない底面においても「VAIOロゴはこれまで天板では強く見せていたが、底面にもVAIOロゴを配置して、底面の印象にも気を配っています」(PL 市川)。次に、側面。後ろから見ると、斜めのラインにジャックが並んでいる。どの角度のラインならジャックが目立たず配置できるか、デザイナーと設計で話しながらコンマ何ミリ単位で調整をかけていく。「USBコネクターのぎりぎり収まるラインはどこ?というところから絶妙に削ぎ落としたデザインに仕上げてもらった」(メカ設計 曽根原)。続いては、 ヒンジ(液晶画面を開閉するための蝶番機構)。動作させているところを見せないよう、ヒンジを思いきり下に下げた。そして、開くと液晶は後ろに開いていくが、液晶側とキーボード側との隙間を見せたくないので、液晶の下の見えない部分を削っているところがあるが、そこがまさに、隙間を狭めキーボード側のラインをきれいに仕上げる工夫をしたところである。「ヘキサシェルデザインは剛性に優れていますが、筐体が前方に向かって薄くなるくさび型であることと合わせて、鞄に入れるときなど引っ掛かりが少なく、スッと入れやすいんです。また、後部が持ち上がった筐体デザインであることで、“手がかり”がよく持ち上げやすい。これらはPCの本質的な機能とは言えなくても、鞄に出し入れするその都度、気分がいいと、毎日持ち運びたくなる」(PL 市川)。ディテールにこだわるとは、かっこよさと同時に、思いやりとも置き換えられるのかもしれない。

使う人との間に、物語を生みたい。

隠されたこだわりは何も、素材やデザインの話だけではない。「ビジネスユースでは今までスピーカーは重視されていなかったが、VAIO Proは本格的にこだわった」(メカ設計 曽根原)。かつてないほど設計の初期段階で、スピーカーの配置が議題となっていた。実際に、VAIO Pro 13では、設計者の間で“一等地”と呼ばれる後ろの奥の方にスピーカーを配置。この場所に置くことによって、音が画面に当たってよく聴こえてくる。そして、最後に紹介するのは、長く使っていただくために欠かせない丈夫さ、壊れにくさへのこだわり。つまり、堅牢性については、VAIO Proのために新しいアイデアが出てきたわけではなく、長年の積み重ねが大きい。薄い基板に部品をはんだ付けして搭載すると、剥離や反りを起こしやすいが、そうならないよう基板評価に時間をかけ、対策する技術。薄い液晶と薄いボディでもストレスが広く分散されるように設計し、液晶にダメージを与えないノウハウ。「VAIO Proはつくりやすいモデルではないが、どうやって製造品質を上げるかは当初からの課題であった」(PL 市川)。「設計の始まりから、製造や品質保証のメンバーに入ってもらった」(PM 林)。社外の協力先との連携や確認も密に行った。「自分のしていることが、自分の範囲で閉じていては絶対にいけない。製品全体で何を求めているか、一人ひとりが意識していること」(PM 林)。開発メンバーに、次にVAIOが目指す製品は?とたずねると、「使う人にとっての物語が生まれてくる製品」と返ってきた。「どのような使い方をし、どのような感じ方をするのか、また一つずつ考えていく」と。これ以上ないと思える製品が世に出されても、ずっと「何で」「何で」と問い続け、そしてチームが集まって「無理だ!」と笑い合いながら追求することで、きっと次のVAIOも生まれるのだろう。

(2014年10月6日掲載)

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