開発ストーリー Vol.03 VAIO Pro F1の素材を、PCにも使えないか。
VAIOがお勧めするWindows.
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いくら薄くて軽くても、強くなければ、完璧ではない。VAIOはそう考える。内側にしっかり鍛錬された強さがあり、その上で、意味のある外見と質感。内と外が明確な目的のもとで融合してこそ、本物の格好よさになる。ここで、VAIOの素材の歴史を振り返ってみよう。1997年、いわゆる“銀パソブーム”を巻き起こしたのがVAIO NOTE 505だ。PCのボディ全面にマグネシウム合金を採用したのは世界初。薄さと軽さを追い求めた結果、美しい質感も大きな話題となり、世の中に鮮烈な印象を残すことができた。それからしばらくは、マグネシウム合金を進化させていくかたちで取り組んでいたが、「もっとよい素材を探し始めたところで技術開発パートナーの東レに紹介されたのが、“UDカーボン”」(メカ設計 浅輪)。UDとは、Uni Directional(単一方向性)の略で、カーボン繊維が同じ方向に並んでいる特性を表す。カーボン繊維は、引っ張る力に非常に強い。通常のカーボンは繊維を縦横に編み込んだ“クロスカーボン”。対して、UDカーボンの場合は、まず、髪の毛よりはるかに細い繊維一本一本を同じ方向に揃えた層をつくる。それを縦、横、斜めなどにずらしながら幾層にも重ねることで、ねじれなど、あらゆる方向の力に強い一枚を仕立てる。クロスでは、UDに比べて繊維が真っすぐ揃っていないので繊維の強度が充分に発揮できず、一枚の強度も弱くなってしまう。しかし、そもそも当時、UDカーボンはF1マシンやジェット機など、強度が求められる最高峰の現場で使われる素材であり、民生機に使うという発想自体がありえなかった。前例はない。技術的なハードルは山ほどある。それでも「面白い、やってみよう!」と決断したのだ。
強いということは、切ったり曲げたりしにくいということ。つまり、加工しづらさと比例する。VAIOが初めてUDカーボンを採用した VAIO 505 EXTREMEの発売は2003年。 VAIO Proが発売されるちょうど10年前のことである。PCのかたちにUDカーボンを加工できただけで驚きではあったが、市販できたのは3000台限定。本格的な量産化には至らなかった。こうして、VAIOと東レの、10年にわたるUDカーボンとの格闘が始まる。まずは、曲げる技術について。当初は平板を使い、そこに樹脂をアウトサートする加工で、VAIOの筐体の部品の形状へ落としていった。アウトサートとは、金型の中にカーボンの板をセットし、その金型にプラスチックを流し込んで成型・一体化させること。「きれいに曲げる技術と、曲げたものをアウトサートして、樹脂で成型を加えて部品化する技術。その双方を併せ持ってVAIOは進化してきました」(メカ設計 浅輪)。元々が強い素材を曲げれば強度はさらに増す。VAIO Proを横から見ると、ボディの断面が六角形になっていることがわかるだろう。天板と底面の四隅が内側に折れている。これは剛性を高めるための“ヘキサシェルデザイン”だ。 “ヘキサシェルデザイン”は2012年発売のVAIO Zシリーズ(Z2)で既に採用され、 ZシリーズのPCの天板もUDカーボンではあるが、折りの部分はアウトサートの樹脂でできている。「VAIO Proはアウトサートの樹脂ではなく、UDカーボンの曲げ形状によって構成されているので、より強度が上がっています」(メカ設計 浅輪)。
曲げる技術の研鑽こそが、VAIOとUDカーボンの歴史そのものとも言える。UDカーボンを曲げる場合、その強度ゆえに、硬くなった板の状態からはとても曲げられない。熱を加えてプレスして固めるのと同時に両端を曲げることになる。チョコレートのブロックのように、大きな一枚の板に同じものがいくつも付いているイメージだ。それを、丸鋸で真っすぐに歯を通して、一つ一つ切り出していくのが、10年前から続いていた基本的な工程となる。曲げる技術に続いて注目したいのが、この切る技術について。VAIO Pro以前は丸鋸などで切っていたところを、水で切るようになった。“Water Jet加工”という切断技術だ。VAIO Proのボディは、曲げたところの切り口が真っすぐではない。「ヘキサシェルデザインのために両端が折れているところ、そして、上辺と底辺のエッジが真っすぐでないところがデザインの特長だが、 Water Jet加工を導入することにより、角度の異なる断面を正確に切り出すことが可能になった」(メカ設計 浅輪)。 Water Jet加工の精密さは、水を噴き出すスポットの直径による。極細のノズルが動ける範囲であれば、自由な曲線が描けるのだ。 Water Jetそのものは珍しい加工法ではないが、VAIOならではの秘策が施されている。実は、量産時に何度試してもきれいな端面に仕上げることができず、斜めの形状を断念し、デザインの見直しをする瀬戸際まで追い込まれていた。「最後のチャンスと、東レと一緒に1週間張り付いていた中、土壇場でアイデアが出て危機を脱した」(PM 林)。これは、単なるラッキーではない。VAIOと東レが共通の課題に立ち向かい、解決していく。対等な関係性が呼び込んだ必然だ。
VAIOと共に、ずっと試行錯誤を重ねてきた東レ。UDカーボンチームの主要メンバーは、VAIO 505 EXTREMEの頃から変わっていない。10年が経ち、互いの立場や役職が変わっても、現場に関わり続けているのだ。開発が始まると、毎週のように安曇野へ東レのメンバーが訪ねてくる。代表者だけでなく、各部門の担当者がみんな揃って。そんな打ち合わせが3〜4ヵ月続いた。「素材でも、デザインでも、設計でも、最初にしっかり話し合えば、最後まで意志はぶれません」(PL 市川)。過去に起きた問題などは、すべてレビューして共有している。東レの素材に関する豊富な技術と、VAIOの製品をつくり込み仕上げる技術。その結実が、コスト面の改善にもつながった。「今回ほど、材料を無駄にしない形状や構造について気を配り、最適化したことはない」(メカ設計 浅輪)。「カーボンを一品ものに使う会社は多くあるが、VAIOは量産体制でも職人のようにきれいな端面に仕上げられる」(PM 林)。機能と同時にここまで強さと質感を高めたVAIO Proを、たくさんの人が手にしやすい価格で提供できたことの意義。では、UDカーボンはこれで完成か。いや、UDカーボンの板は複合材である。VAIO Proの液晶を保護する筐体は、中心にカーボンではない特殊シートの層を入れ、強度を維持しつつ軽さを際立たせている。素材の組み合わせはもちろん、外側を覆う層の種類や厚さなど、積層の構成の違いで、可能性がいくらでも広がっていく。「UDカーボンを超えるのは、UDカーボンしかない」(メカ設計 浅輪)。使い勝手がよく、強くて格好いい。それでも、VAIO Proにはまだやることがあった…。
(2014年9月29日掲載)
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