VAIO × MEDIA
法人でも愛される「VAIOの秘密」は
エンドユーザーを意識したこだわり
株式会社アスキー・メディアワークス Ascii.jp ビジネス (2019年03月27日)より転載
※掲載されておりますサービス内容、料金などは、掲載日または更新日時点のものです。
VAIO × MEDIA
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これまでの2 in 1にダメ出しをした「VAIO Pro PA」、さらに13インチのVAIO Pro PGとほぼ同等のボディサイズながら14インチという大画面化を実現した「VAIO Pro PK」と昨年末から今年にかけて新製品が発売されたVAIO。
「VAIO、法人向く。」と宣言以降、順調に法人への販売を伸ばしてきており、VAIOのよさが個人だけでなく法人でも理解されているようだ。そこで、今回は法人からの声もしっかり聞いて反映するVAIOのこだわりと技術について、PC事業部商品企画担当の黒崎大輔氏とPC事業部PC設計部プロジェクトリーダー課課長の巣山剛志氏のお二人にお話を伺った。
−−VAIOを設計する上で法人に対してどういう仕様にすべきかといった考え方というのはありますか?
巣山剛志氏(以下巣山):VAIOの全体的なスローガンとして、「快」で仕事の生産性を上げることを打ち出しています。加えてカッコいいということ。それは華飾美ではなく機能美をもったデザインであるということです。たとえば、ヒンジ部分が見えないヒンジレスデザインだったり、机との段差の少ない無限パームレストだったり、開いたときにキーボードに角度がつくチルトアップ機構だったり、持ちやすさも含めてすべてが機能美です。
具体的にどう実現するかは、4つの商品開発ポリシーがあります。1つ目がレスポンスの追求。ユーザーが実感するレスポンスの質の、更なる向上を追求しています。例えば、高速のSSDを採用するといった単純なパーツ選定で満足し、思考を止めるのではなく、高速のSSDとLTE通信機能の相乗効果により、すぐ起動してネット接続ができる、いわばスマートフォンライクな使い方に近づけることが可能になること、ユーザーベネフィットは……といった感じで、思考を止めません。
PC事業部PC設計部プロジェクトリーダー課課長の巣山剛志氏
2つ目がインプットの質を高めること。スマートフォンが普及してもビジネス使用ではPCが健在な理由のひとつに、キーボード入力があると考えています。そこでVAIOでは「チルトアップヒンジ」による打ちやすさだけでなく、打鍵感はキープしつつ周りの邪魔をしない「静音キーボード」の採用や、2 in 1でも膝上でタイピングが可能なフラップ機構を採用したVAIO Pro PAを開発しました。
3つ目がアウトプットの質を高めること。例えば14インチのVAIO Pro PKは一回り小さな13.3インチのVAIO Pro PGとほぼ同じフットプリントで実現したことに注目されがちですが、4K液晶の採用により、液晶サイズの差以上の作業領域が広がりました。職種によっては、外付けモニターなしでの作業も可能となり、ディスプレーの場所にとらわれない働き方も考えられるようになる。4K液晶というとクリエイティブユーザー向け仕様と思われがちですが、文字潰れのないきれいな表示は事務作業での目の疲れも低減するのでお勧めです。
そして4つ目が高密度高剛性であること。モバイルPCに求められる「軽量で持ち運び易くて、壊れにくいこと」は当然の要求だと思っています。VAIOの得意とする高密度設計による筺体のスリム化はもちろんのこと、製品の特性にあわせて水こぼし試験やペン挟み試験、落下試験などの過酷な試験を通じて、軽量・スリムはキープした状態で剛性を高める設計を追求しています。これら4つの質を高めていくことで、「快」の実現につなげていこうとしています。
−−以前、法人向けはインターフェースも重要だと伺いました。その考え方は変わっていませんか?
巣山:基本的には、VAIO Pro 13 | mk3のときから「使用頻度の高いインターフェースは本体に直接接続できるようにする」という考え方は変わっていません。ただ新しいインターフェースの普及やお客様が使われている設備も徐々に変わってきているので、営業と協力して、時勢にあったものに替えていっております。
現時点では、情報システム部門の方から有線LANは要望されていますし、D-Sub15ピン(VGA)の要望もまだまだ多いので、万が一のときでもアダプターなしで接続できることを優先しています。
−−VGA端子があるためデザイン的に制約が出てくるという話はないんですか?
巣山:その可能性はあります。いま発売している機種ではVGA搭載を前提にデザイン・設計を行ないましたが、仮にVGAなしで進めていた場合は、端子の配置やデザインはまた違ったモノになっていたかもしれません。ただ、VGA端子以外にもデザインの元となる構成要素はほかにもあり、使い勝手や長期信頼性も確認しながらベストバランスを見つけ出す作業でもあるので、あくまでも可能性の話になります。
黒崎大輔氏(以下黒崎):VGAの使用状況は徐々に下がってきています。そのため近い将来なくなる時が来ると思います。これは日本独特の状況だと思いますが、現時点ではまだニーズは強いですね。
−−海外メーカーのパソコンでは最近みかけません。
黒崎:逆にそこがわれわれのメリットとして売り込んでおります。Made in Japanというと、製造品質が高い部分が強調されがちですが、VAIOの場合、設計を日本でやっていることのメリットが非常に大きいと考えています。現在VAIOは日本市場をメインに展開しているので、独特のニーズを汲み取り、日本人だけが気にするような感性的なところを深く掘り下げて作り込んでいます。そういう意味でのMade in Japanですね。
−−そんな中、USB Type-Cが復活しました。
黒崎:Type-Cは急激に状況が変わってきていますよね。法人でもType-Cがなければという声も出てきています。われわれが最初にType-Cを採用したときは、オススメできる周辺機器がなかったので、かえって混乱させてしまう状況でしたので、一度優先度を落としていました。いまはだいぶ安定してきたのではないでしょうか。
−−PD(Power Delivery)にも対応して、使い勝手の面でもよくなりました。
黒崎:充電に対応したことは大きいですね。お客様からも一番反響が大きく、5Vアシスト充電のようなユニークな機能も搭載しましたので。あれも、日本人が設計しないとやらないと思います。
−−5Vアシスト充電機能を搭載しようとした経緯はなんだったんでしょう?
巣山:われわれ設計の大半がノマドで、出張を含めていろんな場所にPCを持ち出して作業しています。その際、ACアダプターを忘れることが多いんですよ。ですので、設計者としてもあったら便利と思っていた機能なんです。現在PD対応ACアダプターがどのくらい認知されているかを考える必要はありますが、5V用ACアダプターを使えることは、多くのモバイル製品を持ち歩く人にとって大きなメリットだと思いますね。
−−5Vアシスト充電機能に対応することで苦労したことは?
黒崎:さまざまな充電器が使われることを想定して検証していかなければならないので、根気強く検証を続けることが大変でした。
巣山:PCに同梱しているACアダプターは10.5V、19.5Vと出力する電圧は決まっていますが、PD用のACアダプターでは5V、9V、15V、20Vと複数の電圧を出力するものがあります。どの電圧を受けても最適な回路や制御となるよう調整することに、結構な時間を費やしました。もちろん9Vは対応しませんと言ってしまえば簡単なのですが、それではスローガンである「快」から外れてしまいます。また、電源効率を高めないと、熱が発生したりVAIO TruePerformanceなどのレスポンスへの影響も出てきます。現在VAIO Pro PA/PKで5Vアシスト充電をサポートしていますが、実は5Vアシスト充電へのアプローチ方法は違っていて、一から設計し直しています。
−−VAIO Pro PAでサポートしたからVAIO Pro PKでも同じものだと思っていました。
巣山:当初はその予定でした(笑)。しかしCPUは違うし負荷も違うため、電源回路の効率にも影響したので、1から設計して最適化を測っています。
−−製品を設計する上で、やはり法人向けというのを意識しているのでしょうか?
黒崎:法人向けというよりは、ビジネスユースをターゲットにしています。法人の比率は確かに高いですが、法人の中でも個人に近い買い方をされる人、たとえばオンラインサイトで1台ずつ買っていただく大学教授ですとか、個人事業主の方も多く、ここの比率は他社より多いと思っています。そういう方々のニーズはコンシューマーに近いところにあるので、やはり最先端の機能も追っていかなければならないですし、見た目も重視していかなければなりません。
最終的には法人であろうと使うのは個人なので、選定者が最終的に使う人の感情的な意見を気にしています。ある企業では複数社からエンドユーザーが選ぶ方式にしたところ、圧倒的にVAIOに偏ったというケースも聞いています。そういう意味では、コンシューマーを意識しつつ法人のお客様にも魅力的な商品を提供していきたいと思っています。
−−さきほど少し話が出ましたが、VAIOは国内生産(Made in Japan)にこだわっています。
巣山:BTOに対応することはもちろん、マスターイメージ展開などのキッティングによる導入支援やシンクライアント化などのサポートも承っています。設計開発からアフターケアを担うCSまでがすべて同じ建屋で働いていますので、仕様の検討や、お客様への問合せ対応までも一気通貫で行えることが強みです。そのために日本に拠点を置いて活動しています。
−−品質面でも国内生産のほうがメリットはありますよね?
巣山:不具合のレポートを受けるCSも、改善を検討する設計も、どちらも日本におりますから、すぐに解析をスタートできます。生産計画も出荷計画も日本でコントロールしていますので、すぐに改善に繋げられる最大の利点だと思います。
−−現在は海外の工場も利用されていますが、VAIO Zのようにすべてを日本でということは考えているのですか?
巣山:それはまだ決めていません。海外で基板実装を行っている機種でも、日本で単に部材の組立だけを行なっているのではなく、基板に関わるところを含めて全数検査をしています。いわゆる安曇野FINISHです。現状では、海外で基板実装しているからといって、お客様に対して即時改善できないというわけでもないですし、技術や検査、そして価格などを含めて、日本でやるべきなのか、海外でやるべきなのかの判断をしていく必要があります。
−−どの部材も選ぶかも判断していますよね。
巣山:例えば基板に実装する部品には、我々が直接調達して海外へ送っている部品もありますし、VAIO Pro PKのように、液晶やパームレストの部品溶着から日本で組むものもあります。日本で組むのがベストだと判断すれば日本で、海外でも同じ品質でできるのであれば海外でという選択肢もあるでしょう。
−−VAIO Pro PAでは、法人向けを意識してメンテナンス性を高めています。
巣山:タブレットだとどうしてもネジを打つ箇所が少なく、接着してしまうことが多いようです。そうなると分解できず、分解したとき液晶まで割れてしまうこともあります。しかし、法人のお客様はセキュリティー上データを外部へ持ち出せないこともあり、その場で修理するケースが多くあります。
そこで、爪を使って分解しやすくする手法を考えたものの、今度は爪の強度により外れやすくなったり、破損する可能性がでてきました。色々検討した結果、我々が導き出したのが「壊してもいい爪」です。爪を犠牲にすることで分解修理時の液晶破損の可能性が低くなり、新品の爪に交換すれば修理前と同じ強さでフックがかかるという訳です。
−−VAIOならではのこだわりというのはいろいろとありますよね。
巣山:デタッチャブル2in1のVAIO Pro PAですと、キーボード部とタブレット部に分離します。ドッキングするためのコネクタが表に出ていますが、この接点にホコリや汚れが付着すると、うまく通信ができなくなってしまいます。コネクタ端子が単に接触するのではなく、スライドしながら接続することで、付着している汚れをかきとる(クリーニングする)ことで、接点を綺麗にキープするという工夫をしています。
−−接点の不良は出やすいですよね。
黒崎:高速信号を通すほど、コネクターの作りも繊細さが必要です。法人で使うにはどうしても耐久性が心配なので、耐久性をどうするのかを含め、インターフェースの構成を決定しました。
巣山:これに対してクラムシェルの場合は、メイン基板がキーボード側にあるので、ヒンジの中に液晶やカメラ、無線アンテナのケーブル類を通しています。液晶部の開閉にあわせてケーブルは引っ張られたり、捩れたりといったストレスが加わるので、設計段階からノウハウを盛り込み、最終的には何万回も繰り返す開閉試験で確認を行いますが、途中で切れるということはないですね。
VAIO Pro PKのアンテナ部分。幅が狭まり、アンテナをL字にして立体的にすることで電波強度を高めた
−−アンテナも常に液晶の上に設置してますよね。
巣山:アンテナの性能は非常に敏感で、例えばアンテナの部分を手で包むだけで特性がズレることもあります。ガラケーのアンテナを握るとアンテナ感度が落ちるアレです。
同じように金属が近づくことでも特性がズレることがあるのですが、事務用の机には天板に金属が入っていることが多く、ボディー側にアンテナを配置すると机によっては送受信機能が弱くなってしまう事が想定されます。常に最大の感度で送受信してもらいたいので、液晶の上に配置しています。
−−狭額縁でもそこの部分は譲れないというわけですね。
巣山:狭額縁になったからといって、使い勝手は犠牲にしません。VAIO Pro PKでは、13インチサイズに14インチの液晶を搭載することで、結果として狭額縁になったわけですが、この過程でどうやってアンテナを通すかは大きな課題でした。単純に液晶の裏側を通せばいいのでは? と思われるかもしれませんが、加圧を繰り返すと、液晶表面に線材のあとが出てきてしまうことがあります。それを避けるために、線材を変更し液晶フレームの端を通しています。
−−今後、より「快」を突き詰めて行かれるかと思いますが、どういった製品を提供していきたいと考えていますか?
黒崎:VAIO Pro PKは発売されたばかりなので、お客様からのフィードバックはこれからですが、大画面になったことがストレートに喜ばれています。特に今からモバイルワークを導入するお客様は、もっと大きい画面サイズのPCからの乗り換えを考えているので、13インチでは心配という声があり、14インチのVAIO Pro PKを提案しています。
一方で、VAIO Pro PAは実際に検証したいという声が多いです。VAIO Pro PAは働き方自体を変えていくと同時に導入するモデルなので、検証機の貸出を行い、腰を据えて検証・導入を進めていく製品だと思います。
われわれは次世代の働き方を作っていくんだという思いで、PCを設計しています。その目標のために製品を作っていくことはブレずにやっていく所存です。王道のクラムシェルPCは、モバイルワークのさらなる進化を目指しています。一方でVAIO Pro PAのような、新しい使い方を提案するモデルも発表しました。今後も、それぞれのPCの可能性を探っていきながら、進化させていきたいと思っています。
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