顧客満足度調査2025-2026 日経コンピュータ 顧客満足度調査No.1企業に訊く VAIO

「カッコイイ」「カシコイ」「ホンモノ」 法人市場でも評価されるVAIOのものづくり

Customer Satisfaction 2025-2026

「クライアントパソコン」部門は、VAIOが初ノミネートで見事に1位を獲得した。ソニーから独立して11年、同社はコンシューマー向けPCから法人向けPCへと軸足を移し、地道な努力を積み重ねてきた。国内拠点で開発から生産を行うからこそ可能な顧客の要望に添った製品開発と迅速なサポート、そして、品質を裏付ける「安曇野FINISH®」に代表されるものづくりへのこだわりが、高い評価を得る原動力となった。

従業員の意識改革を促し こだわりの法人向けPCを開発

山野 正樹 氏

VAIO株式会社

代表取締役社長

山野 正樹

ソニー時代に発売されていた「VAIO」シリーズには、時代の一歩先を行く“尖った”製品が多数含まれており、コンシューマー市場で広く支持を集めていた。ソニーから事業を引き継いだVAIOは、法人市場に注力するものの、当初は実績の少なさから苦戦を強いられた。しかし、ソニー時代から一貫したものづくりへのこだわりを生かしつつ、ユーザーに寄り添った製品を開発することで、徐々にその存在感を高めてきた。

その結果、クライアントパソコン部門に初ノミネートでの1位獲得の快挙を達成。これにはVAIOの代表取締役社長を務める山野正樹氏も「正直驚きました。お客様にご満足いただけることを最も重視して製品開発に取り組んできたので、大変嬉しいです」と、受賞を喜んだ。

その裏には、VAIOの経営陣だけでなく従業員の意識の変化があった。山野氏は3年ほど前に、「カッコイイ」「カシコイ」「ホンモノ」を追求した製品を届けるという企業方針を明文化。同時に、PCの圧倒的なマーケットである法人市場でシェアを伸ばすための議論を多くの従業員を巻き込んで徹底的に行ってきた。これにより企業方針と従業員の製品開発に取り組む意識が合致。ソニー時代のDNAを継承しながら、国内の法人ユーザーにより良い製品を届けるという意識が高まったことが、VAIOの大きな成長につながっている。

法人向けPCならではの デザインと機能を追求

法人向けPCは、 “単なる仕事の道具”として捉えられ、価格が最も重視されてきた。しかし、コロナ禍を経てリモートワークが普及した現在は“ 仕事の入り口”へとPCの役割が変化している。企業は、従業員のPCに対し、使いやすさや品質、携帯性、デザインといった価格以外の要素も重視するようになり、VAIOにとってこの現状は「追い風になっている」と、山野氏は分析する。

例えばデザイン面。VAIOの製品では、それまで法人向けPCにはほとんどなかったカラフルな本体カラーを選択できる。「完全にソニー時代からの遺伝子です。かっこいいものをお届けしたくてカラーバリエーションを多くしています」(山野氏)。また、「AIノイズキャンセリング」機能は、ユーザーの利用シーンを考慮して徹底的に作り込んでおり、「他社には負けないこだわりがあります」と、山野氏は胸を張る。

法人向けPCのVAIO® Proシリーズ

法人向けPCのVAIO® Proシリーズ

VAIOがこだわる 「国内生産」と「安曇野FINISH®

VAIOは、長野県安曇野市に構える本社工場で、開発から生産まで一貫して行っている。その中でも最大のこだわりが、「安曇野FINISH®」と呼ばれる品質管理工程である。

VAIOは、全てのPCを専門の検査員による120項目以上の品質チェックを経た上で出荷している。その中には、眼や耳、触感など実際の人の感覚を駆使した官能検査も取り入れている。これこそが、VAIO製品の品質の高さの裏付けともいえる。

国内PCメーカーは、低コスト生産を追求する海外メーカーに苦戦を強いられてきた。しかし、近年の経済安全保障への関心の高まりや、円安を背景に国内生産が決して割高ではなくなってきた現状を踏まえると、「国内に生産能力を持ち、サプライチェーンをコントロールする体制が見直されつつあります」と、山野氏はいう。トラブル発生時の情報連携や対応の迅速さに強みがある国内拠点のアドバンテージを、今後はさらに生かしていきたいと意気込む。

VAIOの安曇野本社工場で実践される「安曇野FINISH®」

VAIOの安曇野本社工場で実践される「安曇野FINISH®

また、高品質だが買い求めやすい製品開発も課題だった。2023年に発売した標準価格製品「VAIO Pro® BK/BM」の開発は、難しい挑戦だったという。VAIOの開発者にとって、最先端技術に取り組む意識は非常に強い。魂と言ってもいいほどだ。一方で、法人市場で戦うにはリーズナブルな価格帯の製品も必要になる。購買から製造、カスタマーサービスまで担当する丸山由幸氏は「先端技術を取り入れた製品開発よりも難しい部分がありました。エンジニアの想いは分かっていたので、葛藤もありました」と、当時を振り返る。

丸山 由幸 氏

VAIO株式会社

執行役員

オペレーション本部

本部長

丸山 由幸

それでも重要性を説き、価格を抑えながらVAIO の個性をどう実現するかを設計メンバーと徹底的に議論した。その結果、安価な部材を採用しつつも、デザインや色、ディスプレイを開いた時の構造など、ほぼプレミアムライン製品と同等の質感をもたせることに成功。価格以上の価値が得られるVAIO らしい製品を生み出した。

さらにVAIOは、中古品を買い取り、自社独自の厳しい基準で整備・再生したPC「Reborn VAIO」の取り組みも開始した。「法人向けにリファービッシュ製品をバルクで提供するという業界でも新しい試み」(山野氏)で、VAIOは高額だと考えている顧客向けに、品質の良さを実感してもらったうえで、次回は新品の購入へとつなげる狙いがある。「リファービッシュ製品とするために回収したPCを精査することで品質の傾向や課題が見つかり、新製品の開発にもフィードバックできる気づきを得られています」と、丸山氏が語るように、VAIOにとっても利点は大きい。

高品質なものづくりを追求するために、また新たな取り組みが加わったVAIO。「今回の結果に満足せず、圧倒的1位になれるように頑張っていきたい」と、山野氏は力強く語る。妥協のないその姿勢で、今後も法人市場で存在感を高めていく。

山野 正樹 氏/丸山 由幸 氏

日経BP Nikkei Business Publications,Inc. 日経クロステック(2025年10月1日)より転載