全社一丸となった
「上流設計」の思想
長野県安曇野市にあるVAIOの本社工場は、紛れもない最先端工場である。ソニー時代からの歴史を振り返るとVAIOをはじめ、AIBOやFeliCa(フェリカ)など、数々の革新的な製品・技術がここから誕生している。
その一方で、自然との共存を決して忘れなかった。地域に根差す企業の責任として環境経営を掲げ、事業活動全般において環境に配慮したものづくりを推進している。
⽔と緑豊かな安曇野に⽴地するVAIOの本社工場
環境配慮型の製造を促進しているのが、機動力の高さだ。安曇野の本社工場には商品企画から設計、品質保証、調達、製造、カスタマーサポート部門まで、ものづくりに携わるすべての部門が集う。こうして各部門が密接に連携し、ワンストップで高品質なPCを製造する体制が築かれた。VAIOではこのワンチーム体制を「上流設計」と名付け、ものづくりの基本思想としている。
製品を開発する際には、各部門のメンバーが意見を出し合う。
企画や設計の段階で十分な議論ができるため、製造段階での設計変更が減り、変更にかかる労力やコストを削減できる
オペレーション本部 技術&製造部 部長の神部隆一氏は「すべての関係部署が最終ゴールを見据えて、初期の設計段階から効率的かつ柔軟な視点で取り組んでいるのが特長です」と語る。
「上流設計によって、VAIOはものづくりに対する目線の共有が徹底しています。その目線が全社を貫き、環境に配慮したものづくりに活かされているのです」と続けるのは、開発本部 プロダクトセンター センター長の黒崎大輔氏だ。
VAIO
オペレーション本部
技術&製造部 部長
神部 隆一 氏
「そもそも製造業は環境と折り合いをつけて事業を進めていかねばならない宿命を背負っています。そう考えると、VAIOが環境対応に力を入れるのは至極当然のことです。そのうえで、従業員一人ひとりが環境に対してアクションを起こしていきたいとの志を持っていることが我々の強みだと思います」(黒崎氏)
具体的には、環境対応を2階建てのコンセプトで推進している。1階部分はグローバルのさまざまな法規制や数値目標に従ったものづくりを指す。ただし、巨大資本のグローバル企業と比較すれば、1階部分で世界をリードするのは難しい。「代わりにVAIOならではの特色を活かした2階部分にしっかりと取り組んでいます。2階部分とは、一見、二律背反するユーザーのメリットと環境対応を、考え抜いたものづくりを通して両立させることです」と黒崎氏は語る。