VAIOの価値はどこにあるのか
3つのキーワードに集約
高価格帯のプレミアムな製品のみを展開していたVAIOは、さらなる成長を図るために、2021年に社長に就任した山野氏のもと、標準価格モデルの投入に踏み切る。
標準価格帯のモデルを作るには、機能や性能を削り、コストが低い材料に置き換える必要がある。何を削り、何を残すべきか。その判断を間違えれば、VAIOのブランド価値は一瞬にして失われる。
VAIO
代表取締役 執行役員社長
山野 正樹 氏
「私たちは、常に時代の一歩先を行かなければなりません。比較的低価格のモデルとはいえ、それを外したらVAIOでなくなってしまいます」と、山野氏は語る。標準格帯のモデルを開発するにあたり、いま一度VAIOの商品理念を明確にする必要があった。
山野氏は、経営陣を皮切りに社内の各組織のメンバーと何度も議論した末、VAIOの商品理念を3つのキーワードにまとめた。「カッコイイ」「カシコイ」「ホンモノ」だ。「VAIOの本質をとことん突き詰めて、たどり着いた3つの価値。これらをすべて備えた製品がVAIOであると、方向を定めました。製品開発のあらゆる意思決定において、この3つがそろっているかどうかを判断基準にすると宣言したのです」(山野氏)。
VAIO
代表取締役 執行役員社長
山野 正樹 氏
暗黙知だったVAIOのコンセプトを3つの言葉で可視化し、全社員の目線を合わせた
「カッコイイ」が象徴するのは、姿、形、色だ。「毎朝、PCを開く瞬間ワクワクする」を合言葉に、デザイン面を追求した。ヒンジの見えないスタイリッシュな見た目や、液晶を開くとチルトアップしてキーボードが打ちやすくなるといった機能美を備える。
「カシコイ」を象徴する機能の1つは、Web会議の品質を高める「AI(人工知能)ノイズキャンセリング機能」だ。ソニー時代から培ってきたステレオマイクの技術とAI制御を組み合わせ、業界最高レベルの性能を実現している。また、同じくソニー時代から積み上げてきたバッテリー技術を活かし、長時間のビジネス使用を支えるバッテリー節約設定を備える。これらは、スタンダードからハイエンドまでの全製品に実装している。
バッテリー節約設定により、快適さはそのままに実使用時間を長く維持する
「ホンモノ」が象徴するのは、日本のものづくりのクオリティーだ。約120項目に及ぶ品質チェックを徹底し、技術に誇りを持った専任の技術者が1台ずつ責任を持って製品を製造、出荷している。これを長野県安曇野市にあるVAIO本社工場の名称をとって「安曇野FINISH」と命名し、VAIOの品質の高さを示すキーワードとしている。
専任の技術者が光の当たり具合を変えながら、一台ずつ目視で確認する
リーズナブルな価格を実現するために材料を置き換えても、VAIOを名乗る以上は、必ずこの3つの価値を備えている。暗黙知だったVAIOの価値を可視化し、全社員の目線を合わせた。