VAIO x MEDIA
初公開。
これがVAIO Phone Bizの
「安曇野FINISH」工程
PC Wacth(2016/4/22 掲載)より転載
PC Wacth(2016/4/22 掲載)より転載
安曇野FINISHが完了したVAIO Phone Biz
VAIO株式会社は、Windows 10 Mobileを搭載したスマートフォン「VAIO Phone Biz」の販売を4月22日から開始する。
ソニー時代から蓄積した約20年間に渡るPC事業のノウハウを活用しながら、同社が初めて、自ら開発したスマートフォンがVAIO Phone Bizだ。VAIOファンにとっては待ちに待った製品だと言えよう。
そして、VAIO Phone Bizの特徴の1つとして見逃すことができないのが、長野県安曇野市の同社本社工場において、最終検査を行なう「安曇野FINISH」を採用している点だ。これによって、高い信頼性と品質を保証した形で、VAIO Phone Bizはユーザーの手元に届けられる。このほど、VAIO Phone Bizの安曇野FINISHの工程を取材する機会を得た。初公開となるその様子を紹介しよう。
VAIO Phone Bizは、長野県安曇野の「VAIOの里」から出荷される
安曇野FINISHが行なわれているVAIO本社
VAIO Phone Bizは、VAIOが初めて自ら開発したスマートフォンである。
Windows 10 Mobileを搭載していることからも分かるように、ソニー時代から長年に渡って蓄積したWindows搭載PCの開発、製造ノウハウを活用。Windowsと親和性の高いスマートフォンとして、ビジネス市場を中心に受注活動を開始している。
VAIOの大田義実社長は、「VAIO Phone Bizは、スマートフォンではあるが、目指したのはPCの延長線上の製品。これまで、VAIOが発売してきたPCは、椅子に座って、操作することが基本だったが、VAIO Phone Bizは、持ち歩くPCという世界を確立する、新たなPCのカタチを提案するものになる」と位置付ける。
アルミから削り出した質感が高い筐体デザインの評判が高く、VAIOファンにとっても、納得の行く仕上がりになっていると言えそうだ。
実際、3月24日にVAIO Phone Bizの予約を開始して以降、受注は好調だ。金融機関やメーカー、外資系企業など、法人ユーザーからの引き合いが多いのに加えて、コンシューマユーザーが対象となる直販サイトの「VAIOストア」でも、当初見込みの約2倍の予約数に達し、予想を大きく上回る出足を見せている。
同サイトで予約したユーザーのプロフィールをみると、約9割が男性ユーザー。30~50歳代が中心となっている。また、想定を上回る割合でVAIOオリジナルLTEデータ通信SIMが申し込まれているという。
同社では、「従来からのVAIOファンの方々にご予約をいただいていると思うが、ビジネスユースを想定した方の申し込みもあると思われる。予想を上回る台数の受注を受けているが、なるべく多くの方々に、発売日に製品をお届けしたいと考えている」と語る。
その言葉を裏付けるように、長野県安曇野市のVAIO本社工場では、VAIO Phone Bizの「安曇野FINISH」の工程が、既にフル稼働だった。
VAIO本社は、JR松本駅からJR大糸線に乗り換えて約20分。到着したJR豊科駅から徒歩で約15分の距離にある。1961年10月に操業を開始。ソニー時代から、オーディオやモバイルPC、AIBOなどの生産を行なってきた歴史ある生産拠点だ。
安曇野FINISHとは、同工場において、製品の最終検査を行ない、同社が品質保証を行った上で出荷する仕組みを指す。
現在、同工場で生産されているのは、フラッグシップノートPCのVAIO Zや、新規事業として展開している外部受託のロボットおよびIoT製品。それに加えて、海外の協力工場で生産しているVAIO S11およびS13などを対象に、この安曇野FINISHが行なわれている。
安曇野FINISHは、一度海外で生産されたVAIOを、安曇野の工場で、全て開梱し、品質検査し、最終的にはOSやアプリケーションのインストールまでを行なっている。
海外から入荷した製品が正しい仕様となっているか、キーボードやタッチ機能は正しく動作するか、付属物は全部揃っているかといったことを、再度チェックし、OSやアプリケーションのインストールを行なう。約1年前からは、メモリやHDD、SSDを搭載するといったCTO対応を行なったり、企業ユーザーの要望に合わせて、アプリケーションをインストールしたり、個別設定を行なったりといったカスタマイズにも対応している。
そして、このほど発売するVAIO Phone Bizも、同様に、海外で生産されたものを1度開梱して、検査を行った後に、国内市場に出荷する「安曇野FINISH」を採用しているのだ。
ここにも、VAIO Phone Bizが、PC事業でのノウハウを活用していると位置付ける理由の1つがある。
実際に、VAIO Phone Bizの安曇野FINISHの工程を見てみよう。
海外の協力工場で生産されたVAIO Phone Bizは、ダンボール箱に入れられて、安曇野の本社工場に運び込まれる。
安曇野FINISHの専用ラインの横に置かれたダンボール箱から、VAIO Phone Bizを1箱ずつラインに投入。それを開梱し、VAIO Phone Biz本体を取り出す。作業台では、箱が片手で開けられるように、箱の下部から強い空気で吸引。女性の作業者でも力を使わずに片手で箱を開けることができるという工夫が凝らされている。
まずは取り出した本体からSIMトレイを取り出し、これを本体とともに次の工程へ送り出す。一方で、再利用する箱には、日本語マニュアルを入れて、最終の梱包工程へと送り出される。
VAIO Phone Bizの安曇野FINISH工程は、当初はVAIOシリーズの安曇野FINISH工程と同様、直線ラインで設計されていたが、最終的にはU字型へと変更。その結果、開梱工程の正面に梱包工程が置かれ、再利用する箱は作業台の向こう側へ送られるだけで済む。U字型のラインは、この点で大幅な効率化につながっている。
ちなみに、最初の作業工程では、製造番号と管理番号を結び付ける作業も同時に行なわれる。この後の工程は、全てバーコードで管理され、1つ1つの作業に間違いがないことを確認しながら、進められることになる。
VAIO Phone Bizの安曇野FINISHが行なわれるラインは、「VC11」と社内では呼ばれている
安曇野FINISHのラインに投入されたVAIO Phone Biz
片手で箱を開けることができるようにするためにしたから強い空気で吸引する治具
開けると中には海外で生産されたVAIO Phone Bizが入っている
梱包された袋からVAIO Phone Bizを取り出す
空き箱は箱に入れられて、最終梱包工程へと送られる
反対側が最終梱包工程
工程内の作業は全てバーコードで管理されている
SIMトレイを取り出して、次の工程を送り出す
取り出されたSIMトレイ
続いて、VAIO Phone Biz本体は検査工程に入る。
ここでは、ディスプレイのタッチ機能、内蔵しているカメラの機能、スピーカーやマイクによるオーディオ機能、そして画面の配色である。いずれも、スマートフォンに必要とされる基本機能部分であり、これを全量でチェックすることになる。
VAIO 技術&製造部ソフト技術課・西澤良太郎課長は、「安曇野の工場では、PCやタブレットの生産を行なったことはあったが、携帯電話やスマートフォンの生産を行なったことがなかった。そこで、PCやタブレットでの生産ノウハウを活用して、スマートフォンに必要だと思われる基本機能を対象に検査を行なうことに決めた。今後、ユーザーの声をフィードバックしながら、検査内容を変えていくことも検討したい」とする。
PCの生産工程では、自動検査ソフトを利用して複数の項目の検査を行なっているが、VAIO Phone Bizの検査工程では、熟練した作業者が、1つ1つの検査設定を手動で行なっているのも特徴だ。
「ソフトウェアを使いながらも、検査設定を手作業が行なうことで、画面の反応が気になる、音が聞き取りにくいといった、熟練者だからこそ気付くことができる、ちょっとした変化も捉えるようにしている。安曇野ならではのダブルチェックとも言える」(西澤課長)というわけだ。
この検査工程が終了すると、今度は「仕上げ工程」へと入る。
仕上げ工程の最初は、Windows OSのインストールだ。ここでは、1台あたりのインストールに時間がかかるため、一度に大量のVAIO Phone Bizへの作業が行なえるような環境を作っている。また、ここでは専用の治具を使って、ボタン操作を行なっており、これも作業の効率化に大きく役立っている。
Windows OSのインストールが完了すると、VAIO Phone Bizの画面には「PASS」の文字が表示され、いよいよ出荷前の状態へと準備する作業が行なわれる。
検査工程に入るVAIO Phone Biz
内蔵しているカメラのチェックと画面の配色をチェック
ディスプレイのタッチ機能の検査
検査作業は機械とともに、手作業で行なわれるものも多い
SDカードを挿入するところ
治具を使ってボタン操作を簡素化
OSをインストールしているところ。1台あたり20分かかる
インストールが完了すると「PASS」の文字が表示される
最終出荷状態へと整える工程
Windows 10 Mobileの起動画面が表示される
検査およびインストールが完了したVAIO Phone Biz
SIMトレイをもとに戻す
バーコードでチェックをして、すべての梱包物が揃っていることを確認する
安曇野FINISHを証明するカードが入れられる
1枚ずつ判が押される。上は、PCで使っているカード。VAIO Phone Bizのものは小さい
袋に入れられるVAIO Phone Biz
計量によって、同梱されているマニュアルなどが正しく入っているかを確認
日本で流通させるためにJANコード入ったシールを貼付する
実は、最終出荷状況へと準備を整える工程の前に、キッティングに対応した工程を近く新たに組み込む予定だ。
VAIO Phone Bizの中心ターゲットは法人ユーザー。中には、カメラ機能やSDカードスロットを使えなくして欲しいという要望があったり、一括導入商談においては、企業内で利用するアプリをインストールして欲しいという要望もある。実際、既にそうした要望を踏まえた商談活動も始まっており、安曇野FINISHでは、キッティング対応を視野に入れた工程作りを始めているというわけだ。西澤課長は「4月下旬にはキッティング対応できる環境が整う予定」だとしている。
出荷前の状態までの準備ができると、目視での外観検査を行ない、梱包作業に入る。ここでは、梱包箱ごとにJANコードが入ったラベルが貼られ、再び20台単位でダンボールに入れられて出荷することになる。
ここでダンボール箱に貼られる管理用シールの発行においても、効率的に作業ができるよう、バーコードの読み取り方法に工夫を凝らした現場の知恵が盛り込まれている。
西澤課長は、「安曇野FINISHは、品質確認というだけでなく、信頼と安心という付加価値を提供するための『最後の仕上げ』を行なう仕組み。お客様に喜んでいただくため、そしてお客様に役立つための取り組みである」と位置付ける。
また、VAIO 技術&製造部製造課プロダクションエンジニアの丸山貴弘氏は、「一度生産されたものを開梱し、全てを検査することはコスト増となる面もあるが、これを行なうことで、ユーザーの方々には安心して使ってもらうことができる。これまでの安曇野FINISHの経験や製造ノウハウを活用して、VAIO Phone Bizに必要と思われる検査内容の提案も、生産現場から積極的に行なった。コストは知恵を使って最小限に抑えている。これからも安曇野FINISHの進化に取り組みたい」と語る。
ここにも、VAIOならではのこだわりとノウハウが活かされているというわけだ。
VAIOが満を持して投入したVAIO Phone Biz。安曇野FINISHによって、品質向上と付加価値を提供することで、ユーザーに安心して利用してもらう環境を実現するとともに、満足度を高めることに繋がるのは間違いない。
VAIO 技術&製造部ソフト技術課・西澤良太郎課長とVAIO 技術&製造部製造課プロダクションエンジニアの丸山貴弘氏
VAIO 技術&製造部ソフト技術課・西澤良太郎課長
VAIO 技術&製造部製造課プロダクションエンジニアの丸山貴弘氏