VAIO Z 使用事例レポート Vol.1

 ティニープロジェクト様
『ふうせんいぬティニー』の場合

profile

稲葉 大樹
1987年生まれ。東京造形大学を卒業後、日仏合作作品など、様々なアニメーション制作に関わる。フリーランスとしてデジタル技法を用いたアニメーション、グラフィックデザインを中心に仕事をする傍ら、2013年に発表した自主制作アニメーション『お願い!モンスター』で注目を浴びる。その後、NHK E テレで放送の『ふうせんいぬティニー』にてTVシリーズ初監督。
酒井 浩史
1987年生まれ。東京工芸大学卒業後、ゲーム会社を経てフリーランスに。TVアニメの3DCG、MV、CMなど多くのジャンルの作品を手掛けている。『ふうせんいぬティニー』では、演出/アニメーターを担当。

VAIOを採用した3つのポイント

アニメーション作業にも耐えられるパワー

AfterEffects等アニメーション制作に必要なソフトは、とにかく重い。同時に複数の作業を行うことも多いため、PCにかかる負荷もかなり大きくなる。VAIO® Z(以下Z)とVAIO Z® Canvas(以下Canvas)は、「タッチペンで絵を描く」という基本動作はもちろん、「各カットの秒数を指定して音と映像を編集する」、「チェックムービーの書き出し」といったメモリーを激しく消費する作業すらストレスなく実行できる。まさに、アニメーターを机から解放する一台だった。

©「ふうせんいぬティニー」製作委員会
NHK Eテレにて放映中。DVD発売中。http://tinnyballoon.com/animation

高解像度で繊細な色の違いも表現できるディスプレイ

アニメーション作業において「色」は命である。色ひとつでキャラクターに対する愛着が左右され、影のつき方が佇まいに直結する。 Zを実際に使ってみると、高解像度ディスプレイと同等。いや、むしろ、自宅の液晶モニターよりも高解像度だと言う。液晶タブレットだと「白」に見えているものでも、Canvasならそれが「薄い灰色」であることをしっかりと見抜く。その正確さは、アニメーターの目をもってしても信頼できる。

持っていることが嬉しくなるプロダクトデザイン

キャラクターデザイン同様、自分が持つプロダクトデザインにもこだわりたい。つくるための道具が格好よくなければ、モチベーションも上がらない。「仕事で使えるスペック」を前提として、「持ち歩きたくなるデザイン」を求めていた。店頭で見たモバイルPCの中で、Zは群を抜いてデザインが優れていた。見た目だけでも、機能だけでもない。中身の伴った格好よさがVAIOにはあった。

パワー・デザイン・モバイル性をすべて兼ね備えたPC

―まず、「ふうせんいぬティニー」(以下、ティニー)における仕事内容を教えて下さい。

稲葉 : アニメーション監督はまず、制作が始まって最初に行われる脚本会議に参加し、シナリオをまとめます。そして、各話の絵コンテ制作と並行して全体のフォーマット決め、基準となる映像制作、クオリティラインを決めていきます。自らもアニメーションを担当しつつ、4人の演出/アニメーターとともに一話一話を制作していきました。アフレコや音響制作もディレクションし、最終的に作品をお客さんのもとに届ける状態にするのが仕事です。

※制作時に使用する主なアプリ Adobe After Effects CC / CLIP STUDIO PAINT / Toon Boom Storyboard Pro / Adobe関連全般

酒井 : 僕は演出/アニメーターですが、脚本会議にも立ち合い、決定した脚本の第何話を担当するかを監督と話しあって決めました。担当が決まったあとで、その脚本を、絵コンテに落とし込む。当然、入りきらないこともあるので、何を捨てるか、もっとしっかり見せたい所はどこかなどを考えて絵コンテを描きます。それ以降は、映像制作全般を担当します。

※制作時に使用する主なアプリ Adobe After Effects CC / Toon Boom Storyboard Pro / Adobe関連全般

―アニメーション作業ツールとしてVAIOを選んだのはなぜですか?

稲葉 : 僕はZを使用しています。
Windowsノートパソコンを探していたのですが、軽くて薄いパソコンがなかったんです。アニメーション作業に十分なスペックとなると結構ゴツくなりがちで持ち運びにくい。そんな時にZに出会い、デザインにも惹かれて購入しました。やはり、物作りをする道具は格好よくないと、モチベーションもあがりません。Zは、デザインもスペックも群を抜いていました。ペンも付属しているので、直接画面に画を描いたり直感的に操作する事もでき、一台で作業可能なところも魅力のひとつです。

酒井 : 僕が使っているのは、Canvasです。
普段は大きめの液晶タブレットとデスクトップパソコンも使っているのですが、机に一度置くとなかなか動かせない。夏の暑い日、仕事場のエアコンが壊れてしまったことがあって(笑)、修理している間、作業が一切できなかったんです。ちょうどティニーの締め切りに追われていた時だったので、Canvasを持って、エアコンの効いた自宅で作業しました。液晶タブレットだけでは、別途パソコンも持ち運ばなければなりません。Canvasは仕事場とほぼ同じ環境でいつでもどこでもアニメーション制作ができるんです。

―はじめて触ったときの印象は?

稲葉 : タッチできるPCを使ったのは初めてだったので、素直に感動しました。
普段はマウスやペンタブを使っていますが、直接画面にタッチしてアニメーションを修正できるのは画期的でした。ペンもとても使いやすかったです。フリップできるのもいいですね。皆に自慢しました。(笑)こんな風にできるので、スタッフや製作委員会の方々にプレゼンしやすいんです。縦画面にもなって、液晶タブレットとしても使えます。

酒井 : Canvasはキーボードとモニターが分離しているのがいいですね。大きいサイズの液晶タブレットだと、キーボードをどこに置こうかで悩むんです。僕はゲーミングデバイスというゲーマーが使うコントローラーを使っているのですが、Canvasだとキーボードと並べて置いても作業の邪魔になりません。あと、外へ持ち運べるのは本当にありがたかったです。仕事場にこもりっきりだと煮詰まってしまうので、外に出て、ふと「あそこはこうしたら良いんじゃないかな」という時に、Canvasを起動すればすぐに作業ができます。デスクトップに入っているソフトが、そのまま片手で持てるサイズのものに収まっているのは不思議な感覚でした。

いつでもどこでも本番作業が可能に

―VAIO導入により、どのような変化がありましたか?

稲葉 : やはり、現場にいなくても作業できるのが一番大きな変化です。特に音響現場での作業がはかどりました。音響作業時は待ち時間が多いんです。その間に、仕事場と同じ環境で作業が出来る。Z導入前までロスしていた時間が圧倒的に少なくなりました。それまでは深夜家に帰ってから、朝まで作業していたんです。

酒井 : ToonBoomというソフトに収録されているStoryBoardProで絵コンテ作業をしているのですが、こんな風に一コマ一コマ描いていけるんです。色もつけられます。音と映像、各カットの秒数を指定する作業がこのソフト一つで完結できます。動画ファイル書き出せばチェックムービーも作れる。今までは紙に描いたものを取り込んだり、編集ソフトで切り貼りする手間があったのですが、そういう手間が一切なくなりました。また、ティニーはキャラクターのデザインがシンプルなので、同じデザインだけど色が違うことが結構あるんです。白黒だと違いが分からないので、こんな風に色をつけられるのは便利でした。

―それぞれのマシンの特徴は?

稲葉 : 僕は脚本やスケジュール管理など画を描く以外の仕事も多いので、Zで正解でした。 Canvasは、モニターとキーボードが分かれるのが魅力的ですよね。画を本格的に描くときは筆圧のかかる作業が多いので、Zだとアタッチメント部分に負担がかかってしまう。そう考えると、セパレートできるCanvasは有利だと思います。ひとつの作業だけでないオールラウンド向けにはZ、液晶タブレットの代わりに使う人にはCanvasが向いていると思います。

―他に「こんな時に便利だった」というエピソードは?

稲葉 : イラストを描くときにも活躍しましたね。Suicaのペンギン等で有名なイラストレーター・坂崎千春さんとアニメーションを作ったとき、この画を描いて頂いたんですが、打ち合わせ中、このように画面をフリップさせて、向かいに座っている坂崎さんにその場で描いて頂きました。坂崎さんは手書きで描く事が多いらしいのですが、この時は「楽しい!」と喜びながら描いてくれました。向かい合った二人がこうやって絵を描き合えるのは画期的だと思います。

―普通のノートPCに比べて、CPUのパフォーマンスがかなり高いですが、それをうまく使えたケースなどありますか?

酒井 : AfterEffectsが、しっかりと動くのには驚きました。ティニーでは、各キャラクターの手や耳などのパーツが細かく分かれていて、たとえば、ティニー単体で50以上のレイヤー数です。その為、メモリーをとても食います。にも関わらず、本番作業がどこでもできるスペックが備わっている点が大きいです。

稲葉 : 例えば、ティニーのパーツだけでこれくらいあるんですよ。これらが独立したパーツになっていて、50以上のレイヤーに分かれたパーツを、実際にスタイラスペンで触りながら動かせるんです。ティニーで使っているパペットツールという機能があるのですが、これを使うとパーツごとに個別に動かせる。ふわふわした動きの時などに使っています。

―画面の解像度や、物理的な大きさはどうですか?

稲葉 : 解像度はすごいですね。高解像度ディスプレイと同等です。自宅の液晶モニターよりも高解像度なんです。色の確認も正確にできるので、かなり満足しています。家のモニターよりも、Zで見た方が色が正確でした。これでプレビュー確認するのが一番信頼できます。

酒井 : ティニーは薄い灰色を良く使います。液晶タブレットだと白に見えても、Canvasでみると、薄い色の濃淡がはっきり再現される。サイズに関しては、出来ればもうワンサイズ大きいのがあるといいなと思いました。持ち運びする人には少し重いかもしれないので、サイズが変わる分、軽量化が必要だと思いますが。

―プロダクトのデザインは、クリエイターにとって重要ですか?

稲葉・酒井 : 重要です! 格好いいデザインのものを使っていると、モチベーションも上がりますから。

酒井 : 僕にとっては、ガジェットのような感じですね。 カメラみたいに、持っていて楽しいもの。同じ機能をもった商品は他にもあると思うんですが、見た目は大事です。持ち歩くんだったら、やっぱり格好良い方が良い。

作業環境の差はなくなった。あとは本人次第。

―今後、どのようにVAIOを使っていきたいですか?

酒井 : 制作する際、スタッフ全員がより密に連絡を取り合って、実際に同じ場所で作業ができるようにしたいですね。今まで、皆がバラバラの場所で作業していたので、お互いの作業環境を持ち寄って作業できるともっと良いなと思います。そういうとき、ハイスペックなマシンを持ち運べるVAIOは魅力的です。

―新しいスタッフが入った時、制作方法を教えるにあたって、VAIOで良かった点はありますか?

稲葉 : Z購入後、新しいスタッフへノウハウを教えるのがとても楽になりました。ティニーのシーズン1制作時はデスクトップパソコンのある僕の家に皆を集めて、AfferEffectsを使い、アニメーションの動きの付け方等の勉強会をやっていましたが、シーズン2制作時は、ZがあればAfterEffectsも普通に動くので、一般的な打ち合わせスペースで勉強会を行えるようになりました。自宅でやる必要はなくなりましたね。

―アニメーションは大勢でつくっているイメージがありますが、ティニーは一話一人でつくられています。そうした作り方における、Z、Canvasの重要性は何だと思いますか?

稲葉 : こういう作り方の場合、フリーランスの人が多いんです。自宅で作業する事もあれば、出先でアニメーションを作ることもある。それが実現できるZ、Canvasは、フリーランスとしてありがたいですね。松村さん(ティニー/アニメーター)のように海外旅行好きな人とか、大桃さん(ティニー/アニメーター)のように軽井沢へよく行く人には、ピッタリなんじゃないでしょうか。僕も用事があって実家へ帰った事があって、3日くらいあけなきゃ行けない時に、Zを持って仕事をしました。

―同じ志を持った若い人達に対して思うことはありますか?

酒井 : 僕が学生の頃は、アニメーションをつくるとしたらデスクトップPCで、当時の液晶モニターは高かったので、19inchの大きなブラウン管のモニターを机に置いて作業していました。その作業環境を作る為に大きな机を用意するのがとても大変だった。それが一つのノートPCでおさまるようになったのは、すごく便利だな、と思いますね。環境の差が無くなったから、あとは本人のモチベーション次第、実力勝負、環境を作る為に頭を悩ます必要が無くなったのは良い事だと思います。

―今後、Z、Canvasに求めたい点を教えて下さい。

稲葉 : 大きいものが見てみたいです。画面が一回り大きいもの。

酒井 : 15インチくらいあっても良いですね。あとはスクリーンカバーがあったら便利だと思います。

―最後に、これから買ってみようという人達に向けて一言。

稲葉 : Windowsユーザーにお勧めしたいです。やっぱり映像のメインってWindowsなんですよね。デザインも含めて、他社製品を圧倒していると思います。

酒井 : 場所を選ばないので、作業の途中経過を見せる時など、普段の作業環境を丸々持ち出せるのは本当に便利だと思います。フリーランスのクリエイターに是非お勧めしたいです。

(2016年05月31日掲載)

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